新学期が始まって約1カ月。新型コロナウイルスの影響により、年度替わりで慌ただしいさなか東大は各種対応に追われた(表)。そうした中でおろそかにしてはいけないのは、外国出身などの理由により日本語などに不慣れな学生への配慮だ。彼らの声を拾うことを試みたアンケートが、PEAK(教養学部英語コース)に通う外国人学生を中心とする団体によって行われた。
(取材・武沙佑美)
アンケートを実施したのは学内の英字メディア「The Komaba Times」。PEAK生を中心とするジャーナリズムの授業の一環で2011年に発足し、19年度より学生有志が中心となって記事の発信や冊子の発行を続けている。
本アンケートは、Googleフォームで3月20日~29日にかけて実施された。公式SNSアカウントなどで英語話者への回答を呼び掛け、62人から回答を得た。編集長のアレクシン・ヤップさん(養・3年)はアンケートを実施した理由について、学生が現状をどう考えているか、大学の対応を適切だと感じているかを調査するとともに、学生の反応が時間の経過に伴いどう変化するかを記録したかったためと説明する。
回答者の内訳は、秋季入学の学部生が42人と約三分の二を占め、春季入学の学部生が12人、修士・博士課程が4人、学部交換留学生と博士論文提出志願者が各2人ずつだった(図)。所属では、駒場Ⅰキャンパスに位置する教養学部、総合文化研究科に在籍する学生が50人と、回答者の多数を占めた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け大学から提供される各種情報は不十分だと考える学生が目立った。「健康や安全を確保するための手順について、大学から十分に情報を得たと思うか」という質問に対しては46人が、渡航など旅行に関する手順については47人が、十分な情報を得られなかったと回答した。「旅行や健康、安全の確保に関する手順について、大学はより多くのガイドラインを示すべきだと思うか」という質問に対しては、51人が「示すべき」と回答している。
現状、大学の学務に関する情報は主に、全学的な対応を示す東大のウェブサイトと部局ごとの対応を示す各学部・研究科のホームページでの掲示、および学務システムで自動送信されるメールにより学生に通知される。アンケートでは、さまざまな場所に情報が分散していることに懸念を示す意見があった。
「対面授業の停止」肯定派半数
授業をオンライン化する判断については、アンケート回答時点では意見が割れていた。「Sセメスターにキャンパス内で対面で授業することは安全だと思うか」という質問に対しては否定的な回答が33人、「大学は正式に対面授業を停止すべきだと思うか」に対しては肯定的な回答が32人と、いずれも回答者の約半数を占めた。
半数以上はオンライン上での学習やコミュニケーションのためのツールを使うことに自信を示している。オンライン化が難しいと予想される授業について聞いたところ、学生間の議論などが多いゼミ形式の授業については43人、外国語の授業については46人が難しいのではないかと答えた。
自由記述欄では、サークル活動や五月祭の実施に対する不安を訴える声があった。本アンケートが実施された3月下旬に、サークル活動の禁止と五月祭の延期または中止という決定が発表されたが、両判断は学生の認識に沿うものだったといえる。中にはCOVID-19拡大に伴う一連の変化を、東大の従来の教育体制などを見直す良い機会と捉える回答者もいた。
アンケート結果を基にした英語記事は、The Komaba Timesの公式ウェブサイト(www.komabatimes.com)に掲載されている。
この記事は2020年4月28日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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