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2022年7月18日

第 145 期正副自治会長 目指す自治会像とは

 

 教養学部学生自治会第145期正副自治会長選挙の開票結果が6月12日に公示され、長谷川恭平さん(理Ⅰ・2年)が自治会長、今村夢空さん(理Ⅲ・1年)が副自治会長にそれぞれ当選した。2人は7月1日から就任している。「課外活動の最大化」などを公約に掲げた2人に公約実現のビジョンを取材した。(取材・金井貴広)

 

課外活動の最大化を重視

 

──自治会執行部に入ろうと思ったきっかけは

 

長谷川 入学してからの手続きの仕組みの複雑さや、当時のオンライン中心の生活で大学と高校の違いに戸惑いを感じ、何となく自治会に興味を持ったのがきっかけ。元々は情報系の事務員として入ったが、活動していく中で学生の生活を向上させていきたいという問題意識が芽生えた。

 

今村 「政治経済研究部」というサークルに入り、金子健・前自治会長に誘われた。大学にもいろいろな問題があることを知った。

 

──今回、正副自治会長に立候補した理由は

 

長谷川 第143期自治会では執行部の混乱があり、見ていてもどかしさを感じた。正副自治会長は2人とも学生のことを考えていたが、方向性の違いから対立してしまった結果学生のためになっていないと思い「だったら自分がやろう」と決意した。第144期の自治会長立候補も考えたが、力不足を感じて断念し、今期立候補した。

 

今村 長谷川さんから誘われて、断る理由もなかった。

 

長谷川 今村さんは政治の理論に関心がある。自分には足りない分野なので、それを補ってくれることを期待している。

 

──選挙では四つの公約を掲げた(表)。最も重視するものは

 

長谷川さん、今村さんの選挙公約(表は東京大学新聞社作成)

 

長谷川 課外活動の最大化。駒場祭はオンラインなどで開催され、大きな制約を学生は課せられた。対面授業が再開した本年度、例年通りに全ての企画を実現させることを目指す。アンケートに基づく具体的なデータを学部に提示するなど、駒場祭委員会と一緒に学部と交渉することを考えている。駒場祭委員会は実務を優先しがちで、学生の声を十分に拾えていない問題もあると感じている。自治会理事会が選出する3人の駒場祭委員は、学生の声を反映させていきたいという人を選出した。駒場祭委員会に、自治委員会での議論や学生へのアンケート結果を踏まえた学生の「総意」を反映するように働きかけていきたい。

 

──長谷川さんは第144期副自治会長を務めていた。第144期の活動の評価・反省とそれを踏まえた第145期の対応は

 

長谷川 第144期はオリ合宿(主に新入生を対象に、クラスの親睦を深めるためにクラス単位で行われる旅行。2020、21年度は実施されなかったが、本年度4月は宿泊を伴わない「オリ旅行」として実施された)の完全な中止の阻止、学生会館のロビーの開放などを頑張った。しかし執行部の人手不足で活動を断念してしまうことが多かった。第145期は1年生の事務員の人数が増え、理事も8人から15人に増加したので、いろいろな活動を前へ進めていきたい。

 

──前期教養課程の学生に向けて、抱負やメッセージを

 

長谷川 広報に力を入れ、自治会の存在を近くに感じてもらえるように6カ月間頑張る。あなたも自治会の一会員だということを頭の片隅に置いてもらいたい。

 

今村 学生と直接関わることを意識したい。何かあったら声を届けてほしい。

 

長谷川恭平自治会長 (理Ⅰ・2年)

 

 

活動実態の周知が課題か

 今回の選挙で長谷川さんと今村さんは「今こそ学生主体のキャンパスを!」と訴えていた。長谷川さんは「学生にもっと自治に参画してもらえるようにしたい」と話す。正副自治会長選挙の投票率を見ると、今回は29.5%(自治会選挙管理委員会発表)と近年では高めだったが(図)、前回の第144期正副自治会長選挙では最初の投票率が4.33%で再選挙が行われるなど、高い水準が続いているとは言い難い。一般の前期教養課程生(会員)の取材からは「活発に活動はしていると思う」が活動内容は十分に伝わっていないという問題も見えてきた。

 

(図)正副自治会長選挙投票率の推移

 

 長谷川さんは「広報活動の強化」と「実績を大量に出す」ことで自治会の魅力を上げていくとしている。長谷川さんは、一般の会員側から「不満や愚痴をぶつけてほしい」と話す。「学生の不満が『10あるとして、自治会の執行部に届くのは『0』」。Twitterなどで「キッチンカー(の食事の料金が)高くない?」といった不満を見ることがあっても、それがメールや自治委員を通して自発的に執行部に届けられること、提案が出されることはないという。執行部が提示した問題を自治委員会で議論するだけでなく、自治委員の側からクラスで出た「ここが不満だな」という意見が来ることを望んでいる。「学生の不満や愚痴が『10』執行部に届くようになることが、私の今考え得る理想の自治会です」と長谷川さん。問題の解決を積み重ねることでより良い学生自治を目指していく発想だ。

 

救済措置継続を求めるビラ(自治会提供)

 

 逆に、自治会の執行部の活動が学生にどの程度伝わっていると感じるか聞くと「30〜40%」だと言う。一般の会員のAさん(文Ⅱ・1年)は「(自治会について)学生の立場から大学の運営に関わる団体、くらいの認識」で、自治会について知っていることといえば立て看板で「2021年の学部交渉は、90分制授業の継続を要求して承諾されていた」旨を見た程度。学生自治に「多少興味はある。自分が自治に関わりたいというより(中略)何が起こっているのか知りたい」と話す。高校生の時に生徒会の執行部をやっていたというBさん(文Ⅱ・2年)も「(自治会の活動が)活発に行われていると思うが学生全体を巻き込んではいない」と感じているという。クラスで自治委員の存在感がほとんどないという認識も示した。

 

 第145期自治会では、理事会で話し合っている内容や検討中のプロジェクトを掲載した『自治会月報』の発行を計画中だ。発行すれば70〜80%の活動が認知されるようになると長谷川さんは見込む。公約の「魅力的な自治会」の実現のためには、キッチンカーの導入といった「実績を大量に出す」ことも重要だと語る。「自治会やるじゃん。みんなの意見を集約すればもっとすごいことができるよ」と思える状況を目指していくと話す。自治会の最高議決機関である自治委員会の活発化について、執行部では5月の第2回自治委員会で始めた「検討議案」の制度は継続し、一般の会員の声を拾えるようにするという。自治委員のCさん(文Ⅱ・1年)は「これから、クラスに議論の内容や決まったことを流していきたいと思う」としつつ、5月に開催された自治委員会について「質疑応答が活発だったが、揚げ足を取るような質問が多くてあまり質の良くない議論をしていた」という感想を示した。

 

 選挙の投票率29.5%は「ちょっと少ないと感じた」と長谷川さんは話す。今回の選挙では自治会室の窓口に加え、駒場Iキャンパスの正門前にテントの投票所を設け、時間を決めて投票を受け付けていた。「誰が選ばれても正直変わらない現状」だと感じ投票しなかったというDさん(理Ⅰ・2年)は「何かを変えてくれるという具体的なビジョンが分からない」と指摘した。

 

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