COLUMN 2017年7月12日

【N高のリアル⑥】長期実践型教育「プロジェクトN」のリアル

 全日制の高校と比べて高校卒業のための単位取得の授業がコンパクトに収まる通信制高校の仕組みを活用し、増えた時間を「課外授業」として、さまざまなプログラムで活動するカリキュラムを組んでいるN高等学校の通学コース。今回はその課外授業の目玉とも言える、NPO法人カタリバと連携して行うプロジェクト型学習「プロジェクトN」のキックオフイベント「N高カイギ」に密着した。

 

 東京・代々木キャンパスに集った50人ほどのN高通学コース生。

 

 入学時アンケートで、「プロジェクトNを一番楽しみにしている」という声もあったほど、生徒にとっては待望だったこの授業。「課外授業」であるため、卒業のための単位とは全く関係ないが、多くの生徒が参加している。生徒たちはカタリバが運営する「全国高校生マイプロジェクト」への応募も視野に、1年をかけて自らが設定したテーマに基づいてプロジェクト型学習を進める。

 

 

 

 生徒たちはまず、「何をやるのか」を自分で決めなければならない。そのために、マイプロジェクト専用の「アイディアシート」などのワークシートを使ったり、相互に話し合ったりして、自身の興味を探っていく。

 

 近いテーマの人がタッグを組んだり、あるいは仲間を募集する強いリーダーがいたり、個人で探究していくなど、プロジェクトの形はさまざまだ。

 

 内容も、「障がいへの無理解の根を突き止めたい」という調査型、「ペットの誤飲による事故をなくしたい」という啓蒙型、「みんなに留学に行ってほしい」という提案型、「世界をハッピーにするためにTシャツをデザインしたい」という創作型、はたまた「音楽をビジュアル化したい」というテクノロジー型など、個性に応じた多様なプロジェクトの形があった。

 

 

 プロジェクトの概要が決まると、それを発表する。仲間の発表を聞いてコメントシートを書いたり、質問をしたりと、互いにフィードバックを出し合う姿が印象的だった。発表項目の中には「なぜそのプロジェクトを行っていきたいのか、きっかけ・理由・想いを必ずメンバー一人一人が話すこと」という約束があった。ビジネスマンさながらのプレゼン力を発揮する生徒もいれば、発表が苦手そうな生徒もいたが、それでも自分のことについて語る場が設けられたことに対し、一生懸命に応えている姿が印象的だった。

 

スライド作成もお手の物。PC片手に発表

 

 自身の持つ障がいから、中学でいじめに遭っていた自身の体験を告白し、こういう被害をもう出さないためにプロジェクトを進めていきたいと話したある生徒は、「苦しい経験をして来た自分の人生を、笑わず、本気で聴いてくれたことがうれしかった。今まで胸につっかえていたことが全部スッキリした気分になった。これからこの学校で頑張っていこうと本気で思った」と終了後にコメントを残していた。

 

 また、ありたい姿やつくりたい未来の形という「ビジョン」と、実際にそれを達成するための活動内容の整合性について、「そのビジョンを、そのアクションで達成できるのですか?」と、発表に対する真剣なコメントも見られた。

 

 24ものプロジェクトがあるため、発表は五つのグループに分かれて行われたが、キックオフイベントの最後に、各グループから投票で1グループが選ばれ、全体の前で発表を行った。

 

 ファイナリストに選ばれた、出川大和くん(高1)がリーダーを務めるチームは、「VR(Virtual Reality)を使って音楽を可視化する」(Audio Visualizer with VR)プロジェクトを立ち上げた。音楽のビジュアル化は、SONYなどのmedia playerですでにやられている、という既出事例も抑えつつ、問題点として「画面が小さい」「平面なので表現に限界がある」と指摘し、VRで音楽のビジュアル化をしていきたいと発表。実装のためには資金が必要なので、クラウドファウンディングをして集められたらと話していた。「新しい形で音楽を表現してみたい」「聴覚を失った人にも音楽を楽しんでもらいたい」と意気込んでいた。

 

Audio Visalizerチームの全体発表

 

 会場は熱気に包まれていた。プロジェクトNがどこに向かうのか、今後も目が離せない。

 

2017年7月13日2:15【記事修整】「出川大和くん」の漢字を修正しました。

 

【N高生のリアル】

昼休み明けの恒例授業「サークルリーディング」とは?

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「N高は『道具箱』」 可能性を生むプログラミング

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