学術

2025年8月5日

【戦後80年】1945年7月 陣中の学徒兵の歌(『大學新聞』1945年7月21日号より)

 今回は、1945年7月21日発行の「大學新聞」より、3人の学徒兵が陣中から寄せた歌を転載する。戦局の悪化し本土決戦が叫ばれるこの時期の歌である。当局による検閲下の記事ではあるが、「当時」について考えるきっかけにしてほしい。(改行など一部を改変)

 

述懐

 

〇〇警備隊にあっての感懐を恩師久松潜一教授に送って来たもの── 東大文卒 秋本吉郎

 

この戦局とき警備まもり徹りて大八州神祖かみおや国に敵ましすな

 

えのわれなりながら兵とありてこのひとときをまもり徹らな

 

慶州の石仏悟る助役ありて夜巡察じゅんさつの列車待ちをり

 

 

ビルマ戦線 東大法卒 菊池憲太郎

 

戦友のせなの蛍をたのみとしやみのヂャングルわが進み征く

 

わけ合ひし煙草もつきぬ草の葉を巻きて煙吐く我はつはもの

 

糧つきて三日になりぬ弾丸の中萱の根ほりて兵とむさぼる

 

 

 

ビルマに想ふ 東大文卒 唐木邦雄

 

何気なくたたきおとせるほたるなれあへぐが如き光かなしも

 

きらめける白き甍のたたなはる円き小山は眠れるごとし

 

はいちまたもやのたちめて馬車は軽げに朝風きれり

 

※1944年7月から1946年4月の間、全国の学生新聞は『大學新聞』に一本化され、本紙の前身『帝國大學新聞』の編集部が編集を主に担っていました。終戦から80年の節目を迎え、戦争の当時を語る人々は減る今、遠い存在となりつつある「当時」を考える一助になれば幸いです。

 

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