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2020年3月18日

東大、新型コロナウイルス感染阻止が期待できる既存薬剤を同定

 井上純一郎教授、山本瑞生助教(ともに医科学研究所)らは3月18日、新型コロナウイルス感染初期のヒト細胞へのウイルス侵入過程を阻止し、効率的に感染を阻害する可能性のある薬剤を明らかにしたと発表した。

 

会見で説明を行う井上教授(撮影・中野快紀)

 

 今回新型コロナウイルス感染阻害に有効な可能性が明らかになったのは急性膵(すい)炎などの治療薬として使用されている「ナファモスタット」。日本で開発された薬剤で、開発元の日医工が「フサン」という商品名で発売している他、特許が切れた現在では後発医薬品(ジェネリック医薬品)の販売も進んでいる。

 

 発表によるとナファモスタットは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の感染の第一段階である、ウイルス外膜と感染する細胞の細胞膜との融合を阻止することで、ウイルス侵入過程を効果的に阻止する可能性がある。

 

 COVID-19の治療薬となる薬剤の研究は国内外で行われており、3月初旬にはドイツの研究者がナファモスタットの類似薬である「カモスタット」の有効性を発表していた。カモスタットもナファモスタット同様日本で開発された薬剤で、「フォイパン」などの商品名で急性膵炎などの治療薬として処方されてきた。しかし、ドイツの研究者の発表によると、カモスタットを使用する場合、現在一般に用いられているよりも多くの量を患者に投与する必要があるという。東大の発表では、今回東大が有効性を発表したナファモスタットは、カモスタットの10分の1以下の低濃度でウイルス侵入過程を阻止できるとした。ナファモスタットは国内で特に多く使用されており、十分な数の臨床データの元、安全性が確認されているため、速やかに臨床試験に移行することが可能であるという。

 

会見出席者はマスクを着用し、記者席とはスペースが設けられた(撮影・中野快紀)

 

 同日会見に臨んだ五神真総長は「ナファモスタットはCOVID-19に対してかなりの効果が期待される。井上教授らの成果は論文未発表であるが社会的影響を考慮して会見を行った」と説明。東大として新型コロナウイルスの封じ込めに全力で取り組む姿勢を表明した。今後は国立国際医療研究センターなどの研究機関や病院などと連携を取りながら今月から来月初旬までに臨床応用へ対応していくという。

 

【記事修正】2020年3月18日 13時58分 リード文を修正しました。

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