ムハマド・ヤメン・サライジ特任講師(慶應義塾大学)と東大学術支援専門職員の佐々木智也さん(先端科学技術研究センター)らは、ロボットヘッドやロボットアームなどを装着した他者の身体の動きを遠隔地から二人羽織のように誘導し、共同作業を行うシステム「Fusion(フュージョン)」を開発した。ロボットヘッドを装着することで遠隔地にいる相手と同一の視点を共有でき、遠隔地での身体を介した技能学習に応用が期待される。成果は8月12日にカナダで実施された国際学会「シーグラフ2018」で発表された。
共同作業を通じて技術や知識を伝達する際は、学習者の手を引くなどの身体的なコミュニケーションが重要な役割を果たす。そのため、視覚や身体動作の情報を共有できない遠隔地にいる人同士では共有できる情報が乏しく、身体的な共同作業を行うことは困難だ。
従来、複数人が視点を共有することで遠隔地での共同作業を支援する研究が行われていたものの、開発された手法はいずれも身体動作を伴う共同作業には不向きなものだった。また、筋電気刺激を利用して複数人の身体動作を同期させる手法も開発されているが、動作の軌跡を同期できないことが課題とされていた。
今回、サライジ特任講師らが開発したフュージョンは、離れた位置にいる操作者が装着者の視点から見た空間を共有できる、可搬性と直感的な操作性を備えた遠隔共同作業システム。操作者は頭部にディスプレイを着け、装着者の視点から見た映像や音声を確認する。装着者はロボットヘッドとロボットアームが搭載されたバックパックを身に付け、ロボットアームの先端にあるロボットハンドなどを利用して操作者と共同作業を行う。
フュージョンでは共同作業の他に、ロボットハンドを手首用のバンドに取り替えて装着者の手先の位置や姿勢を動かしたり、ロボットアームで装着者を引っ張り歩行の方向を誘導したりすることもできる。装着者が装着するバックパックはバッテリー駆動のため、持ち運びや屋外での利用も可能だ。
サライジ特任講師らは今後、フュージョンの性能向上や技能学習のプラットフォーム構築を進めていく。
2018年8月18日11:00【記事訂正】第1段落2行目「ロボットアームやロボットアームなど」とあったのは「ロボットヘッドやロボットアームなど」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。