COLUMN 2014年5月15日

角川会長「次のベストセラーはニコニコ動画から生まれる」

 先日から、KADOKAWAとドワンゴの経営統合が報じられ、大きな話題を呼んでいます。ですが、約2ヶ月前の3月11日、KADOKAWAの角川歴彦会長とドワンゴの川上量生会長が、同じシンポジウムに登壇していたことを知る方は、そう多くないかもしれません。「メディアミックスの歴史と未来」と題して、東京大学大学院情報学環で実施されたこのシンポジウムの内容を振り返り、両者の経営統合の意義、これからの「メディア」「サブカルチャー」の未来を考察します。

 前編となる今回は、角川会長(写真)による講演「サブカルチャーというプラットフォーム」をまとめてお届けします。

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 2014年3月11日、東京大学大学院情報学環にて、マンガ、アニメに代表される日本のコンテンツを成立させてきた歴史的ダイナミズムを検証するシンポジウムが開催されました。これは、一般財団法人角川文化振興財団からの寄付により、日本のポップカルチャーに関する教育・研究を国際的にリードしていくことを目的とする、「角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座」の開設記念という位置づけで実施されました。

 第1部では、東アジア・アニメーションの『起源』と題して、日中韓3ヶ国の長編アニメーションの作品の比較・分析を通じて、東アジアにおけるアニメーション表現の成立を可能とした、歴史的ダイナミズムが検証されました。

 そして、第2部では、「創造と産業が拮抗するとき」と題して、未来のメディア・コンテンツ・プラットフォームについて、多岐にわたる議論がなされました。その基調講演で、KADOKAWA取締役会長の角川歴彦氏が「サブカルチャーというプラットフォーム 多様な文化から生まれる自国へのアイデンティティと相互理解」と題して、サブカルチャーの歴史と未来を語りました。 

2014-03-11 15.33.29.jpg 角川氏は、まずポップカルチャーにおける出版史を振り返りました。初期の出版は、週刊少年漫画誌、いわゆる劇画のジャンルが流行し、その結果として、講談社・小学館・集英社という大手出版社が誕生したと言います。サブカルチャーという分野は、この後に生まれた、後発の文化であったことを指摘します。そのサブカルチャー文化を支えてきたのが、「角川」という後発の出版社であり、ガンダムなどのニュータイプを発明してきと述べます。

 角川氏は、近年の出版不況に触れ、大手出版社と言えども少年漫画誌に支えられてきた側面は否めないとし、「少年漫画誌の衰退が、出版業界の衰退に繋がった」と主張します。だからこそ、これからのコンテンツ産業を考えていくうえで、「サブカルチャーが重要な役割を占めていく」と言います。

 そして、この出版不況を乗り越え、新たにコンテンツを生み出していくためには、広い意味で、「コミュニケーション」を抑えなければならない、と主張します。

「今後はおそらく、SNSといった人々のコミュニケーションの場から、メディアが作られ、コンテンツが生まれてくるのではないか。私は、近い将来、ビッグデータ、例えばTwitter、そしてニコニコ動画から、ベストセラーが出現すると思っている」

 この場では、あまり多くを語らなかった角川氏ですが、KADOKAWAとドワンゴの経営統合というニュースを聞いた後では、この発言に多くの意味が含まれていたことが分かります。つまり、今回報じられている統合の目的は、ニコニコ動画というプラットフォームを活用し、単にKADOKAWAのコンテンツを広く流通させるだけでなく、ニコニコ動画のコンテンツ生成の仕組みを使って、次のベストセラーを生み出そうとしているのです。もちろん、人々のコミュニケーションからどのようにコンテンツを生み出していくのか、具体的な方法論は語られていません。しかしながら、ニコニコ動画について、プラットフォーム以上の可能性を秘めていることを、この時点で暗に述べていたと言えます。

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 最後に、角川氏は近年のクールジャパンについて触れます。最近のクールジャパンという言葉の使われ方に、「少しの違和感、もっと言えば危機感を持っている」と語ります。

「コンテンツだけ輸出していくことには、強い危機感を持っている。アメリカでは『MANGA』が日本語として認識されなくなっている現状がある。日本発の文化であることが忘れられてしまうのではないか」

 こうした危機感の中で、角川氏は、「教育」によって、日本の文化を届ける人材を育てていくと述べ、基調講演をまとめました。

 「シンガポール、ベトナム、ドバイ、そういった所に行き、日本の文化を理解している人を育てていきたい。日本文化を押し付けるのではなく、日本文化が生まれた方法論を伝え、新しい文化を世界中に作っていきたい。日本人は、憲法によって表現の自由があるので、コンテンツが生まれるのは当たり前。私は、コンテンツこそがその国のアイデンティティになるのではないかと思っている。文化の独自性こそ、その国の愛国心になると思う。そして、各々の文化を尊重する、文化的多様性こそが、何よりも重要だと思う」

※後編では、パネルディスカッションに登壇したドワンゴ川上会長による「プラットフォームの未来」をお届けします。

(文・荒川拓)

今夏、東京大学大学院情報学環 角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座は、「メディア・ミックス」をテーマとする約2週間のサマープログラムを開催します。詳細はこちら

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