学術ニュース

2026年2月2日

「協奏的なイオン輸送」を可視化 次世代電池材料開発への寄与に期待

 

 

 佐藤龍平助教、澁田靖教授(いずれも東大大学院工学系研究科)、安藤康伸准教授(東京科学大学)、サウ カーティック特任講師(東北大学)らの研究グループは、電池材料におけるイオンの集団移送を可視化する新しい手法を開発した。成果は2025年12月12日付で米科学誌『Chemistry of Materials』に掲載された。

 

 現代社会では電池は基盤技術となっているが、現在スマートフォンなどに使われているリチウムイオン電池など、内部に液体を用いた電池には、可燃性のある液体が液漏れするといった問題がある。一方で正極、電解質、負極のすべてが固体材料で構成された電池である全固体型電池は、これらの問題がない次世代電池として注目されているが、固体中では液体中よりも電池の充放電の時のイオンの移動が妨げられやすいことが性能向上における課題となっていた。

 

 これまで開発された固体電解質材料の中で、イオンが動きやすい材料には、一つのイオンの動きが周囲のイオンの動きを誘発し連鎖的にイオンが移動する「協奏的な輸送」と呼ばれる現象が起こることが知られていた。しかし、この現象は複数のイオンや周囲の環境との相互作用が関係する複雑な現象であるため、これまでメカニズムが分かっていなかった。

 

 本研究では、渋滞学や流体工学の解析手法を用いて、イオンの輸送を流体として解析し、協奏的な輸送のモデル化に成功した。分子動力学シミュレーションで固体中のイオンの動きを解析したのちに、イオンの動きを矢印で表し、関連する矢印同士を連結することで、協奏的な輸送の経路を可視化した。

 

 このモデルを用いてさまざまな固体電解質における協奏的な輸送を解析。二次元イオン伝導体 Na₂Ni₂TeO₆ における Naイオンの協奏的輸送の解析では、5個以上のイオンが関わる協奏的な輸送が全体の数十%に達することが分かり、一度イオンの移動が起こると多数のイオンが連動して動くことが明らかになった。

 

 さらに、この結果を用いて計算されたイオン電導度は、統計力学においてイオン電導度などの輸送係数を求める公式であるGreen–Kubo公式を用いた計算結果とよく一致した。これによりこのモデルが実際のイオンの集団運動を正確に表していることが実証された。

 

 これらの成果は、協奏的なイオン輸送を制御することで材料性能を高めることにつながり、次世代固体電解質の開発に寄与することが期待される。

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