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2018年1月26日

一人一人が教育にコミットする社会を EDUCATION LABの取り組みとは

 2017年12月、学生団体EDUCATION LAB主催による「第1回EDUCATION LABこどもの貧困×教育」が開催された。その模様をレポートする。

(取材・沢津橋洋)

 

 

 「社会問題への解決方法を教育を用いてデザインし、教育の可能性を発信している学生団体」であるEDUCATION LAB。門脇敦司さん(育・2年)を中心に留学経験のある4人組が中心となって設立された。「デザイン」に強みがある団体だが、設立・運営メンバー全員が学部2年生と若く、立ち上がったばかりで先輩もいない中、ワークショップを立案し、ファシリテーションをしてクロージングも自らして、と運営をやり切る力がある。

 

 

 設立メンバー4人のうち、アメリカの大学で教育学を専攻する2人と、東大・慶應義塾大学でそれぞれ教育学を専攻する2人が設立メンバーの内訳だ。「教育」は誰しもが受けてきた経験があるだけに「自分はこう思う」と一家言を持つ人も多い。教育分野においては昨今NPOなどでのインターンの受け皿も多く、塾講師経験者も合わせると大学生のうちから教育に携わる機会は拡大しているといえるが、EDUCATION LABのメンバーは教育学のトレーニングを受けた上でファシリテーションをしている点に強みがある。特に「議論に火をつけるスキル」があるのはアメリカ仕込みか、ゲストスピーカーの講演が終わった後のグループに分かれてのディスカッションでは、各テーブルに分かれた設立メンバーが自ら口火を切り、議論を積極的に導いた。記者が見たところ、13人の参加者のうち、議論中一度も口を開かなかった参加者はいない。各自が「自分はこう思う」というの熱に浮かされたように話し、議論を約1時間続けた。

 

 

 

 イベントのテーマは「貧困問題」。足立区を拠点に子どもの貧困対策活動を続けるアダチベースでインターンする池端健さんがゲストスピーチをした。ディスカッション後に各班が「子どもの貧困を教育が解決するためには?」にまつわる提案のプレゼンテーションをした。

 

 注目を集めたのが「校歌のMV(Music Video)を作る」という提案をしたグループ。「中高生が親や先生以外の大人と会う機会が少ない」ことによる「ロールモデルが見つからない」ことを問題視し、その原因を「卒業生が母校に遊びに来にくいのでは?」と推定した。「校歌のMV」作りにより母校への愛着を湧かせ、コミュニティをつくりたいという狙いだ。

 

 

 

 教育を受けた経験は誰しもがある。教育は社会の根幹であることは間違いない。そのような大切な教育を、専門職に任せてばかりでいいのだろうか? そのような問題提起をしたのが、40年前に『脱学校化の社会』を著したイリッチだ。彼は教育という営みを学校が独占するのではなく、広く社会成員が教育に関わっていく未来を論じた。

 

 記者には、そのイリッチの問題意識とEDUCATION LABの取り組みがつながって見えた。「専門職に独占された教育」への問題意識。グループディスカッションを通じ、各参加者が教育への問題意識とコミットメントする意欲を増す姿を見て、未来の教育の一つの形を見た。

 

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