キャンパスライフ

2018年7月19日

【インスタブームに迫る①】東大生に聞いたインスタの使い方

 

 

 「いい写真が撮れたからインスタに載せよう」「ストーリー撮ります!こっち見て」。このような会話を日常の中でよくする、あるいは耳にする人は多いのではないだろうか。写真共有アプリ「Instagram」(インスタ)は利用者数が2016年8月から2017年8月までの1年で約43%増加し、日本における月間アクティブユーザー数(1カ月の間に1回でも利用や活動のあった利用者の数)は2000万人を突破。さらに、2017年の流行語大賞に写真が見栄えするという意味を持つ「インスタ映え」という言葉が選ばれるなど、大きな注目を集めている。

 

 

 

 なぜ、インスタはここまでの人気を集めているのだろうか。連載企画「インスタブームに迫る」では、東大卒インスタグラマーやインスタの動向を分析する研究員に取材。人々のインスタに対する向き合い方の変遷や知られざるインスタの魅力について掘り下げていく。連載初回の今回は、インスタを利用する東大生4人に、インスタをよく利用する世代である大学生目線での利用法や魅力などについて聞いた。

 

(取材・楊海沙)

 

 

投稿内容はおしゃれなものに限らない

 

 2010年に登場したインスタは、他のSNSに比べ写真や動画に特化している。投稿機能には、投稿がフィード(タイムライン)に流れ永遠に残る通常の機能と、投稿が上部に横並びに表示され24時間で自動削除される「ストーリー」機能がある。

 

 

 通常投稿の内容はサークル活動の集合写真やおしゃれなパンケーキの写真などさまざま。「1人暮らしを始めたばかりのとき、親に毎日食べたものを投稿するよう言われ、仕方なくコンビニのサンドイッチやサバ缶などその日に食べたものを投稿していた」(理Ⅱ・2年、男子)という人や「ラーメンが好きな自分の意地で、食べたラーメンの写真しか載せていない。全部そろっていた方が美しいなあと思ったので」(文Ⅲ・2年、男子)という人もおり、いわゆる「インスタ映え」という言葉で連想するようなおしゃれな投稿に限らず、生活感あふれる素朴な投稿もみられる。

 

 

気軽なストーリー機能の利用が多め

 

 投稿頻度は「通常の投稿は平均すると月に2回ほど。ストーリーは自分の感覚では週に4〜7回ほど利用している」(文Ⅰ・2年、女子)などと、永遠に残ることがないが故に気楽に投稿できるストーリーへの投稿が多い傾向にあった。ストーリーへの投稿内容は、友達と一緒にいるときの動画や通常投稿をするほどでもないちょっとした出来事が多いようだ。「通常の投稿では、友達と以前から計画していた重要度が高いイベントであることが多い。ストーリーは後に残らない分、通常の投稿ほど色彩や配置などを意識しなかったり、突発的な出来事あったりすることが多い」(文Ⅰ・2年、女子)という。「思わず誰かに見せたくなってしまったが、『いいね!』の数を意識しているツイッターでそこまで『いいね!』を稼げそうにないと感じたときは、ストーリーに載せる」(理Ⅱ・2年、男子)というツイッター代わりの使い方もある。「いいね!」の数を気にせずに気軽に自分がいる場をシェアできるのが、ストーリーの魅力と言える。一方で「自分の生活の記録の意味で投稿するため、1日で消えてしまうストーリーに投稿する意味がない」(文Ⅲ・2年、男子)として、ストーリーを利用しない人も。

 

 投稿の際に「インスタ映え」を意識しているかという質問に対しては4人中3人が意識していると答えた。食べ物の写真を撮るときに角度に気を付けたり、背景にこだわっておしぼりの袋や私物を映さないようにしたり、食べ物の撮影に特化したカメラアプリ「Foodie」を使って撮影したり、写真の明るさや色味を変更できるフィルター機能を使ったりなど、さまざまな工夫の仕方があった。一方で「『いいね!』稼ぎのためにいい写真を撮ろうと苦心する様子は見ていて痛々しい」という、「インスタ映え」を追求することに対して否定的な意見も聞かれた。

 

 

ただシェアするだけではない

 

 インスタの魅力としては「誰かと過ごした楽しい時間を、相手への感謝の気持ちも込めてシェアできる」(理Ⅱ・2年、男子)や「写真で日常生活の一コマを伝えられる」(文Ⅲ・2年、女子)というように、写真や動画を用いて人々の視覚に訴えることで、自分の体験をシェアできることがまず挙げられた。「友人のプライベートを垣間見ることで、物理的距離がある中で心理的距離の近さを維持できる」(文Ⅲ・2年、男子)、「一度知り合ったもののその後あまり交流する機会がない人と、インスタを交換しておくことで今後の交流のきっかけになったりすることがある」(理Ⅱ・2年、男子)というように、遠方に住んでいたりあまり会う機会がなかったりして疎遠になりがちな人とも、写真を通じてお互いの近況を知ることでつながりが保てる。その反面「忙しくてなかなか遊ぶ時間がないときに他人の投稿を見ると精神的にダメージを受ける」(理Ⅱ・2年、男子)というように、インスタを開いた途端、自分が置かれている状況と対照的な、他人の生活の充実ぶりを見せつけられて虚しくなることもある。

 

 また「ほとんど手間を掛けずにインターネット上にアルバムが作れる。ただその場で撮った写真を載せるだけなのに、後から見返すと思い出に浸ることができる」(文Ⅰ・2年、女子)といい、自分の思い出をよみがえらせるアルバムとして使える側面も。他にも「ハッシュタグによって視覚に訴える食べ物や景色を検索でき、お出掛けの行き先を決めるときに便利」(文Ⅲ・2年、女子)や「女優さんのきれいな写真を定期的に見られる」(文Ⅲ・2年、男子)という声もあった。

 このようにインスタは、単に写真をシェアして「いいね!」を稼ぎ承認欲求を満たすための表面的なものではなく、自分の思い出を後から懐かしんだり、友人の近況を知ったり憧れの芸能人の投稿を見て癒やされたりなど、投稿する上でも閲覧する上でもさまざまな側面において楽しめる。さらに、人間関係の維持やお出掛け先の決定など日々の生活に役立てることができる奥深いものであることが浮かび上がってきた。

 

 一般に「インスタ映え」する写真とはカラフルであるなどおしゃれな被写体によって成り立つ印象を受けがちで、実際フォトジェニックな(写真写りの良い)スポットや食べ物の流行も起こっている。だが、個人に目を向けてみると、「インスタ映え」を意識する人は多いものの、そのために工夫を凝らすのは撮影方法や写真の加工の時点であり、被写体自体は素朴なものから鮮やかなものまで投稿者の個性や趣向によってさまざまであることが分かった。単に「インスタ映え」とは「おしゃれなものである」というイメージではひとくくりにできないのではないか。

 

 次回は、東大卒インスタグラマーの山田茜さんに、プロ目線でのインスタの使いこなし方やインスタグラマーとしてのやりがいなどについて語ってもらう。

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