EVENT 2016年4月13日

金融機関の生き残り策は“プラットフォームビジネス”…FinTechイベントレポート①

3月11日「フィンテックとこれからの金融システムのあり方」と題する公開シンポジウムが東京大学金融教育研究センターにより開催された。主催者の柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)は「フィンテックやブロックチェーン技術が、世の中でビジネスとしてはかなり色んな形で注目されているが、これは単に新しいビジネスが出現するという話に留まらず、金融産業やこれからの経済を考えていくうえで重要なポイントだと捉えている。」とシンポジウムのテーマとしたフィンテックが社会にもたらしうる影響力の大きさと広さを、冒頭で強調して述べた。

 

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柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

 

インターネット誕生前 「IT産業」は無かった

 

「10年から20年たつと“金融業というのが昔はあったね”というような時代が来るかもしれない、というくらいフィンテックの影響は大きいのだろうと思う。単にビジネス上の話ではなく学術上も重要な研究課題だと捉えている。」

 

シンポジウムの登壇者には企業のみならず、法学、経済学など様々な分野からの専門家が招かれ、さらに社会的な仕組みを考える必要性から官公庁のスピーカーも招いたという柳川氏。なぜ、フィンテックはビジネスに留まらないのか。この理由を同氏は以下のように述べた。

 

「一般に、技術革新はコスト低下、品質の向上をもたらし、いままで出来なかった仕組みが可能になる。事業のセットアップコストを低落させ、少人数でアイデアを持つ者が集まり事業を運営することを可能にする。したがって特定の既存産業への参入が容易に、ひいては新産業の創出が可能となる。

 

フィンテックと金融業界について考えると、セブン銀行などの例にみるように、金融をスタート地点とした業界横断型のビジネスが沢山可能となる。今までは全く別のビジネス、別の業界にいたものの、実は横断して作った方がはるかに安い組み合わせが存在し範囲の経済性があるというものが出てきうるなか、新しい産業が誕生するかもしれない。振り返ればIT産業というものもインターネットが生まれる前は無かった。したがって今後は金融業では無くて、フィンテックという業界なのかはわからないけれど、何か別の名前のついた産業が生まれるくらいの変化が起きうる。」

 

と、フィンテックが個別のサービス、企業の枠を超えて“産業構造”に変化をもたらしうることは学術的研究をおこなう意義を有するといえる理由の一つだと述べた。

 

伝統的な金融機関にとっての生き残り策は「プラットフォームビジネス」

 

技術革新に後押しされたフィンテックが起こす業界変化のもとでは、既存の金融業界も大きな変化に見舞われる。そこで伝統的な金融機関は、今後何で稼ぐか、収益源をどこにするのかという点をもう一度改めて考えることが重要となると柳川氏。

 

「いままでと違うビジネス体系を産業や業界ごとではなく、横につないでいくプラットフォームビジネスが、このインターネットの時代には非常にヒットしており、これをうまく展開していくことが、少なくとも伝統的な金融業にとっての一つの生き残り策だ。ここでプラットフォームビジネスと聞いてGoogleやAmazonが分かりやすい例として思い浮かぶかもしれない。しかし、今の銀行がすぐにGoogleのようになるかというと難しい。だから(二例のように極端ではなくとも)もうすこし色んなレベルでビジネス体系を変革しうるし、もう少し金融業の一部分をプラットフォーム化することもできるはずだから、どの部分をプラットフォーム化してそれぞれの人達に使ってもらうかを考えなければならない。これは金融機関にとっての課題でもありチャンスでもある。」

 

技術革新に合わせた規制 安全性や信頼性の担保に課題

 

最後に企業活動と強く関わる法的な「規制」について。「多くの規制は今までの産業構造を前提にルールが作られてきたが、新しいビジネスができると技術革新に合わせてどう制度的に安全性や信頼性を担保していくか議論していかなければならない。今後企業活動に対する規制がどう変わるかによって、フィンテックビジネスができるか否かも大きく変わる」と述べながら、現状その将来像がなかなか見えないところにビジネスの難しさがあるとした。

 

なお、柳川氏は今回のシンポジウムを皮切りに、今後も継続的にフィンテックをテーマとした研究フォーラムを開催するという。今回のシンポジウムで提起された問題への議論を進め、アカデミアの分野で研究する価値や面白さを含め探求していきたい、と展望を語った。

 

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(取材・文・写真 北原梨津子)

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