インタビュー

2020年12月23日

【100周年特別企画】「東大新聞が与えてくれたもの」石原祥太郎さん(日本経済新聞社) 

 100年の歴史を持つ東大新聞は、これまで多様な卒業生・修了生を世に送り出してきた。社会に出た今、東大新聞での活動をどのように振り返るのだろうか。また、今後の東大新聞のあるべき方向性について、どのように考えるのか。日本経済新聞社でデータサイエンティストとして活躍する石原祥太郎さんに話を聞いた。

(取材・本多史)

 

石原祥太郎さん(日本経済新聞社) いしはら・しょうたろう/17年東大工学部卒。現在、日本経済新聞社で法人向けサービスの開発に従事。20年に国際ニュースメディア協会(INMA)が選出する「30Under30Awards」のアジア太平洋部門で最優秀賞を受賞した。

 

編集とデジタル、両方の視点を生かせる場

 

  東大新聞に入った理由は

 

 昔から新聞に強い関心があったからです。私は愛知県出身で、小さい頃から中日新聞と読売新聞を読んでいました。中日ドラゴンズの優勝を伝える記事が2紙で大きく異なるなど、新聞によるニュースの扱い方の違いが面白く、情報を伝えることの奥深さに引かれました。

 

 入学前から東大新聞の存在は知っていて興味を持っていたので、合格発表時に行っている街頭販売の場で部員の方に入部したいことを伝えました。

 

  東大新聞の活動で特に思い出深いことはありますか

 

 一番思い出深いのはデジタル版(注:東大新聞オンライン)の立ち上げに関わったことでしょうか。デジタル技術に通じている部員は少なかったので、ウェブサイト制作に詳しい外部の会社や関係者との調整にも関わっていました。

 

 一からの立ち上げだったので、マニュアル作りも担いました。紙面からオンラインへの転載の仕方や表記についてルール作りをしましたが、こうした作業を通じて紙面とデジタル版の違いを実感しましたね。デジタル化の可能性や面白さに気付けたことは、デジタル化に積極的な今の会社に就職するきっかけにもなりました。

 

 取材で最も印象深いのは6年前の総長選で刻一刻と変わる情勢を追ったことです。総長選の結果が何時に発表なのか分からない中、締切時刻ギリギリまで粘ったことが印象に残っています。

 

  現在はどのような仕事をしていますか

 

 日本経済新聞社にデジタル職で採用され、現在は法人向けのウェブサービスを開発しています。就活の際は記者になるかソフトウェアエンジニアになるか悩むこともありましたが、どちらの経験も生かせる仕事もあると気付き、日本経済新聞社を志望しました。

 

 新聞記者をしているわけではないですが、東大新聞での経験が大いに役立っています。例えば、東大新聞で記事のレイアウトや見せ方を考えた経験がユーザーにとって最適な記事の推薦に生きています。東大新聞で編集とデジタル両方の視点を養えたことは良い経験でした。

 

  現在、データサイエンティストとしても活躍していますね

 

 工学部でコンピューターサイエンスの勉強をしていたこともあり、東大新聞でも技術を生かせないか試行錯誤していました。

 

 例えば、東大新聞に「TODAI WALKER」というイベント紹介のコーナーがありますが、自動でイベント情報から記事を生成するプログラムを組みました。卒業生の就職先ランキングの作成時も、表記ブレなどをなくすためにプログラムを組んでいましたね。

 

 自動化できる部分は技術によって省力化し、人がやるべき業務に記者が時間を割けるようにするべきという課題意識を昔から持っています。

 

  石原さんにとってジャーナリズムの大事な要素は何ですか

 

 「コミュニティーとの対話」を特に意識しています。情報が不十分なコミュニティーに新しい情報や適切な情報を届けるということです。マスメディアが持つこの役割は、SNSが主要な情報源となりつつある現代において一層重要になっていると思います。

 

  最後に、今後の東大新聞についてどう思いますか

 

 どこの新聞社も売り上げが落ちており、東大新聞も例外ではなく厳しい情勢だとは思いますが、学生が情報発信をする場として続いてほしいです。学生故のフットワークの軽さを生かし、伝統に縛られることなく新しいことに挑戦していってほしいですね。

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