文化

2023年5月25日

【ひとこまの世界】裁判傍聴で人生勉強

裁判傍聴

 

 Sセメスターが始まって2カ月。空きコマにキャンパス周辺のお店を開拓するのを楽しみとしていたが、そろそろ飽きてきたと感じている人はいないだろうか? 今回はそんな人に向け、少し変わり種のひとこま=105分の過ごし方をご紹介。本郷三丁目駅から電車で約10分の東京地方裁判所で裁判傍聴を行った様子をお届けする。

 

ひとこまの世界 裁判傍聴

 

12:45 お昼ご飯を少し早く食べ終え、前日に実施した下調べを再度行う。特に必要な持ち物はなく、著名な事件で傍聴券が交付されるような場合を除き、準備なしに行っても何ら問題ない。とはいえ、記者が裁判傍聴に行くのは初めてなので失礼のないようにしなければならない。

 

13:00 3限の開始と同時に本郷キャンパスの正門を出発。普段から登下校に使っている丸ノ内線本郷三丁目駅に向かう。

 

13:10 本郷三丁目駅で荻窪方面の電車に乗車。目的地の東京地方裁判所は霞ケ関駅A1番出口のすぐ近くだ。車内では念には念を入れ、もう一度裁判傍聴について調べる。高等裁判所や最高裁判所ではなく地方裁判所で行われる裁判の方が理解がしやすく、民事裁判より刑事裁判の方が内容がつかみやすいといったことを確認した。

 

13:22 霞ケ関駅に到着。出口を出ると目の前が東京地方裁判所だ。弁護士などの専用の入り口と傍聴に来た人のための入り口が分かれているので誘導に従い、傍聴用の入り口に進む。中に入ると手荷物をレーンに預け、金属探知のゲートで身体検査が行われた。検査が済むと入場完了だ。

 

東京地方裁判所
東京地方裁判所。周囲には官公庁のビルがずらり

 

13:25 裁判所内では撮影や録音は禁止されている。法廷内では携帯電話の電源を切らなければならないのでその場で電源をオフにした。入場ゲートから少し進んだところにあるタッチパネル式の開廷表で今日実施される裁判を調べることができ、その中から刑事裁判の予定を検索する。タッチパネルには裁判の時間、被告人の名前や罪状、法廷の部屋番号や裁判の初回となる「新件」、続きが行われる「審理」、判決が言い渡される「判決」のいずれに当たるかなどが記載されている。「新件」は冒頭で事件の内容が読み上げられるので傍聴に適する。気になった数件をメモし、場所を確認。エレベーターに乗り、いよいよ法廷へと向かう。

 

13:35 目的の法廷の前に到着。外には開廷中というランプが灯(とも)り、裁判の概要が掲示されている。恐る恐る中に入るとすでに裁判は始まっていた。部屋はあまり広くなく、ドラマなどで見る様子と大きな変わりはない。傍聴席と審理が行われるスペースとの間は柵で区切られ、一番奥には裁判官、弁護人と検察官が左右に並び、被告人が刑務官に挟まれる形で着席している。傍聴席にはさまざまな年代の人がまばらに座り、記者と同じ私服の人もいれば法廷関係者なのか、スーツ姿の人もいた。

 

 傍聴したのは違法薬物の販売を行っていた外国人の裁判。通訳を通してやり取りが行われていた。日本の大学で学んでいた学生だったが、新型コロナの影響でアルバイトができなくなり、犯罪を犯してしまったという。検察官、弁護人それぞれの考える適切な刑の重さが理由とともに述べられる。母国からの日本への違法薬物の輸入が計画的なものであったかや、薬物の販売先が個人であったかどうかによる日本社会への悪影響の強さなどが論点となっているようだった。被告人が証言台の前に立ち「人生をやり直すチャンスをください」と発言し、審理が終了。淡々と進む裁判に言いようのない緊張感を覚えた。

 

13:55 裁判官が検察官と弁護人の日程を確認し、次回の裁判の日時を決定する。次回は判決の言い渡しが行われるようだ。裁判が終了すると傍聴席も含め全員が起立。礼をして閉廷となった。まだ時間があるので、14時からの裁判も傍聴することにした。

 

14:00 裁判が開廷する少し前から着席。手錠と腰縄を着けられた被告人が刑務官と共に法廷に入る。開廷を告げて礼が終わると、裁判官から被告人に対して氏名や本籍などを質問し、黙秘権が存在することなどの説明がなされる場面に立ち会った。

 

14:10 被告人と弁護人との間で少しやり取りがなされた後、すぐに先ほど同様に次回の日程を決定し閉廷となった。

 

14:15 1階に戻り、ロビーを見て回るとパンフレットが置いてあるのを発見。裁判の種類や手続きの流れが記されている。パンフレットを見て、今日の裁判でのやり取りが手続きのどこに当たるのかを確認した。

 

裁判所NAVI
入手したパンフレット

 

14:40 電車に乗り、本郷キャンパスに戻って来た。3限終了5分前だ。実は4限も授業はなく、次の授業は5限からなのだが、これで良かったと感じた。事前の準備なしに見に行ける手軽さとは裏腹に裁判所や法廷という場所の持つ緊張感や裁判の内容はなかなかに重たく、ハードな経験だったように感じたからだ。今後もし裁判傍聴をしてみたいという人がいれば、その手軽さと実際の空気感とのギャップを踏まえた上で行うことをおすすめしたい。そうすれば、自分の人生を見つめ直す良い機会となるだろう。【佐】

 

 

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【記事修正】2023年5月26日午前10時30分 誤字を訂正しました。

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