報道特集

2022年9月1日

【#進振りの未来】必要な成績が低い進学先にはいきづらい?〜東大生にアンケート

 

 進学選択を改めて問い直す本企画「#進振りの未来」。前編である今回は、選択式と記述式のアンケートの結果を紹介する。前者では後期課程に所属する学部3、4年生(以下後期課程生)が「進学選択」と「進学するのに必要な成績」をどう捉えているかを調査し、後者では進学選択の制度そのものについて意見を募った。東京大学新聞社は7月1日〜7月30日、東大の後期課程生を対象にアンケートを実施し42人から回答を得た。(選択式の有効回答数:42件 本文中の割合は小数第1位を四捨五入)(構成・松崎文香)

 

*教員向けのアンケートも実施しましたが、十分な回答数が集まらなかったため掲載しませんでした。

 

選択式アンケート結果

 

 アンケートに回答した東大の後期課程に所属する学部3、4年生の所属学部は(図1)の通り。

 

(図1)

 

 ある進学先に進学する際に必要な成績は、学生の間で進学先の「底点」と呼ばれることがある。「後期課程に進学した後、進学選択に必要な成績に関することが話題に上る頻度はどの程度」かを問う設問では「時々ある」が最も多く38%を、「話題に上ったことはある」が次に多く33%を占めた(図2)。頻度はそれほど高くないものの、後期課程に進学後も前期課程時代の成績が話題に上ることがうかがえる。

 

(図2)

 

 「学問的に興味があっても、進学に必要な成績が低い進学先に進学するのは抵抗感がある」かを尋ねる設問では「ある」(12%)と「少しある」(31%)を合わせて43%の学生が抵抗感を示した(図3)。一方で「ない」と答えた学生も31%存在し、回答が分かれた。

 

(図3)

 

 「学習・研究への取り組み方について、学部/学科/コース/専修といった集団間の違いの方が、集団内での個人差より大きい」かを問う設問では「そう思う」(22%)と「まあそう思う」(38%)が合わせて60%と半数以上を占め、学習・研究への熱量の差は個人間よりも集団間の方が大きいと考える学生が多いことが分かった(図4)

 

(図4)

 

「意欲的な学生は、進学選択で必要な成績が低いところには進学しない傾向がある」かを問う設問では、「そう思わない」(19%)と「ほとんどそう思わない」(40%)が合わせて59%となり、問いを否定する意見が半数を上回った(図5)

 

(図5)

 

改善すべきところは(記述回答、有効回答数12件)

 

 改善を求めたい点を尋ねる設問では「理Ⅰから工学部以外、文IIから経済学部以外、のような既定路線以外への進学をしやすくして欲しい」(工)、「全科類枠をもう少し増やして文転・理転などを柔軟にできるようにしてほしい」(工)、「往々にして全科類枠が少なすぎる。(中略)定員が少なすぎると年度によって大きなブレが生じて、高度な心理戦になる。せっかくの前期教養課程を、85点を90点にするような勉強に費やしたくない(原文一部改)」(法)といった、所属する科類を問わず募集している全科類枠の拡充や、進学選択の自由度を高めるよう求める意見があった。

 

 所属する科類ごとに募集する指定科類枠を巡っては「例えば文系において、文Ⅰ・Ⅱ・Ⅲで、そんなに入学時の成績が著しく違うかといえばそうでもないはずなのに、(なんならその年毎に合格点の高さの順序も異なるのに)進学選択の枠が大きく違う点は、なんだか合理性を欠く制度設計になっている気がする(原文一部改)」(法)、「文三はどこに行くにも不利。需要に合わせて柔軟な枠の変動が必要なのでは」(工)といった、科類によって指定科類枠の量に差があることを疑問視する意見があった。科類を限定せず募集している全科類枠の方が、指定科類枠よりも必要な成績が高くなる傾向があるといわれている。

 

 専門教育の開始が2年生の夏以降になる点に関して「4年生を研究の時間にするとなると、2年生、3年生の間に専門課程の学習を終える必要がありますが、一般の大学に比べて4/3倍に圧縮される事になり、中々に苦しい」(理)とし、1年生の成績で進学先を決め2年生の春から専門教育を行うことを提案する声もあった。

 

 その他「点数至上主義。受験から何も変わってない」(養)、「UTASのUIが分かりにくく、不親切だと思う。せめて希望調査のところに、これは選考ではありませんなどと大きく分かりやすく書いて欲しい」(工)、「学部によって、その学部に関連する成績に重みをつけるなど、もっとしっかりその学部に対する適性を見極められるような形で審査してほしい」(経)などの意見があった。

 

高く評価する点(記述回答、有効回答数14件)

 

 進学選択制度について、高く評価している点を尋ねる設問では「専門分野にとらわれず好きな授業を比較的自由に選べる環境が心地よかった」(法)や「様々な教養分野を学べたことは個人的には大変良い経験であった」(経)など、前期課程における幅広い学習を評価する声が上がった。また「自由に選べる、大学で専門的な知識を学んだあとで選択ができる」(文)、「自分に合う、合わない分野が高校生の時よりもはっきりしたタイミングで進学を考えられたこと」(工)、「大学受験の圧力が除去された後にゆっくり考える機会が与えられる」(法)といった、大学での学びを経て専攻を選択できることを評価する声も多かった。その他、文系・理系の垣根を越えて進路を選択できることや、前期教養課程を「モラトリアム」として過ごせることなどがあげられた。

 

進学選択についてどう思うか(記述回答、有効回答数19件)

 

 進学選択についての意見を自由に募集する設問では、「最初の2年間で幅広い学問分野に触れられるのはとても良い」とする一方で「3Sから多くの人が就活を始めるので、専門分野を真剣に学べるのは院に進むことを決めている人がほとんどです。この3年からの追い込まれ方が本当に異常なレベルだとは感じる」(文)のように、教養教育や大学での学びに触れた後に専門を選択できる点を評価しつつも、他の側面においてデメリットをあげる回答が多かった。

 

 基本的には成績順で進学先が決まることに関して「他大学が大学入試時点で行うことを大学2年のタイミングでやっているだけなので、個人的にはそんなに不満はない」(工)と肯定する意見がある一方で、「点数で全てが決まるのは良くない」(工)とする人もいた。また「一部の点数マニアみたいな人がたいして興味もないのに底点が高いところに行ったりするのは違和感。また、そのような人たちが『つよつよ』とか崇められてるのもちょっとキモい風潮」(工)という、成績に関する風潮を問題視する意見もあった。

 

 その他「これに困る人も、これで救われる人もいるので難しい。入学前の学生がこれがどういうものであるか知っていると良いのですが、そんな事できるわけもなく……」という、入学するまで制度の実情を理解することが難しい現状を指摘する意見が寄せられた。

 

【後編】

学生と教員による「進振り」とそれを取り巻く風潮にした座談会を実施。9/2公開予定。

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