学術ニュース

2020年4月6日

シリコン負極電池実用化へ道 二次電池容量20%増

(図)シリコン負極を使った二次電池の充放電曲線。図中の数字は充放電サイクルの回数

 

 西原寛教授(理学系研究科)らは充電して繰り返し使える二次電池を最大20%高容量化させる「加圧電解プレドープ技術」を開発した。今後需要が高まる高エネルギー二次電池の実現への貢献が見込まれる。成果は2月21日付の英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』(電子版)に掲載された。

 

 電気自動車やドローンの普及に向けて、高容量長寿命の二次電池が求められている。しかし、従来の二次電池は初回の充放電で正極にあるリチウムが消費されるため、電池の容量が減ってしまう問題があった。その問題を解消するために、電池の組立前に負極とリチウムを反応させるプレドープという技術があるが、十分なプレドープを行うためには長い時間が必要であり、工業的な利用は難しかった。

 

 西原教授らは今回、電極を電解液に浸し、対極との間に電圧を加えて反応を起こすプレドープ法を加圧下で行った。これにより、工業利用の障壁であった反応速度の遅さを解消、高濃度までリチウムをプレドープできることを発見した。

 

 この技術は特に、シリコンを含む負極に有効なことも分かった。シリコンは理論上の容量が一般的な素材の10倍以上あり、資源量も豊富だが、初回の充放電におけるリチウム消費の多さが課題だった。しかし、この技術でプレドープしたシリコンを負極とする二次電池は、プレドープしないものより20%近く容量が増えた(図)。さらに、プレドープしないものは5回目の充放電までに12%ほど容量が低下したが、プレドープしたものはほとんど低下せず、高容量化と長寿命化が実現できることを示した。


この記事は2020年3月10日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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