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2014年11月27日

東大総長はこうやって選ばれる

27日に決定する次期総長予定者(候補者についての記事はこちら)は、第30代の東大総長となる。初代の加藤弘之総長が1877年に就任して以来の東大の長い歴史の中、10年前の2004年、国立大学が法人化したことで総長選のやり方が変わった。法人化後の初となった10年前の総長選、そして現職の濱田純一総長が選ばれた6年前の総長選を振り返り、総長選について制度の面から改めて考える。

今回の総長選では、代議員会と経営協議会により第1次候補者10人程度が選ばれ、総長選考会議による聞き取り調査を経て、第2次総長候補者5人に絞られた。このような選考過程が実施されるようになったのは、2004年に国立大学が法人化した以降の話だ。

国立大学が法人化する以前、総長を選ぶ際に決定権を持つのは、最高意思決定機関である評議会だった。しかしこれは形式上で、実質的には教授らによる投票が実施され、そこで選ばれた1人の候補者を評議会が総長として選出していた。

当時の仕組みでは、まず各部局の教授会構成員(教授、助教授=当時、講師)の中から、各部局4~8人程度の代議員を選出した。その後、代議員が総長に適すると思う候補を自由に書いて投票し、得票数の多い5人を総長候補として選出。その上で教授会構成員で投票を実施し、最終的な候補者を決定していた。投票は有効投票数の過半数獲得者が出るまで、最大3回実施。3回目の投票でも過半数獲得者が出なかった場合、その投票の上位2人で決選投票を実施していた。

しかし法人化の結果、総長選のやり方に大きな変化が訪れることになる。法人化に伴って策定された国立大学法人法の規定で「学長は総長選考会議が選出」し、大学の申し出に基づき文部科学相が任命すると定められた。

東大は当時も、約4千人の教員をはじめ学生や職員など多数の構成員を擁しており、東大の学長である総長には強い正当性や統率力が求められていた。そのため大学構成員の意思が幅広く反映される従来の仕組みの継承を画策。国会審議で文部科学省が「学長選考の過程で大学構成員の意見を反映する仕組みを導入しても構わない」と説明したことを受け、国立大学法人法を考慮した上で、新たな仕組みを構築することになった。

新方式では国立大学法人法に配慮し、8人の部局長と8人の学外者で構成される総長選考会議を設置。その上でより幅広い意見を拾い上げるため、教授会構成員以外の助手や事務職員・技術職員からも代議員を選出できるようになった。さらに代議員会が自由投票で選出できる人数が5人から10人以内に変更された。

また候補者を選ぶのが代議員会だけではなくなり、経営協議会も2人以内の候補を推薦できるようになった。経営協議会は学内以外の優秀な人材を推薦することもできるため、制度上は学外の人が総長になる可能性も浮上した。

このように第1次候補者10人程度が選出された後、総長選考会議が大学の将来構想や経営方針などについて聞き取り調査を実施。その結果などを踏まえ5人程度の第2次候補者を選び、この候補者に対して教授会構成員全員で投票を実施することになった。過半数獲得者が出るまで投票を続け、4回目が決選投票となる点は従来通りだ。

総長の任期も法人化を機に、4年から6年に変更されることになった。これは6年間を目安に大学が設定する中期目標・計画の期間と、総長の任期との兼ね合いを持たせるのが理由の一つ。その他に、総長の権限を強める狙いもあった。

ただし法人化がなされた04年は、ちょうど中期目標・計画の境目の年となっていた。そのため05年に任期に入る総長は自身で中期目標・計画を設定できないので、総長の任期を6年にするのは、09年に任期に入る総長からということになった。

また同時に「東京大学の総長の任期に関する規則」も改訂され「総長は、引き続いて再任されることができない」と定められた。この規定は、総長の任期が6年となる、濱田総長が選ばれた総長選から適用されることになった。

法人化後初の総長選となったのが、第27代の佐々木毅総長(当時)の任期満了に伴い04年9月に実施された選挙だ。それまで総長選は基本的に12月に行われてきたが、法人化に伴うさまざまな引き継ぎを円滑に行うための措置だった。

この総長選では現職の佐々木総長、小宮山宏理事・副学長、西尾茂文生産技術研究所長の3人が第2次候補者に(役職は当時)。投票は佐々木総長と小宮山理事・副学長が争う展開となった。

東京大学新聞社の取材によると1回目の投票は、有効投票数1418票の中で小宮山理事・副学長が646票、佐々木総長が579票、西尾所長が193票を獲得。2回目の投票では西尾所長への票が小宮山理事・副学長に流れ、小宮山理事・副学長が769票で過半数を獲得した。2回目の投票総数は1403票で、投票率は64%だった。

そして6年前、当時理事・副学長だった濱田総長が選ばれた選挙は、第2次候補者に6人が選ばれた。その他の候補者は岡村定矩理事・副学長、廣川信隆教授(医学系研究科)、廣渡清吾教授(社会科学研究所)、古田元夫理事・副学長、前田正史生産技術研究所長(役職は当時)だった。

投票は3回目を終えても過半数獲得者が現れず、4回目は濱田理事・副学長と岡村理事・副学長による決選投票に。最終的に濱田理事・副学長が875票、岡村理事・副学長が669票を獲得し、有効投票数の過半数を獲得した濱田理事・副学長が第29代の総長に選出された。4回目の投票総数は1554票で、投票率は67%だった。

 法人化後の2度の総長選は、いずれも1回の投票で決定しない混戦となった。また3度目となる今回の総長選では投票の位置付けが変更された。総長は投票結果だけで選ばれるのではなく、投票結果を考慮して総長選考会議で決定されるようになった。

今回の総長選ではどのような考えのもと、どのような展開で誰が選ばれるのだろうか。次期総長予定者は11月27日夜に発表される。

(構成・石原祥太郎)

この記事は、2014年11月25日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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