COLUMN 2019年11月11日

国際化に合わせた言語教育 インタークラスの実態に迫る

 東大には歴史的にドイツ語・フランス語・中国語の既修クラス(以下、既修クラス)があり、一つにまとめて俗にインタークラスと呼ばれている。今年から理系中国語TLP(英語以外の外国語の運用能力を集中的に高めるプログラム履修者によるクラス)の学生も加わり合計50人を超える大所帯となった。インタークラスの学生らによる座談会を開催、また大学側の見解を聞き、その実態を解明する。

(取材・趙楠)

 

学生の声 多様な学生が盛んに交流

 

(左から)石川さん、武さん、山下さん、松浦さん

 

  まずは自己紹介をお願いします

 

松浦愛さん 文Ⅰ既修フランス語です。小学校卒業まで米国にいて、中学は帰国子女として受験しました。中1から週に1回学校でフランス語の授業を受け、高1からは第1外国語としてフランス語を勉強するようになりました。

 

山下陽一郎さん 理Ⅰ既修ドイツ語です。中3の時に1年間だけ必修で第2外国語を学ぶことになっていたので、ドイツ語を選び、高校の間も続けました。

 

武伯寒さん 理Ⅰ既修中国語です。両親が中国語話者で、小学校卒業まで上海の日本人学校にいました。

 

石川皓大さん 理Ⅱ中国語TLPです。中国語は高校の頃趣味で数カ月勉強していた程度です。

 

  インタークラスに入って良かったことを教えてください

 

 やはりインタークラスはみんな第2外国語を習得していて、TLPに認定された人たちですから、他のクラスに比べてバックグラウンドが多様な人が集まっていると思います。みんな自分と異なるものに対して寛容な気持ちを持つ雰囲気がある気がします。

松 私は中学と高校でフランス語を学ぶ機会があったのですが、インタークラスには自分で決断して留学に行った人もいるので、自分がどれだけ未熟なのかを実感しました。

 僕は既修中国語クラスの学生の影響もあり、今はスピーキングに関しては英語よりも中国語の方ができる気がします。

 休みの日にみんなで集まってボードゲームができるのもインタークラスならではだよね。

 普通のクラスは孫クラ(2学年下で同じ組のクラス)とはほとんどつながりがないようですが、インタークラスは社会人の先輩が今でもよく遊びに来てくれるし、歴代の卒業生が集まる大コンパが開かれたりして上下の結び付きが強い。

 

  語学を生かして将来は何がしたいですか

 

 欧州ではドイツ語を使う人が一番多いですが、アフリカなどの途上国ではフランス語の方が多く使われていますし、外務省や国連機関でもフランス語ができると有利になります。自分も将来途上国の開発に関わる仕事をしたいからフランス語を学びました。

 僕は進学先すら決まっていないのですが、ただ言えるのは言語が好きということです。Sセメスターはインドネシア語の授業を取り、夏休みは自分でラテン語を勉強しました。

 インタークラスの人ってみんな言語が好きだよね。

 私も第3外国語で韓国語取ってる! やはり第2外国語の学習に余裕があると他の人より言語間の比較がしやすいから他の言語の習得も早い気がする。

 

大学の声 討論を通し柔軟な思考を

 

 大学がインタークラスに対してどのような見解を持っているかを教養学部等事務部教務課前期課程第一係の職員に取材した。

 

 既修クラスという言葉を初めて確認できた資料は1976年度の『一般教育等の履修について』(現『履修の手引き』)だという。

 

 クラス指定科目の関係からクラスの人数が均一である必要があるので、人数を調整するため今年度から理系中国語TLPクラスを毎年比較的人数が少ない既修中国語のクラスと合併することとした。

 

 既修クラスは年によっては人数が極端に少なく科類によっては0人の年もあるが「外国語の先生方は既修クラスが教養学部の前期課程の中で重要な役割を担っていると考えているので、簡単になくなることはないと思います」。既修クラスはグローバル化社会の中でリーダーになれるような学生に対して適切な言語教育が行われており、重視されている。

 

 既修中国語クラスの授業を教え始めて3年目になる毛興華講師(教養教育高度化機構)は「既修クラスは1年目に発表と討論を中心に授業を行い、手応えを感じたので続けてきました」と語る。初修クラスのように定型がない分、毎回時事性のある話題を用意している。

 

毛 興華(もう こうか)講師(教養教育高度化機構)

 

 授業の目的の一つは、将来必ず何かしらの形で中国と関わりを持つ学生たちが中国現代社会の話題性のあるトピックに触れることで、将来を考えるきっかけになってもらうことだという。「既に語学力が一定の水準に達しているので、より高度な文法を教えるよりも中国により興味を持ってもらう方が大切だと思います」

 

 もう一つは、グローバルな視点を持たせること。中国という国は非常に複雑だが、中国人にはそれをあまり意識していない人がいるため、日本と中国を両方概観できる立場にいる既修中国語クラスの学生には固定観念にとらわれないでほしいという。「大学時代に討論を通していろいろなことを考えることで、大人になっても柔軟性を持ち続ける大切さに気付いてほしいです」

 

 このように、今年から理系中国語TLPの学生が加わったインタークラスは大学側からも重視される存在であると言える。学生は日々切磋琢磨して、第2外国語の向上だけでなく、新しい言語への挑戦にも努めている。そんな語学力に富んだインタークラスの生徒の将来に期待だ。


この記事は2019年10月29日号から転載したものです。本紙ではほかにもオリジナルの記事を公開しています。

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