INTERVIEW / OBOG 2014年8月19日

【東大卒起業家】「イケてる人たちに『面白い』存在だと思ってもらえる選択」を

開成、東大、IBMというエリート街道から、一転して「安定のために起業した」と語るのは、スローガン株式会社の伊藤豊代表取締役社長。同社が運営する「Goodfind」は、今やベンチャー企業の就職情報分野のトップブランドに成長した。「ネタで学科を選んだ」という学生時代から、IBMを経て起業に至るまでの経緯を聞いた。

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−−−東大に入学されるまでのお話を聞かせて下さい。

中学校までは、宇都宮の田んぼの中で過ごしていました。中学2年生の頃から、栃木を出て県外の高校を目指そうと思い、「全国高校マニア」になりました。ありとあらゆる全国の高校を調べ、結局、開成高校に進学しました。

高校の3年間は新幹線通学でした。親からはかなり反対されましたね(笑)。こうまでして開成に行ったので、東大に行かないと申し訳ないと思い、大学の選択肢は東大以外なくなりました。

−−−東大入学後は、どのような学生生活を過ごしていましたか?

理1に入学してからは、目標を見失ってしまいました。オリジナルバンドを組んで、毎日カラオケするような日々は楽しかったですが、空虚な生活を過ごしていたと思います。

そうした生活だったので、学部2年の進振りの時点で、「早く社会に出たい」という思いが強かったですね。理系だと、多くの場合、院に進学し大学に残ることになる気がしたので、文系学部も含めあらゆる選択肢を考えました。

この時重視したのは、「ネタになるか」ということ。社会に出た時、「東大出て何を勉強してきたの?」と言われた時、ウケが良いものを選ぼうと考えました。その結果、比較的理系に近い心理学を専攻することにしました。「東大で心理学やっていました」と言えば、良い反応が来ると当時は思ったのです。心理学ってなんとなく興味ある人多いじゃないですか。

−−−そこから、どのような観点で就活をし、IBMへの入社を決めたのでしょう?

当時は、長銀など日系の金融機関がつぶれ始めた時だったこともあり、比較的早い段階で外資系企業に興味を持っていました。その中でも、ITに興味を持っていたので、「外資×IT」という切り口で、IBMを選びました。

−−−IBMに入社されてからは、どのようなお仕事をされていたのですか?

入社して最初に思ったのは、「俺、ふつうになっちまったな」という感覚でした。なにせ当時は2万人社員がいて、自分はそのうちの500人の新卒の中のひとりにすぎない。

大学に入った頃までは、自分のユニークさをアイデンティティに感じていました。新幹線で高校に通ったこと、オリジナルバンドを始めたこと、そういった尖った部分が薄れていっていることに気づきました。このまま働いていても、平均より裕福なサラリーマンにはなれるかもしれないけれど、そこで終わってしまうと思いました。

部署を異動して、自分のやってみたい仕事にチャレンジしようと思った時に、上司から「お前、ちゃんと勉強しているのか?」と言われました。目の前の仕事のために勉強もしていないのに、異動なんかできないぞ、と言われたのですね。そこで一念発起して、2年間ほどはありとあらゆるビジネス書を読みつくしました。

その後、30人ほどの小さな会社への出向が決まりました。この出向は、自分の中でひとつの転機になりました。

本社にいた時は、やるべきことのかなりの部分は、既にやられていました。それが、この小さな会社では、やれることが目の前に広がっていたのですね。全く整っていない環境で、自分で仕事を見つけ解決していく、この繰り返しでした。

この小さな会社で働いて初めて「仕事って面白い」と思うようになりました。その後2年間でひとつの事業を作り、自分で回していく経験は、非常に刺激的でした。もうひとつ、社長との距離が近かったことも、大きかったです。経営者という職業の、具体的なイメージが湧きました。ちょうど25歳の時ですね。

−−−それから、どういった経緯で起業に至ったのでしょうか?

その後、また本社に戻ることになりました。その頃から、起業を考えていましたが、一方で、「社内の20代の中でイケてる」と思われなかったら、起業してもうまく行かないと感じました。だから、「1年間だけ社内評価のために頑張る」ことを心に決め、必死に働きました。

結果的に社内で良い評価を得ることができ、自分的に準備ができたと思い、退職を決めました。

−−−起業するにあたっては、どういった事業をやるか決めていたのですか?

起業するからには「自分が人生を賭けて解決したいと思うことをやろう」と心に決めていました。その中でも、二つの問題意識を持っていました。

ひとつの問題意識として感じていたのは、「才能のミスマッチ」でした。自分は、特段意識せずIBMを選びましたが、出向して小さな会社に行ってはじめて、仕事の楽しさを実感しました。世の中の大多数の学生は大企業に行きがちですが、往々にして小さな会社の方がチャレンジングです。そもそも、大企業というある程度出来上がった仕組みの中では、優秀な人が行かなくても回ることが多い。

もうひとつは、「日本全体のプレゼンスが低下している」ことです。外資企業の日本支社が次々と縮小していく傾向を見て、「新しい産業」を作っていかなければいけないと思うようになりました。

こうした問題意識を背景に、2005年末、28歳の時に起業しました。

−−−起業するにあたって、躊躇いはなかったのですか?

全くありませんでしたね。誰かが作った装置の上で食っていく見せかけの実力ではなく、ゼロベースで価値を産める力をつけようと思いました。だからある意味で、「安定を求めて起業した」わけです。

もっと言えば、起業した方が存在として面白いと思ったのですよね。2年後の将来を想像した時、ひとつには、MBAを取る道もありました。しかし、東大卒で一流企業を経てMBAとった30歳って別に面白くないじゃないですか?普通に優秀そうなだけで。それよりも、結局うまくいかず無一文になっても、起業したほうが絶対に面白い存在になる。無一文になったらなったで、東大卒で一流企業を辞めて起業して失敗した人って存在として面白いというか稀有じゃないですか?「お前、バカだな」って面白がってきっと助けてくれる人がいると思いました。

−−−起業後から今に至るまで、どういった困難がありましたか?

起業するまでは全く躊躇いはなかったのですが、起業してから2年間はかなり苦しい日々でした。というのも、根本的に大企業とベンチャー企業では、使う筋肉や知識が別物なのですよね。よく、大企業を経て起業した人で、起業間もない頃は「リハビリ期間」という言い方がなされます。まさにその「リハビリ期間」でした。

具体的に言えば、顧客への営業です。0からブランドを作っていくことが、これほど困難なのかと思い知らされました。また、せっかくアポが取れても、いくらで売ればよいか、自社の商品の適切な値付けがわからない。営業方法、適切な価格設定、いずれも試行錯誤でした。ようやく、3年目から軌道に乗り始めました。

−−−現在、運営されている「Goodfind」はベンチャー採用のマーケットでトップブランドに成長しています。競合も多いこの市場で、どういった点がサービスの強みなのでしょうか?

ひとつは人の質です。採用のハードルは、かなり高めに設定しています。

もうひとつは、サービスの質に対する姿勢です。最初の2年間躓いた経験があったからこそ、手を抜いて後悔したくないという思いは強いです。参入障壁が低い市場だからこそ、あらゆるタッチポイントで競合よりも少しでも良いクオリティを維持するよう努めています。個々の部分の差は少しでも、全体として見れば、勝っているという状態ではないでしょうか。

「どこがすごいか分からないけど、結果的に勝っている」ことが、究極の差別化要因だと思います。

−−−東大生のベンチャーへの就職は増えているとはいえ、キャリアの最初の選択はまだまだ保守的です。こういった現状をいかが思われますか?

今の東大生は、「将来はベンチャー就職や起業しよう」という意識を持っていても、結果的に新卒時に選んだ大企業から帰ってこないことが多い気がします。「戦略コンサルティングに行って足腰を鍛えよう」「商社に行ってビジネスを幅広く見よう」と言うのですが、居心地が良すぎるのでそのまま留まってしまう。

たしかに、ベンチャーは「泥道」です。良いスーツを着て、ピカピカの靴を履き、スマートに勝負しようと思うと、なかなか「泥道」に入れない。しかし、起業家のバリューは、「困難を承知で突き進む」ことだと思います。ぜひチャレンジしてほしいですね。

「東大」は、良くも悪くも特別なブランドです。そのアドバンテージを活かして、リスクを取るべきだと思います。そして、リスクを考えるときには、ぜひ「イケてる人たちに『面白い』存在だと思ってもらえる選択」をしてほしい。無難な、つまらない人間になるリスクにこそ注意して、刺激的なキャリアを歩んでほしいですね。

(取材・文 オンライン編集部 荒川拓)

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