学術ニュース

2020年4月6日

KAGRA  重力波観測を開始 アジア初の重力波望遠鏡

KAGRAの坑道。ダクトの中をレーザー光線が走り、3㎞先の鏡へと続く(19年9月30日撮影)

 

 宇宙線研究所などが建設したアジア初の重力波望遠鏡「KAGRA」(岐阜県飛騨市)が2月25日、重力波観測のための連続運転を開始した。重力波の直接観測を通して、ブラックホールの解明などを目指す。

 

 重力波とは、質量を持つ物体が運動したときに時空のゆがみが波として宇宙空間を伝わる現象で、アインシュタインが約100年前に存在を予言した。しかし重力波による時空のゆがみは微小なため、地面などの振動が観測を妨げてきた。

 

 KAGRAは、総延長7.7キロメートルのトンネルを地表から200m以上の深さに設置し、地面の振動の影響を抑制。サファイア製の鏡を零下253℃まで冷却することで、熱による分子の微小な振動の影響も取り除いた。KAGRAによる重力波の観測を通して、一般相対性理論の検証など、従来の観測方法では分からなかった成果を得られると期待される。

 

 KAGRAの建設は2010年に開始し、昨年秋の完成後は感度を高めるための調整と試験運転を続けてきた。KAGRAの研究代表者を務める梶田隆章教授(宇宙線研究所)は「観測を開始できたのは多くの支援者のおかげ。感度はまだまだだが、引き続き感度向上の努力を続けていく」と話している。


この記事は2020年3月10日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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