INTERVIEW / OBOG 2019年11月19日

人と違う視点を見つける 人気著作家・能町みね子さんが語る学生時代と仕事論

 雑誌やウェブサイトに多くの連載を持ち、ラジオやテレビにも出演するなど、多方面で活躍する文筆家・漫画家の能町みね子さんは東大の卒業生。独自の視点から社会を鋭い目で見つめる能町さんに、駒場祭を含む学生時代の思い出や現在の仕事、東大生に対する印象などについて聞いた。

(取材・大西健太郎 撮影・小田泰成)

 

能町 みね子(のうまち みねこ)さん(文筆家・漫画家)2001年教養学部卒。文筆家・漫画家。近年はテレビやラジオでも活躍。好角家としても知られる。『お家賃ですけど』(文春文庫)や『ほじくりストリートビュー』(交通新聞社)など著作多数。

 

成り行き任せの半生

 

  どのような経緯で、東大受験を志したのですか

 

 こう言うと反感を買ってしまうかもしれませんが、単純に高校の先生に行けるんじゃないのって言われたからですね。実家は茨城で、もともと大学では北海道に行きたかったんですけど、東大に行けるって言われたら、ちょっと行ってみたいよなって。

 

  後期課程に進学後は、教養学部で地理学を専攻します

 

 たまたま進学振分け(当時)の点数が高かったのと、小さい頃から地図が好きだったので、後期教養学部の広域科学科人文地理分科(当時)を選びました。他にも実は一人暮らしを続けたかったというのもあります。本郷だったら茨城から通えと言われてしまうので。ただ入ってみたら経済系の科目が多くて。自分がやりたかったことと違っていて授業が全然面白くなかったんです。せめて卒論は自分が本当に好きなことをやろうと思い、ほとんど教授に頼らず、授業内容と全く関係ないことに取り組みました。卒論がいちばんの思い出です。

 

  授業外ではどのような活動をしていましたか

 

 卒論でも扱うくらい地図が好きだったので、地図を見ているうちに気になった場所を友達同士で一緒に散歩しに行っていましたね。サークルは音楽系に所属していたので、駒場祭ではコピーバンドをやりました。最初はドラムだったんですけど、ボーカルもやりたくなって。当時から持ちネタだったCHARAの曲を歌いました。楽しかったですけど、今思えば人に見せられるものじゃなかったですね(笑)。

 

  大学卒業後、出版社に就職します

 

 卒論は本当に好きなことをテーマにしたので、先生にも意外と褒められて、大学院への進学を勧められました。もともと自分も院に行こうと思っていたのですが、昔から長い本を読むのがすごく苦手だったので、論文も読めないだろうということで諦めて就職することにしました。

 

 かといって会社勤めにも興味がなかったので、周りは100社とか受けている中で、私は3社だけ受けたんですよ。本当はデザイン系の専門学校に入りたかったんですけど、東大を出てまで就職をしないということについて親に反対されたので、形だけでも就職活動することにしました。受けるだけ受けて、落ちれば親も納得するだろうと思って。そうしたらなぜか1社受かっちゃったので、それならばしょうがないかということで出版社に入社しました。結局11カ月で退職しちゃったんですけど。その後フリーターを1年やって、デザイン系の専門学校に夜間で入りました。途中から日中はOLとして働くようになりました。

 

  OLをしながら、ブログを始めます。きっかけは何でしょうか

 

 2000年代前半当時はブログの内容をまとめて出版するのがブームだったんです。それで、こう言うのはなんですが「こんなので本になるんだったら自分もできる」と思ったんです。そこで本を出して稼ぎたかった、というのがブログを始めた正直な理由です。結果としてはブログ開設から1年たたずに本を出版できました。

 

ブログを元にしたデビュー作を加筆修正した『オカマだけどOLやってます。完全版』文春文庫、税込み770円

 

  その後どのようにして現在のように活躍の場を広げたのですか

 

 その後も何冊か本を出すようになったのですが、あるトークイベントに登壇した際、漫画家の久保ミツロウさんがお客さんとして来ていて。当時彼女も『モテキ』の1巻が出るか出ないかという頃で、私は存じ上げなかったんです。そこからじわじわ仲良くなっていったある時「オールナイトニッポンのオーディションを受けよう」と言われて、私は半分冗談だと思ったんですけど、受けたらラジオに出られることになっちゃって。そこからテレビにも出るようになりました。最初はあまりテレビなどに顔を出す気はなかったのですが、本当に成り行き任せですね。

 

今の東大生にびっくり

 

  能町さんの文章の魅力である独自の着眼点・ものの見方はどのようにして磨かれたのでしょうか

 

 特に努力して磨こうとしたわけではないですけど、ニュースとかを見るたびに「当たり前のことを言わないようにしよう」というのはずっと思っていますね。例えば残酷な事件があったとき、被害者への同情や犯人に対する憎しみとかは一通りありますけど、そういう当たり前の感想しか持てないんですよね。そうではなく、意見が分かれそうな話題について、あまり人が言っていないことをなるべく探そうと思っています。

 

  そのようなものの見方は幼い頃から習慣としてあったのでしょうか

 

 小学校を卒業する時、卒業文集の見どころを紹介する冊子を作って友達にあげたことを今思い出しました。卒業文集の中の変な言葉にツッコミを入れて「何ページのここに注目!」って書いたり。そう思うと、変なところに目を付けて、面白がってもらおうみたいな考えは確かにあったんでしょうね。

 

  現在のお仕事のやりがいや苦労を教えてください

 

 仕事は一人が多いので、とにかく集中力がもたない。一応仕事場もあるんですけど、自己管理が下手くそで他の人がいないと集中力がすぐ切れるので、原稿も9割方喫茶店で書いてますね。 

 

 文章を考えるのが嫌になることは頻繁にあるんですよ(笑)。文章を書くことに飽きて、どこかに行きたい、暇になりたいと思う。ただどこか行った先で何がしたいかというと、いい景色でも眺めて日記でも書きたいなんて思ってしまう。要は書くことが好きなんでしょうね。やりがいと言えるかは分かりませんが。

 

  多様な活動をしていますが、どの仕事にも通底する信念やスタンスを教えてください

 

 文章を書くことが本業でありたいと思っているので、申し訳ないですけど、テレビやラジオは副業として捉えています。だから「テレビ見てます」って言ってもらえることももちろんありがたいのですが「本読んでます」と言ってもらえることの方が断然うれしいですね。

 

 あと、ある程度考えて文章にしていることを上回ることを口では絶対言えないと思っているので、ワイドショーなんかのコメンテーターのお仕事は断っていますね。今どき、ぱっと言ったことが勝手に文字にされることも多いですし、変に顔だけが売れていくことも嫌なので、出演する番組に関しては自分の中に取り決めを作っています。

 

  「ドリカム層」「モテない系」などの造語を用いて市井の人々を類型化することを得意とされていますが、東大生を分析するとどうなるでしょうか

 

 私が卒業してからすでに20年以上たってますが、当時はダサかったですね。単純に見た目の問題もあるんですけど、やっぱりあか抜けない感じがありましたね。

 

 あと当時は今よりも東大に対する権威的なイメージが強くて「東大生です」と言うのがはばかられる風潮がありました。それに比べて最近の東大生は「UT」なんて言ってるんですね。そもそも昔はそんな言い方すらなかったんですけど、びっくりしました。普通に誇ってるんだ、みたいな。

 

  最後に、在学生に向けて一言お願いします

 

 もっと大学の外で遊ぶことは大事かもしれませんね。私自身はちゃんと大学に行って授業を受けていた方なのですが、もう少し大学の外にも目を向けて視野を広げておきたかったと思います。当時は調布に住んでいたのですが、もっと都心に住んで楽しんでおけば良かったなと思いますね。


この記事は2019年11月12日号(駒場祭特集号)の記事の拡大版です。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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