SPORTS 2019年1月29日

東大運動部の幹部が合宿所に集結 ブラインドサッカー体験から得られる学びとは?

 普段は各自のスポーツに専念する、東大運動会の部員たち。しかしそんな彼らが寝食を共にする機会があるのをご存知だろうか。東大運動会総務部が主催する、毎年恒例の「主将主務合宿」だ。ワークショップや座談会を通じて、運動部の主将と主務がリーダーシップを学んでもらうことを目的としている。正月明けの1月5、6日に千葉県にある検見川総合運動場・セミナーハウスで行われた合宿に、記者が潜入した。

(執筆・石井達也 撮影・小田泰成)

 

 5日朝の開講式の後、真冬の冷え切った体育館に集まった47部活87人の主将主務たちに配られたのはアイマスク。人間が得る情報のうち8割を占めているという視覚情報をアイマスクで遮断し、ブラインドサッカー体験のワークショップに臨んだ。

 

 ワークショップを主導するのは株式会社Criacao(クリアソン)のスタッフだ。Criacaoは「スポーツの価値を通じて、真の豊かさを創造し続ける存在でありたい。」を理念に掲げている。東大運動会の主将主務合宿で研修を担当するのは今回で2回目だ。

 

 まずは2人1組になり、数メートル先のパートナーの元にアイマスクをしながら歩く体験。ブラインドサッカーとは程遠い簡単な体験に見えても、初めての人にとっては相当の恐怖感がある。1回目はパートナーが手を叩き、2回目は拍手の代わりに名前を呼んで誘導する。

 

 

 一通り終えた後、Criacaoの竹田好洋さんが参加者に尋ねる

1回目と2回目、どちらがより安心感がありましたか?」

大半の参加者が2回目に手を挙げると、竹田さんはこう種明かし。

「名前を呼ばれると、やっぱり安心感がありますよね。これは部活での呼び掛けにそのまま当てはまります。例えば新入生に指導するとき、名前を呼んであげるだけで不安が軽くなるはずです」

参加者は納得したような表情を見せた。

 

 続いて、アイマスクをしたパートナーにお題の動きを声だけで伝える。「屈伸運動」など分かりやすい動きから始まり、最後には名前すらないような複雑な手足の動きを指示する。

「この体験から分かるのは、当たり前にできる動きであってもイメージできなければ難しいということ。言葉で説明するだけだと、下級生にとっては何が何だか分からないということってありますよね?」

下級生にプレーなどを教えるときに、上級生が自ら動いて見せるなど工夫が必要であるとの説明が加えられた。

 

 

 次は20人程度のグループで、全員がアイマスクをしてスタンバイ。その状態から誕生月や血液型ごとにグループを作るよう指示が出る。

 

 さらに難易度は上がり、名字や身長順で一列に並ぶ指示が出る。初めは戸惑いながらも、次第に

「まずは身長○cm台ごとに集まってみよう」

「ある程度の順番に並んだら、円陣を組んで右の人の肩を叩きながら自分の身長を声に出してみよう」

などと、さまざまなアイデアが出てくるようになった。

 

 

 全員がアイマスクして臨んだこの体験では、声を発しつつ聞くというコミュニケーション能力が特に問われる。その上で、Criacaoの卓間昭憲さんは「異なる小グループに属するような『遠い者同士』では、特にコミュニケーションが難しいと思います」。その言葉通り、10cmごとの身長で分かれた小グループ内では簡単に背の順に並ぶことができても、小グループ同士の連携に苦戦している様子が散見された。

「部活動に当てはめると、役職者間やレギュラーメンバー同士、同学年内などではコミュニケーションを取りやすい一方、上級生と下級生など『遠い者同士』ではコミュニケーションを取りにくいですよね?」

アイマスクしたまま活動するという普段ならあり得ない状況下で、主将主務たちはコミュニケーションの難しさをかみ締めたようだ。

 

 いよいよ、ブラインドサッカーのボールを使った体験に移る。まず、約10m四方の四角形の各頂点に人が立ち、そのうち1人がボールを持つ。アイマスクをした人が四角形の中に入り、各頂点に立つ人のアドバイスを聞きながら、ボールに触る。次に、ボールを持っている人が他の頂点に立つ人にボールを投げて、アイマスクをした人は再びボールを触る……という動作を繰り返す。1セット30秒の間にボールに触った回数は、初めはどのチームも10回程度と少ない。途中で竹田さんが一言。

「同じ条件で小学生は20回を達成しています。皆さんも20回を目標にしてみましょう」

 

すると、参加者の目の色が変わり、作戦会議が活発になった。

「アイマスクをした人から見て、ボールを投げた方向をみんなで伝えよう」

「ボールを持った人がひたすら叫ぶようにしよう」

「アイマスクをした人は、タッチするときに恐れず手を伸ばそう」

各チームはセットを重ねるごとに回数を増やしていき、最後には20回を超えるチームも現れた。

 

 

 この体験のポイントは「ギリギリ届く目標を設定すること」だと竹田さんは解説する。目標を設定することがパフォーマンスの向上につながることは、参加者が体感した通りだ。

 

 ただ、例えばチームでリーグ昇格するという目標があっても、試合に出られない人は置いてきぼりになってしまうこともある。

「リーダーは、チームと個人それぞれの目標設定を意識することが大切です」

竹田さんの言葉を、リーダーである主将主務たちは各チームの文脈に当てはめていたことだろう。

 

 ワークショップの最後は、アイマスクをした状態でボールをキックして、数m先のコーンに当たった回数を競った。コーンの位置や蹴り方を指示し合うなど、これまでのワークショップを通じて学んだコミュニケーションの取り方を実践する場となったようだ。

 

 

 ワークショップを終え竹田さんは「今回の活動を『楽しかった』だけでは終わらせてほしくない」と熱弁。各部のリーダーが集まった合宿で得た学びを、これからの活動に生かしていくよう激励した。

 

 合宿では、ブラインドサッカー体験以外にも座談会など多くのプログラムが用意されていた。参加者同士の友好関係も深まったようで、今後は各部の垣根を越えた交流も生まれるかもしれない。参加者が合宿で得た学びを生かし、これから1年間でどのようなチームを作り上げていくのかに注目したい。

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