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2020年9月30日

【速報・東大総長選考】選考過程「透明ではない」が77.2% 本紙独自アンケート分析①

 東京大学新聞社では9月30日の東大総長選考(以下、総長選考)意向投票に先立ち、インターネット上でアンケートを実施した。教員による投票が直前に迫る中、この記事では主に総長選考の過程に関する質問への回答結果を分析する。回答者の77.2%が総長選考の過程を「全く透明ではない」「あまり透明ではない」と評価するなど、総長選考の透明性に対する東大関係者の意見が見えてきた。

(構成・中野快紀)

 

※東大総長就任を希望する候補者や東大総長に求める改革、意向投票の投票権拡大の是非、その他総長選考に関する意見などについては、後日分析記事を公開。また、この記事で扱ったテーマについても、後日詳報予定。

 

70.7%が関心持つ一方、過程の認知度は37.5%

 

 本アンケートは9月27~29日にインターネット上で実施し、合計で1068件の回答が集まった。回答者の属性は東大の学部生が37.9%、東大の大学院生が16.7%と東大生が半数以上を占め、常勤、非常勤合わせた東大教員、東大研究員が9.8%、東大職員が3.5%だった。その他には元東大構成員や他大学構成員らからの回答が多かった。

 

 総長選考についての関心について4段階で尋ねた質問では、平均点が2.9点。最も関心が強い「4」を選んだ回答者が36.2%、「3」が34.5%と、合計70.7%の人が関心を持っていることが分かった(「2」が16.9%、「1」が12.5%)。一方で、今回の総長選考の過程をどのくらい知っているかを同じく4段階で尋ねると平均点は2.2点。「4」を選んだのが7.1%、「3」が30.4%と、関心の高さに比べると認知度が低いことが判明した(「2」が32.9%、「1」が29.6%)。「総長選考会議」の役割や現在のメンバーの認知度については「4」が5.7%、「3」が19.1%、「2」が30.4%、「1」が44.8%と、半数弱が「全く知らない」と回答した。

 

 

 

「理想の東大総長」=「優れた経営者」は15.3%

 

 今回の総長選考では、前回選考時には決定直後に一般にも公表された「第2次候補者」が、総長予定者決定までは教職員向けに告示されるにとどまっている。また第2次候補者の氏名について「取扱いにご留意願います」という要請が出されたことについては「暗黙の箝口(かんこう)令」であるなどと批判する声も出ている。その上で、第2次候補者が誰であるか知っているかという質問を行ったところ、全員知っているのが24.8%、属性のみ知っている場合も含めて一部知っているのが34.6%、一人も知らないのが40.5%だった。常勤の教員、職員に限ると全員知っているのが65.9%と、全体に比べるとかなり割合が大きい(一部知っているのが26.8%、一人も知らないのが7.3%)。

 

 総長選考に先立ち4月に総長選考会議が発表した「求められる総長像」では、総長の「経営能力」重視が明言されていた。一方、今回のアンケートで、回答者が思う「理想の東大総長」像を選択肢の中から一つだけ選んでもらったところ、理想の東大総長として「優れた経営者である」と回答する人は15.3%だった。他の選択肢は「優れた研究者である」と回答したのが13.9%、「優れた教育者である」が31.6%、「優れた人格者である」が35.5%(残りは自由回答)。常勤の教員、職員の中では、「経営者」と回答したのが21.1%。加えて「人格者」が48.8%だった点が目立った。なお総長選考会議は「求められる総長像」に照らし合わせた調査と意向投票の結果を考慮して総長予定者を選出することになっている。

 

候補者学外非公表に「違和感がある」87.4%

 

 現在学内外から批判が集まっている総長選考の透明性についての評価を4段階で尋ねると「非常に透明だ」と回答したのが1.9%、「やや透明だ」が2.7%、「あまり透明でない」が31.9%、「全く透明ではない」が45.2%、「わからない」が18.3%という結果で「透明でない」とした回答者が77.2%となった。

 

 

 総長予定者が発表される10月2日まで第2次候補者が教職員以外に公表されないことに関しては、「違和感がある」としたのが87.4%、「違和感がない」としたのが12.6%だった。この措置に関しては「学生にも関係のある事柄であり、手続の透明性をわざわざ低くするような措置をとったことに対しては理解することができない」(東大院生)という批判的な声がある一方で「選挙権の在る方に周知されているので問題はない。むしろ公開しない方が、外部の無責任な意見が入りにくくて良い」(東大常勤教員)という、意向投票の投票権が教員のみに与えられている現状を踏まえた意見もあった。総長選考会議の小宮山宏議長も田中純教授(東大総合文化研究科)らからの質問状に対し、意向投票の投票有資格者は学内の教員のみで、学外の意見などを取り入れる環境に対応することはないと判断した、と回答している。

 

第2次候補者の顔ぶれをどう見るか

 

 9月8日に教職員向けに通知された第2次候補者は、全員が理系の研究者で、かつ男性だった。一方で、田中教授らが公開した第1次候補者の中には文系の研究者、女性の研究者も含まれていた。

 

 第2次候補者全員が理系、男性だったことについてそれぞれ尋ねると、全員理系だったことに「違和感がある」としたのが76.3%、「違和感がない」としたのが23.7%。全員男性だったことに「違和感がある」としたのが69.9%、「違和感がない」としたのが30.1%であった。

 

 小宮山議長は、総⻑選考会議では候補者の属性を特別に意識することはせず、求められる総⻑像に照らして最良の候補者を選出するという方針で臨んだと説明している。回答者からも「候補者に多様性があることは望ましいが、求められる総長像という基準に基づいて選考している以上、候補者の文理や性別という属性は関係ないと思います。基準に則した結果、多様性がないことは問題にならないのでは」(東大職員)、「教員や学生の現状の男女比や文理比に合っているものであれば問題ない」(東大院生)といった声があった。一方で「候補者個々人は業績も人格も大変立派な方ばかりだが、女性がいないのと専門分野が偏っているのが問題である」(東大常勤教員)、「結局東大は、口では女性の入学を増やしたいと言いながらも、男性に権力が集中していることに無自覚なんだなぁという気持ち」(東大学部生)と、属性の偏りに異を唱える意見も。また「理系文系やジェンダーが多様性を全て表現しているとは思わないし、今更『理系文系』のような区切りを総合大学の多様性の基準にするのはどうかと思うが(それでは理系文系の対立が前提になってしまう)、『どういう総長像か?』についての『多様性』とその多様性の基準となる東大の抱える課題は先に示されていてもよかったように思う」(元東大生)という、東大の現状についても言及した意見も見られた。

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