PUBLIC RELATIONS 2019年9月26日

「HONGO AI 2019」最終選考会進出スタートアップ紹介・前編

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催するAIスタートアップ企業の表彰イベント「HONGO AI 2019」の最終選考会と授賞式が、10月2日に本郷キャンパスの伊藤謝恩ホールで行われる。それに先立ち、弊紙オンライン版では最終選考会に駒を進めた全14社を2回に分けて紹介。今回は前編として以下の7社を紹介する。

 

・AIQ株式会社

・株式会社ACES

・インスタリム株式会社

・株式会社RevComm

・株式会社DeepX

・ソシウム株式会社

・株式会社日本データサイエンス研究所

 

HONGO AI 2019についての詳細はこちらの記事を参照

 

 

AIQ株式会社

 

 「Discover a New Me」をモットーとし、AIによるプロファイリング技術を基にしたデジタルマーケティングソフトウエアの開発、販売を行う。最高執行責任者(COO)の渡辺求さん、CCOの髙島孝太郎さんは、メディアを通じて多くの選択肢が提供される現代において自分が本当にやりたいこと、欲しいものを見つけることは難しいと語る。そういった「本当の好き」を提示するために、UGC(User Generated Contents、ユーザーの手によって制作・生成されたコンテンツの総称)からデータを抽出するソフトウエアを開発。さらに、AIソフトウエア「LiveReal」を開発し、人間の手で行われてきた投稿者の属性分析を効率的に行うサービスを提供している。

 

 この他にもSNSの分析や画像解析を行う数々のAIソフトウエアを開発。技術の性能や画期性を売りにするスタートアップは多いが、それらに加えて明確なユースケースを持ち、実際に多くの企業に技術提供をしているスタートアップは少ないのではないかと強みを語る。大手企業で技術と実績を積んだ社員たちは「こだわり」や「夢」、「先端技術」などへの九つの愛を胸に急成長を遂げる。

 

 

株式会社ACES

 

 工学系研究科松尾研究室発のスタートアップ。ディープラーニング(データを基に機械が自動的に特徴を抽出する技術)を用いた画像認識技術などAI技術の開発、パッケージライセンス提供を行う。主力パッケージの「SHARON」では、人間の行動や感情の認識、物の検知などを行う画像認識のAIアルゴリズムを提供。従来人の目で見てきたものを「機械の目」を通してデジタル定量化し、問題の最適化を図る技術で、広告代理店の電通と協力してプロ野球球団への導入も進めている。他にも、多くの大手企業と連携してディープラーニングの社会実装を進めている。

 

 ACESの強みは「アカデミアの最先端アルゴリズムをシンプルにビジネスフローに組み込み活用できること」と語る代表取締役の田村浩一郎さん(工学系研究科・博士1年)。最先端AI研究の社会実装に力を入れる松尾研究室に在籍する田村さんは、アカデミアとビジネスの距離(ギャップ)に価値が存在すると分析する。人間が行う繰り返し作業や複雑で非連続的な作業をAIアルゴリズムによって自動化、効率化し、よりシンプルで誰もが生き生きと暮らせる社会の実現を目指す。

 

 

インスタリム株式会社

 

 HONGO AI AWARDを受賞した各社の中で異彩を放つ、フィリピンで事業を行うスタートアップ。起業のきっかけは創業者の徳島泰さんが青年海外協力隊の活動中に目の当たりにしたフィリピンの風景だ。足が不自由な人が義足を手に入れられず、結果として満足のいく生活を送れない。CSOの梶芳朗さんによると、世界的に見れば義肢装具を手に入れられる人は、装着の必要があるうちのわずか10%程度にとどまり、特に発展途上国でその問題が深刻化しているという。多くの人に義肢装具を届けるために、起業を決意した。

 

 従来の義肢装具製作では石こうで型を取るなどのアナログな作業を伴う一品生産が行われており、製作コストと技師の不足のために価格が高くなっていた。そこでインスタリムは、AIを用いて患部のデータからソケット(断端を収納する部分)のモデルを作成し、3Dプリンターで義足を出力するデジタル製造技術を開発。価格と製作時間の大幅な削減に成功した。

 

 日本のスタートアップでは珍しく、日本、フィリピン両国のグローバルチームで事業を展開するところが強みであると語る同社は今年6月からフィリピンでの事業を開始。今後はインドなど世界各国への展開を目指す。

 

 

株式会社RevComm

 

 音声解析AIを搭載したクラウド電話「MiiTel」を提供しているRevComm。人工知能で電話営業・顧客対応を可視化して生産性を飛躍させるサービスである。「営業における最大の課題は、顧客と担当者が何を・どのように話しているか分からない、ブラックボックス問題」と代表取締役の会田武史さんは言う。「営業トークが可視化されていないことによって、労働集約型の属人的な、数打てば当たる電話営業・顧客対応に陥っています」

 

 「そこに課題があったから」起業したと語る会田さん。日本社会全体で生産性の向上を図っている中、生産性向上に寄与する製品の開発を考えたとき、企業活動の中で一番生産性が低い営業に目を付けたという。強みは全てフルスクラッチで自社開発していること。自社エンジニアによる開発で、需要に合わせて作られた商品だからこそ、現場で使われ役に立っているという。実際に導入された会社では営業の質が向上し、教育コストも下がった。最終的には人間を電話営業から解放することを目標にしている。

 

 

株式会社DeepX

 

 「先端人工知能を駆使してあらゆる機械を自動化する」ことをミッションに掲げるDeepX。代表取締役の那須野薫さんは、働き手不足が深刻化する日本社会において、建設業や食品加工業、農業などといった社会の基盤に関わる産業が崩れていくことを危惧していた。所属していた工学系研究科の松尾研究室で研究したディープラーニング技術を生かして社会貢献できると考え、博士1年次にDeepXを起業。

 

 機械を自動化するためには、ソフトウエアであるAIを開発するだけでなく、ハードウエアのメーカーとの連携が重要になる。日本には多くのハードウエアメーカーがあり、グローバルな競争力の回復のためには、機械の自動化を推し進めることは有効な手段であると語る。「ベンチャーでハードウエアメーカーと連携するのはスタートアップには難しいので、それ自体が強みになります」。AIのシステムそのものにとどまることなく、メーカーと連携し、実際に問題が起こっている現場に足を運ぶことで社会課題の解決を目指す。

 

 

ソシウム株式会社

 

 創薬プラットホームを提供するソシウム。当時国立研究開発法人産業技術総合研究所に所属していた、最高技術責任者の堀本勝久さんが開発した技術を基に、2017年に設立された。リスクの大きい製薬というビジネスにおいて、製薬の成功確率を上げることで、製薬事業の安定化につなげることができるのが強みだと代表取締役の高橋学さんは語る。具体的には、薬の有効性メカニズムの解明、開発を断念した薬の再開発、そして薬の効果の有無を判定に関するサービスを提供。効果の有無の判定に用いる「層別化マーカー」にAIの技術が応用されている。

 

 ただ、堀本さんは第一に社会実装の重要性を強調する。「重要なのはテクノロジーよりむしろ、社会課題の解決です」。AIはあくまでも道具の一つであり、薬を作って世の中に出すという目標を達成することこそが重要なのだという。国や人種に関わらず、病気を治す薬は必要とされる。そんな分野だからこそ、日本のベンチャーの技術で社会に貢献することに意味がある。

 

 

株式会社日本データサイエンス研究所

 

 日本の基幹産業にAIを導入して労働生産性を上げることを事業としている日本データサイエンス研究所。「日本をアップグレードする」ことを使命として、アカデミアの知を社会実装する事業を展開。クライアントの利益に直結したAIサービスを提供している。不在配達を減らすAIアルゴリズムの実証実験で、不在配達率を従来の20%から2%まで減らすなど、実績も多い。代表取締役の加藤エルテス聡志さんは、事業の背景として、日本の人口減少率の高さ、労働生産性の低さを挙げる。「労働者がどんどん減っているのに、労働生産性も他の先進国に比べて低いのです」

 

 一つの企業だけで完結しては駄目、というのが加藤さんの主張だ。例えば、アカデミアには宝の山のような論文がたくさんあるのに、企業は外に情報を取りにいかず、全く生かされていない。そういう状況で産官学の連携を支援することが労働生産性の向上につながる。さまざまなベンチャーが集結する本郷において、とがった技術を持つ企業同士をつなぎ、組み合わせる指揮者のような役割を担いたいという。

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