STUDENT

2024年1月26日

留学生が語る東大生活①

 

 東大は、研究活動での多様性と国際性を重視し、世界中から留学生を受け入れている。日本を代表する大学として研究の質の高さは疑いの余地はないが、実際留学生はどのような生活を送っているのだろうか。この記事では、新型コロナウイルス感染症による隔離や行動制限の影響を含め、博士号取得候補者2人に東大での留学生活について聞いた。(取材・Naomi Hadisumarto)

 

研究とプライベート、バランス大事に

 

──A.L.さん(中央アメリカ出身)

博士課程3年目。2020年4月に入学した。しかし、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で空港の国境が制限され、出発のわずか1週間前に飛行機がキャンセルされてしまったため、来日は20年11月となった。7カ月間も入国を待つことができたのは、博士号の取得に欠かせない逆境を乗り越える力が備わっていることの証である。

 

充実した時間を期待し東京へ

 

──どのようなことを期待して東大に入学しましたか

 

 研究中心の生活を思い描いていました。一方で、週末に面白いアクティビティをしたり、公園でランチを楽しんだりして充実した時間を過ごしたいと考え、世界最大の都市の一つである東京を選びました。しかし、期待と現実は少し違いました。もっと旅行したり、街をゆっくり散歩したりすることを期待していましたが、博士課程の最後の年はほとんど実験でいっぱいいっぱいでした。それでも、私はなんとか週末を楽しんで、研究とプライベートのバランスを保っています。

 

──新型コロナウイルス感染症によるロックダウンはあなたにどのような影響を与えましたか

 

 旅行に行きたいという思いに大きな影響を与えましたが、「Go To トラベル」のおかげで、観光客が少ない期間に京都を訪れることができました。研究に関しては、幸いにも初期段階だったためほとんど影響を受けず、リモートで行えるドライ解析に集中していました。この対応には利点もありましたが、細胞培養などのウェット実験にもっと時間があれば、研究がさらに進んだかもしれないとも思います。それでも、研究生(修士・博士課程への進学に向け、専門分野を研究できる)としての最初の1年は、合計4年間の博士課程の準備に非常に役立ちました。

 

──なぜ研究生になろうと思ったのですか

 

 奨学金について調べる中で、新しい都市に順応し、研究スキルを磨き、プログラミング、日本語の授業に参加することの価値を強調する多くの記事に影響を受けました。最初のセメスターは母国で過ごし、オンラインで研究室のセミナーに参加しながら、徐々に学術的、文化的環境に慣れていきました。生物情報学に関するバックグラウンドがほとんどない状態で修士号を取得した私は、博士号への移行には生物情報学の実践、特にRNA配列解析が必要でした。修士課程でも何度か分析をしましたが、他の人の助けを借りていたため、まだ自立できていませんでした。しかし、データの不足により博士課程の研究計画とドライのスキルの習得が遅れていたため、プログラミングの習得と「集中日本語コース(Intensive Japanese Course)」に集中しました。特に私には日本語の学習経験がなかったので、研究生としてまず1年間を過ごすという決定は、順応、スキル向上、言語習得に重要だと分かりました。

 

流されずに熟考を

 

──なぜ日本を選んだのですか

 

 奨学金の機会があったからです。私には個人的な研究目標があり、博士号を取得すれば、それを達成するための道筋を付けられます。

 

 研究生になる前に、18年のクリスマスと19年の夏に旅行も兼ねて日本を訪れ、教員との面会をしました。後者の訪問は、東大、東京海洋大学、北海道大学の教員と面会したため特に重要で、最終的に私の現在の所属につながりました。現在の研究室の教員にお会いしたことで、研究室の設備やキャンパス全体の雄大な様子を直接見ることができ、とても印象に残りました。現在の教員は独特のバックグラウンドを持っており、以前の研究室での経験と比較してアプローチが異なる可能性があることを示唆していました。学術的なバックグラウンドの多様性は、私の研究に原動力を与えています。

 

──ホームシックはどうでしたか

 

 特にクリスマスのような母国で大切にされているイベントの時期にはホームシックになることがありますが、すでに別の外国で6年間留学しており、家族との別れにはある程度慣れていました。

 

 日本に到着した最初の時期は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う2週間の隔離という試練に直面しました。2週間コンビニのご飯しか食べられず、最初は楽しんでいたのですが、長く続くと見慣れたコンビニに対して一時的に嫌悪感を抱くようになりました。隔離後最初に食べた日本のカレーは格別でした。

 

──友達を作るのは難しいですか

 

 研究室ではよくパーティーが開かれるので、難しくはありません。同じ集中日本語コースで同じ隔離期間を共有した、別の研究室の友人もいます。友人のほとんどは大学内でできました。親密なコミュニティーで、一緒に飲み物を飲める仲の良い友達が数人いれば十分だと思います。

 

──過去の自分にアドバイスはありますか

 

 将来について徹底的にリサーチし、熟考することが本当に重要です。流れに身を任せるのではなく、目標や、生活、研究、人間関係のバランスについて慎重に考えてほしいです。海外移住という側面では、語学力が重要です。大学院での研究は英語で十分だと想定していましたが、卒業後の就職を考えると受入国の言語を学ぶことが必要になってきます。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit
koushi-thumb-300xauto-242

   
           
                             
TOPに戻る