文化

2022年1月12日

個性豊かな本郷周辺の寺社を紹介! 地域の信仰集め今日まで続く①

 

 新年を迎え、寺社に初詣をして今年の決意を新たにした読者もいるだろう。共通テストを控え、必勝祈願で参拝した受験生もいるかもしれない。文京区の本郷キャンパス周辺には、古くから信仰を集めてきた寺社が複数ある。区の歴史や文化財を伝える文京ふるさと歴史館に寺社について聞くとともに、四つの寺社に来歴や東大や地域との関わりについて取材した。この機会に、本郷周辺の寺社巡りをしてみてはいかがだろうか。今回は知っておきたい文京区の寺社の歴史背景や、経営の担い手が減少する寺社の現状について紹介する。(取材・佐藤健)

 

本郷キャンパスや文京ふるさと歴史館、特集で取材した寺社などの位置関係

 

 

寺社巡りの前に知っておきたい 文京区寺社の歴史背景と特徴

 

 文京区をはじめ、かつての江戸市中に該当する谷中や三田、新宿などには寺町と呼ばれる寺院の集中する地区がある。これは、江戸時代の交通手段が多くの場合、徒歩に限られていたことが主な原因と思われる。現在の東大農学部正門前に当たる駒込(本郷)追分は、江戸幕府の城下町の街道の拠点となった日本橋から1里(約4㎞)、徒歩で約1時間の距離にあった。家ごとに特定の寺に所属する檀家(だんか)制度が確立してゆく江戸時代に、日常の生活から離れ、祖先の供養に訪れる寺が特定の地域に集中してゆく背景には、こうした地理的環境が影響していたと考えられる。

 

 吹上(ふきあげ)稲荷神社や吉祥寺などのように、江戸城造営や江戸の市街地の拡充に伴って、文京区の現在地に所在することとなった寺社もあれば、その逆に文京区から他地域に移転した寺社もある。本郷キャンパス周辺の寺社を巡りながら来歴について調べると面白いだろう。

 

 一般に、寺が行う宗教行事は檀家などの特定の人が参加し、神社の祭礼などには氏子だけでなく地域の人々が集う傾向がある。例外もあり、文京区では富士神社の山開きに関わる祭礼には地域の人々が参加できるが、山開きそのものは、富士講に関わる人々しか関与できず、吉祥寺などの除夜の鐘つきには檀家でなくとも参加できるという。初詣だけでなく、地域の寺社の行事にも思わぬ形で参加できるかもしれない(感染症対策のため、変更となっている場合があります。詳しくは各寺社にご確認ください)。

 

伝統文化の担い手減少 新たな関わり方の模索を

 

 現在、核家族化や少子高齢化の影響を受け、全国的に僧侶が不在となる寺が増え、神社の経営を支える氏子の減少も著しい。それと同時に、寺社共に、今まで宗教儀礼や祭礼に無償で参加してきた人々が減り、獅子舞や神楽などの地域社会の伝統文化を継承する人材が不足しているという問題もある。

 

 一部の寺社では清掃活動の体験や行事の手伝いを通した地域社会との新たな関わり方が模索されている。東京都が管理する文化財庭園では、伝統的な景観を保護するという観点からエレベーターやエスカレーターの設置を認めない基本方針を踏まえ、ユニバーサルデザイン導入の代わりに造園を学ぶ学生を介助ボランティアとして配置するという意見が出た。その他にも地域医療の現場を体験可能な、医学生がボランティアとして参加する実習の機会が提供されている。

 

 地域社会で学生がボランティアに取り組むように、大学生を中心に学生が地域社会を構成する一員として、伝統文化を担うことができる仕組みを考えていけば、檀家や氏子などの宗教活動とは異なる、新たな関わり方が生まれるのではないだろうか。

 

取材協力:文京区文化資源担当室(文京ふるさと歴史館)

 

個性豊かな本郷周辺の寺社を紹介! 地域の信仰集め今日まで続く②

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