受験

2024年3月10日

東大1年生は一日をどう過ごす? 東大新聞部員が語る授業日の過ごし方

 

 東大合格後、新入生が気になることの一つは東大生がどのような生活をしているのかではないだろうか。この記事では、実家暮らしか一人暮らしによって異なる東大生の1年次の一日のスケジュール例や、新生活を始める上で苦労したことなどについて部員に聞いた。これらの例を参考にして、東大入学後の生活を思い描いてみてほしい。(取材・峯﨑皓大

 

文Ⅲ・実家暮らし ちょうど良い「努力量」を見極めて

 

 私は非進学校出身だったので、東大に入学した当初は「東大は異次元だ」という認識でした。そのため語学の小テストなどで必要以上に頑張ってしまい、最初の頃は苦しさを感じていました。結果が出る最低限の努力量をつかめたことで、今では自分が満足できる点数を取るために必要な努力だけをするようになりました。私の場合は「ちょっと不真面目」くらいがちょうど良かったように、自分が適度に頑張り適度に楽しめるような努力量を把握することが大事だと思います。また、学業に力を入れることは大事ですが、せっかく受験を終えたので、むしろ点数以外で自分に自信を持てるような指標を模索してみるのも良いと思います。

 

 生活面では友達づくりが大変でした。私は中高6年間を一学年の生徒数が100人程度という小規模の学校で過ごしたので、新しい友達づくりの方法がいまいち分かりませんでした。しかし、夏休みに高校の友達に相談したら「私らしくない」と言われたことがきっかけで、そこまで友達のつくり方を深く意識せずに素の自分でいようと思うようになれました。初めて出会う人が多い環境で誰もが身構えてしまいますが、素の自分でいこうと考えた方が気持ちも楽だと思います。

 

 

午前7時40分 起床。学校の準備をします。

午前9時10分 家から学校まで約1時間かかるので早めに家を出ます。朝は電車の遅延がよく発生するので少し余裕を持って家を出るようにしています。通学中に小テストなどの勉強をし、その時間の中で勉強を完結できるように心がけています。

午前10時05分 学校に到着。授業開始に向けて教員から共有された資料をダウンロードしたり、指定された教材や動画を見たりします。

午前10時25分 2限。英語の授業です。この授業ではTED Talksを見て、その内容について議論・発表します。毎回興味深い内容ばかりで刺激になりました。

午前11時55分 昼食をクラスの友達と一緒に食べます。

午後1時15分 3限。「法II」の授業です。専門的に法学を学ばない文II・文IIIの学生向けで、社会においてどのように法が運用されているかという内容が主でした。実生活とのつながりなどから法について考えることができ、学びの多い授業でした。

午後2時45分 休憩。

午後3時10分 4限。「ジェンダー論」の授業です。例えば管理職の女性の割合が低い理由を「女性が管理職になりたがらないから」「管理職になれる能力のある女性が少ないから」という女性個人の問題にせずに、社会全体としてどういう問題を抱えているのかを考えました。データを用いた精緻な議論はやりがいがありました。

午後4時40分 休憩。

午後5時05分 5限。TLP(トライリンガルプログラム。日本語と英語に加え、もう一つの外国語を集中的に鍛えるプログラム)のスペイン語の授業でした。TLPの授業は必修のスペイン語の授業と内容や進度が同じだったので、私は必修の授業の復習のような位置付けにしていました。

午後6時35分 授業終了後、家に向かう。

午後7時50分 帰宅。YouTubeを見ながらご飯を食べます。

午後8時50分 東大新聞の記事を書きます。東大新聞の仕事は自分で企画し、取材し、記事にすることができるので非常にやりがいがあります。

午後10時30分 試験期間中や差し迫った課題がない場合は基本的にゆっくり過ごします。

午前0時30分 就寝。

 

理Ⅰ・一人暮らし 頑張り過ぎず「自発性」を大切に

 

 大学生活で重要なのは、学校の授業の面では高校の学習以上に自発性が求められるということです。高校では授業で学んだことをアウトプットする時間を授業や定期的な試験などで設けることができますが、大学ではその機会がほとんど個々に委ねられています。理系では必修の授業で線形代数学と微分積分学を学び、理Iでは演習の授業が週に一回あります。アウトプットの時間に当たるのは週に一回のその演習の授業だけで、残りは自分で行わなければなりません。学ぶ内容も高度になるので授業を単に受動的に受けるだけでは理解できず、自分で納得しながら理解することが大切になります。そういう意味で自発性というのは高校時代の学びに比べて多分に求められていると思います。

 

 生活の面では、自炊や洗濯、掃除などの家事を全て自分で行わなければならないことに最初は戸惑いました。私は実家でもあまり家事を行ってこなかったため、日々家事をこなすことの大変さを痛感し、それに伴って親への感謝の気持ちがいっそう強くなりました。私の場合は朝早く起きるのが得意ではないので朝ごはんを取らない日が最初のうちは多かったのですが、食べないと午前の授業に集中できない気がしたので簡単でも良いので取るようにしました。最近は一から作る必要はなく、ほとんど完成していて残りは温めるだけ、というような市販の食べ物も増えているのでそれを活用することで楽になるかもしれません。

 

 大切なことは頑張りすぎないことだと思います。学生として東京に引っ越してきた以上、あまり生活を頑張りすぎて学業に手が回らなくなったら本末転倒だと思います。程良く手を抜いて楽をしながら毎日の生活をこなしていくのが良いと思います。

 

 

午前8時30分 起床。朝は遅めに起きて、ゆっくり学校に行く準備をします。

午前9時50分 学校へ出発。電車で学校まで15分程度の場所に住んでおり、また通勤ラッシュの過ぎた時間帯なので通学はそれほど苦ではありません。

午前10時05分 学校に到着。

午前10時25分 2限。開国から太平洋戦争終戦までの日本外交史を主に扱う「国際関係史」の授業です。履修者が多く、1号館の比較的大きい教室で授業が行われています。

午前11時55分 2限終了後は友達と食堂で昼食をとります。1階はいつも混んでいるので2階でとります。

午後0時30分 3限は空きコマ(授業が入っていないコマ)なので4限が始まるまで友達と図書館で課題や読書、東大新聞の執筆などに取り組みます。

午後3時10分 4限。微分積分学の授業です。教員の説明が非常に明快で分かりやすいです。教員によって進め方の順番や説明する内容も異なるそうなので、他クラスの知り合いに微分積分学の授業で何をやっているかを聞くのも面白いかもしれません。

午後5時05分 5限は数学の演習です。微分積分学と線形代数学の演習を隔週で行います。週によって難易度は異なりますが、内容は演習の日までに学習したことなので自分が授業内容をしっかり理解できているかを確認する良い機会だったと思います。難易度の高い週は授業時間終了後も教室に残って、問題を友達と一緒に考えることもありました。

午後7時00分 家に向かう。

午後7時15分 帰宅。

午後8時00分 この日は1限に「構造化学」の授業があったのですが、朝が起きられないのと、授業を聞くより教員の指定した参考書を読む方が理解が早いと思ったので自分で勉強をします。大学は主体性が求められる場なので授業を受けるかどうかは自分で決めるのが良いと思います。教員によっては「この授業は〇〇という参考書に準拠します」という指定があるので、まずは授業を受けてみて出席するかどうかを決めるのが良いと思います。

午後10時00分 寝る前にゆっくりします。

午前1時00分 就寝。

 

文I・実家暮らし 周りに流されず自分に合った選択を

 

 学校の授業の面では同じ学校から東大に行った人が少なかった影響もあってか、あまり人と相談せずに履修を決めたので、必修の授業以外はクラスの人と被りませんでした。後から考えたら大したことはなかったのですが、ただでさえ東大に知り合いが少ないのに授業でも周りの人が知らない人ばかりで不安が大きかったです。授業は少人数のものが多かったので、その中で知り合いをつくることができました。初ゼミ(初年次ゼミナール。東大の1年次で必修の、能動的な学習への動機づけを図ることを目的とした少人数授業)は毎週の課題が多く、最終課題も12000字程度のレポートで大変でした。同じクラスの人や友達と相談して履修を組むのも良いですが、最終的に課題をしたり試験を受けたりするのは自分なので「自分が本当に興味を持てるか」で授業を選択するのが良いと思います。

 

 また、授業の雰囲気が高校と大学で全く違うことにも最初は困惑しました。高校の授業は寝ている人も数人いますが、大体の人は出席して授業を聞いています。それに対して、大学の授業の雰囲気は良くも悪くも自由なので、しっかり出席してノートを取る人もいれば出席すらしない人もいます。どうするかは個人の自由で、それに伴う結果も全て個人の責任なので、周りに流されることなく自分で自分に合った決断をするのが大切だと思います。

 

 生活面では、最初は中高時代との通学経路の変化に慣れるのが大変でした。中高時代は始発に乗りさえすれば乗り換えもなく学校に到着できたのですが、東大に通学するには乗り換えも何回かあり、山手線などの通勤ラッシュに慣れるまで時間がかかりました。また渋谷駅で迷うこともあったので、まだ通学に慣れないうちは授業開始時刻のぎりぎりに大学に着こうとするのではなく、時間に余裕を持って行動するのが大切だと思います。

 

 私は女子校出身で、東大は男子学生の割合が大きいので最初のうちは環境の違いに驚きました。実際に私のクラスは31人中女子学生が8人だけで…。しかし、五月祭でクラスの人との関わりが増えて環境に順応することができました。五月祭では1年生のクラスの多くが企画を出展しますが、入学直後から始まる準備でクラスメートと関わりができます。特に男子校や女子校の出身者は環境の変化にも対応できる良いきっかけになると思うので、積極的に参加するのも良いかもしれません。

 

 

午前5時00分 起床。家を出るまでの1時間45分間は学校に向かう準備などをゆっくりとしていました。

午前6時45分 学校へ出発。通勤ラッシュの電車に乗ります。

午前8時15分 学校に到着。授業が始まる15分前には余裕を持って着くようにしています。

午前8時30分 1限。私は朝が早く、1限があまり苦でないのに加え、高校時代は物理基礎をとっていたので「宇宙科学 I(文科生)」を履修しました。

午前10時25分 2限の授業は必修の「情報」です。必修の授業では同じクラスの友達と会えるので、それを楽しみにしていました。

正午 部活(茶道部)。部活でお菓子を食べられるので昼食は取っていませんでした(笑)。部活は4限が始まる前まで参加していました。3限には「政治I」の授業がありましたがオンデマンド(動画コンテンツの配信などにより、授業の一部または全てを代替する授業方式のこと)だったのでその時間には視聴しませんでした。しかし、結局試験前までため込んでしまい後々大変になったので、その時間に見ないにしろ適度に進めておくのが良いと思います。

午後3時10分 4限。中国語の授業です。最初の頃は発音を中心に学びました。発音ばかりしていると文法や読解に結び付いている気がせず当惑していましたが、語学は最初につまずくと後から大変になるのでしっかり取り組んだ方が良いと思います。

午後4時40分 4限終了後は大学の友達や高校時代の友達と少し早めの夕食を取っていました。高校時代の友達と大学が違っていても、大学生は夕方に時間があることが多いので会うハードルは低いです。

午後5時30分 家に向かう。

午後7時00分 帰宅。

午後8時00分 東大新聞の編集会議(オンライン)。

午後10時30分 就寝。

 

【関連記事】

東大1年生 駒場Ⅰキャンパスでの過ごし方

koushi-thumb-300xauto-242

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る