就活

2024年2月20日

総合職合格者は8年で193人減。現役東大生、霞が関への「壁」の実態──東大生×国家公務員①

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 昨春の国家公務員採用総合職試験で、東大の合格者が200人を割り話題になった。東大生のいわゆる「官僚離れ」だ。いま、東大生の国家公務員観はどうなっているのか。またその価値観は、現役の国家公務員から見てどれほど実態に即しているといえるのか。本特集では、東大生が国家公務員に「なろうと思うまでは大変か」「なるのは大変か」「なったら大変か」を考えていく。初回は「なろうと思うまでは大変か」について。東大の合格者数の推移やアンケートを基に、現役東大生が感じる国家公務員就職の「壁」の実態を分析する。(構成・金井貴広、取材・丸山莉歩)

 

①東大生が国家公務員に「なろうと思うまでは大変か」(本記事)

 【解説】国家公務員総合職試験

 東大出身の合格者数・就職者数の推移

 東大生アンケート 国家公務員の印象は

 試験対策コミュニティーも

②国家公務員に「なるのは大変か」

民間併願が容易に? 総合職試験、卒業生の対策&人事院の工夫──東大生×国家公務員②

③国家公務員に「なったら大変か」

「ブラック」の印象は東大生も 実状は?国家公務員の語る働き方の現状──東大生×国家公務員③

 

試験は四つに大別

 

 国家公務員として就職するためには、国家公務員採用試験に合格し、採用候補者名簿に載った上で、採用の前年度の官庁訪問で各府省から内定を受ける必要がある。総合職試験は、大きく四つに分かれる(表1)。春には大卒程度試験と院卒者試験があり、法律、経済、工学、デジタルなど区分ごとの専門試験を受験する。このうち院卒者試験の法務区分(2022年度採用試験までは秋実施)は、司法試験合格者を対象としている。秋に実施される大卒程度試験の教養区分は、専門知識を問わずに実施され、4月1日時点で満19歳の年度の試験から受験できる。

 

2024年度国家公務員採用総合職試験の概要

 

全体的に減少傾向 ただし昨年の合計合格者は前年より増加

 

 東大の総合職試験合格者は減少傾向にあり、過去10年で最多だった2015年(560人)と昨年を比べると、193人減っている(約35%減、表2)。ただし23年の春の総合職試験合格者は193人で前年比24人減だったが、秋の試験合格者は174人で、前年比71人増だった。第2回で言及する受験資格拡大の影響が示唆される。

 

合格者・就職者数の推移

 

 東京大学新聞社の集計による東大卒業・修了者の官公庁への就職者数も、全体として減少傾向であることが分かる(一般職試験など、総合職試験以外の採用形態も含み得るため、合格者数と単純比較はできない)。過去10年で最多の15年度卒業生・修了生(16年卒)の数と比べると、22年度卒業生・修了生(23年卒)は69人減少して169人になっている。

 

東大生アンケート 「激務薄給」の印象も

 

 東京大学新聞社は、東大生を対象に国家公務員の採用総合職試験および働き方について、印象を問うアンケートを実施した。就活中の人、国家公務員試験対策をしている人などに回答を呼び掛けた。回答は11月26日~1月29日に収集され、有効回答数は57件。

 

 試験に関して苦労した点の記述で目立ったのは、政策課題討議試験などの共同練習をする人脈がない場合に苦労したという声だ。民間企業との就活の両立の難しさの指摘もあった。国家公務員の働き方については、やりがいや社会に対する貢献の大きさに関する記述が複数あった。一方で、激務・長時間労働などの印象、給料が低い・労働環境が悪いなどの印象はともに10 件を超えた。ワークライフバランスの取りづらさや国会や政治家への対応の煩雑さをイメージする人も複数人いた。

 

約350人の対策コミュニティー 志望者が内定者と練習

 

 東大生アンケートでは、試験を受けた人の中に試験対策コミュニティーに所属していたという回答が見られた。その一つが東大の国家公務員志望者の互助組織であるCRAS(25卒向け)だ。CRASは昨年度の組織名で、毎年度、名前を変えて組織されている。今年の受験に向け対策を始めようとしている組織はDAWNという。CRASに所属して試験対策を行い、これからDAWNの運営を務める教養学部の3年生に取材した。

 

 CRASやDAWNには、当該年度の教養区分の受験資格を満たす年齢の国家公務員採用総合職試験の志望者と内定者が所属する。東大生であれば学部・学科にかかわらず加入でき、他大学の学生も途中の時期から参加が可能だという。参加者はメッセージングアプリのSlackでつながっている。

 

 例年4月ごろまでに入会案内のビラが作成され、Googleフォームを通じてSlackへの招待が開始される。昨年の受験に向け対策をしていたCRASの参加者は、志望者と内定者合わせ約350人。教養区分の受験可能年齢引き下げにより、例年より増えたとDAWNの運営者は分析する。

 

 秋の教養区分試験に向けては、網羅的な試験対策が図られている。政策の立案や説明などを行う企画提案試験や、政策課題について複数人で討論する政策課題討議試験、人物試験(個別面接)の練習に加え、総合論文試験の対策会も実施。内定者が模擬面接の面接官を務めるなどする。春試験対策は人物面接の練習が主だという。他にも、官庁訪問に向けた自主ゼミなども行っている。

 

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