インタビュー

2021年12月19日

【受験生応援2022】運動と勉強の賢い両立が合格への近道! 受験生の運動のすすめ

 

 

 受験性の皆さん、最近身体動かしていますか? 勉強で手いっぱい、運動して健康に気を遣う暇なんてない、という方も多いかもしれません。しかし毎日の生活で少し運動を意識するだけで、受験生にとって嬉しい効果をたくさん得られます。運動の効果やおすすめの運動メニュー、受験生の悩みを運動で解決する方法などについて、筋生理学やトレーニング科学を専門とする佐々木一茂准教授に聞きました。(取材・葉いずみ)

 

──受験勉強に運動が与える影響は

 運動の効果は主に三つあると考えています。一つ目は受験期に陥りがちな運動不足を解消し、健康を増進する効果です。習慣的な運動により勉強の時間が固定されやすく、食事や睡眠も含めて生活のリズムが整うことが期待されます。また、勉強の合間の軽い運動は気分転換になるので、心の健康にも良い影響があると思います。

 

 二つ目は免疫に対する効果です。免疫とは、感染症のかかりやすさや治りの早さに関する機能です。運動は我々の身体にとって一種のストレスであるため、運動後は体内で細菌やウイルスが侵入した時と似た反応が起こり、免疫細胞が活性化されます。この活性化は一時的なものですが、運動を日常的に行うことで免疫機能は徐々に強化されます。ただし、運動の負荷や強度が高すぎるとかえって免疫機能が低下してしまうので、特に受験シーズンは激しい運動は控えるようにしましょう。

 

 三つ目は脳の働きに対する効果です。運動後は一時的に集中力や判断力が高まり、認知機能テストの成績が向上するというデータが多くあります。10分程度の散歩など、低負荷かつ短時間の運動でもこの効果は得られます。

 

──受験生におすすめの運動メニューは

 まず普段の生活で歩く量を意識的に増やすことが有効です。一つの目安として、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では「歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行う」ことが推奨されています。これは約6000歩、4〜5kmの歩行に相当します。また歩数の記録を始めるとそれだけでよく歩くようになるというデータもあるので、スマホに記録された歩数を毎日チェックすることから始めてみても良いでしょう。

 

 筋肉は大きく分けると速筋線維と遅筋線維の二つの細胞から構成されており、歩行では持久力のある遅筋線維が主に使われます。一方の速筋線維は瞬発力が高いのでスポーツではよく使われますが、普段の生活ではあまり使われません。この線維を鍛えるためには短時間の筋トレを行うと良いでしょう。速筋線維は普段眠っていて、持久力にも乏しいので、短時間で十分鍛えられます。筋トレの種目としては太ももや背中、胸の大きな筋肉を使うスクワットや腕立て伏せなど、基本的なもので構いません。これらをきちんとしたフォームで行うと、1分程度でもかなり筋肉が疲れるはずです。1日1分でも効果があると思えば、だいぶ取り組みやすくなるのではないでしょうか。

 

 また器具を使わない筋トレは自宅で手軽にできてよいのですが、筋力がついてくると次第に刺激が弱くなりますので、少しずつ回数を増やすことに加え、体重をうまく利用して負荷を高めることも重要です。一例として、脚の筋トレであれば両脚をほぼ均等に使うスクワットから、前脚に強い荷重がかかるランジに変更するなどの工夫が考えられます。

 

 

 

 

身体運動・健康科学実習 I の授業スライド(図表は佐々木准教授提供)

 

──勉強中に姿勢をよく保つ方法と肩こりを和らげる運動・ストレッチは

 あまり一般的な答えではないかもしれませんが、勉強に集中できるならどのような姿勢でもよいと思います。そもそも「良い姿勢」と「悪い姿勢」は区別できるのでしょうか。例えば猫背はよく「悪い姿勢」といわれますが、一方でわざと猫背のように背中を丸めるストレッチもあります。身体の凝りや痛みは同じ姿勢で居続けることで生じる場合が多く、その意味では長時間集中して勉強が出来ていた証拠ともいえそうです。肩こりが生じないに越したことはありませんが、例えば60分勉強したら5分休憩をして、そこでストレッチをしたり、軽く身体を動かしたりする方が、勉強中の姿勢を気にするよりは有効な対策になるでしょう。

 

 その他にも、疲れてきたときに思い切って勉強場所を変えたり、立ち上がって勉強したりすると、眠気覚ましや気分転換になります。また、少しの時間だけでも立つ、歩くなどして座りっぱなしを避けるようにすると、それだけで生活習慣病にかかりにくくなるという研究結果もあります。

 

──試験の時の緊張を緩和する運動・ストレッチは

 これは少し難しい質問で、そもそも緊張は無い方がよいとは限りません。適度な緊張はパフォーマンスを高めることが多くの研究で証明されています。優れたピアニストは本番で緊張しないのではなく、練習の時から自らを緊張させられるため、練習と本番の差が小さいという話もあります。模擬試験を受ける、過去問を解くなど本番に近い緊張を定期的に経験しておくとよいでしょう。また緊張した時に身体の中で起こる反応は勉強でもスポーツでも同様ですので、スポーツで試合経験を多く積んだ人は入試でも力を発揮しやすいかもしれません。

 

 一方で緊張に慣れていない人、緊張しすぎる自覚がある人は、事前に軽い運動をして心拍数を上げておくと、その後しばらくは落ち着きやすくなると思います。ただ何分前にどの程度の運動をすべきかなど一概にいうことは難しいので、運動習慣をつけて自分にあったやり方を見つけるとよいでしょう。

 

佐々木一茂(ささき・かずしげ)准教授(東京大学大学院総合文化研究科)07年東大大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東大大学院総合文化研究科助教、日本女子大学准教授などを経て、19年より現職。
 
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