LATEST NEWS 2020年10月5日

【東大総長選考】「世界の誰もが来たくなる学問の場を」 藤井輝夫・次期総長予定者が会見

 10月2日午後3時より、次期(第31代)東大総長予定者に決定した藤井輝夫理事・副学長が、本郷キャンパスの伊藤謝恩ホールで記者会見に臨んだ。藤井理事・副学長は次期総長予定者に選出されたことについて「重責を担うことになり、身の引き締まる思いだ」と表明。社会の前提が変化している今日の大学において、長期的な視野を持って新しい大学像を描くことが重要であると指摘し「学内外からの幅広い意見を聞きながら、世界の誰もが来たくなるような学問の場を作っていきたい」と抱負を述べた。

 

次期総長予定者に決まり、記者会見に臨む藤井理事・副学長
次期総長予定者に決まり、記者会見に臨む藤井理事・副学長=2日、伊藤謝恩ホールで(撮影・高橋祐貴)

 

 会見には総長選考会議の小宮山宏議長(第28代東大総長)、渡辺努議長代行(経済学研究科・経済学部長)も出席。小宮山議長からは選考のプロセスに関する報告が行われた。疑問の声も多く上がった今回の選考について、小宮山議長は「白票の数は確かに多かったが、これまでで最高の有効投票率で藤井先生が選ばれたことで、大枠は維持されたと考えている」とコメント。「いただいたさまざまな批判については、少なくとも第三者の声も反映できる形で今後検証をしていくという方向は選考会議で確認している」と述べた。

 

記者会見で説明を行う総長選考会議の小宮山議長(撮影・高橋祐貴)

 

 藤井理事・副学長に対する会見での主な質問・回答は以下の通り。

 

──五神真・現総長の施策をどのくらい、またどのように引き継いでいくか

 

 大学と社会がさまざまな活動を一緒にやれるようになってきた。その中の良いところを生かしつつ、自分なりの挑戦や変化を加えながらバランスをとっていきたい。活動を実りあるものとするために大学の組織や運営・経営の在り方について考えていきたい。

 

──藤井理事・副学長は生産技術研究所での勤務が長く、教育部局での経験がないが、教育改革についてはどのように考えているか

 

 FLY(初年次長期自主活動)プログラム・体験活動プログラムの立ち上げや、フィールドスタディ型政策協働プログラムの運営などで学部教育へは関与してきたと考えている。大学の運営は1人でやるものではない。教育部局での経験がある方にも協力していただきやっていく。特に教育については、学内の幅広い声を聞きながら進めていきたい。

 

──今後東大生に求める力は

 

 学びと社会を結び直す力をつけてほしいと考えている。それぞれの専門的な知識はもちろん大事だが、社会の変化が速くなる中で、知を活用できる場面もどんどん移り変わる。基礎的な学問に加え、時代の中で求められている知を学び直し、それを使っていける人材になってもらいたい。

 

 

──総長になったら具体的にどのようなことがしたいか

 

 実りある活動という意味では、企業とのさまざまな大型の連携が始まっている。例えば現在は日立製作所、ダイキン工業、ソフトバンク、日本IBMなど各社との連携が進んでいるが、これらの連携でしっかり成果を出して世の中に価値を打ち出していくことが大切と考えている。

 

 大学の組織的なポテンシャルを高めることも必要と考える。例えばオペレーションのデジタル化。こうした改革を打ち出していくための事務のプロセスを考え、教育研究に対するサポートも効率化していく。大学構成員が有効に使える時間を増やしていければいいと思う。

 

──意向投票についてどのように考えているか

 

 今回意向投票でこういう(自分に票が集まる)結果になったことについては、個人的には心強いと感じている。仲間と一緒にやっていくという観点に立つと、意向投票は今後も続けていくべきだと考えている。

 

──今回、選考プロセスに対し疑義を唱える声が上がり、学内で分断と不信が生まれていることにはどう対処するか

 

 選考プロセスについては、コメントする立場にないが、さまざまな声が上がったことについては把握している。きちんとそうした声に耳を傾けていくこと、その検証と改善がしかるべき形でなされることには期待したい。

 

──日本学術会議で新会員に推薦された学者6人が菅義偉首相から任命を拒否された問題について、憲法で保証されている学問の自由と政治の関係については、どのように考えているか

 

 事実関係については詳細を把握していないためコメントできる状況にないというのが現状だが、次期総長としては今後適切に対応していきたいと考えている。学問の自由については、大学の自己決定や自律性は大切だと捉えている。

 

 小宮山議長に対する主な質問・回答は以下の通り。

 

──学問の自由を守るという原則は総長の選考過程にどのように反映されていると考えるか

 

 学問の自由や、それを担保する大学の自治は極めて重要だと認識している。一方で国立大学法人法では「総長は総長選考会議が決定する」とされている。意向投票は総長と大学構成委員の信頼関係を担保するのに極めて重要で、意向投票のおかげで重大な改革なども行える。大学の総長と構成員の関係は企業の社長と従業員の関係ではない。大学総長には「仲間の代表」という側面がどうしてもある。意向投票の重要性と法律などの要請の中では、「求められる総長像」を明確にして、それに当てはまる人のみを第2次候補者として出し、それに対する意向投票を尊重することが合理的である、という立て付けになっている。

 

 第2次候補者を選出する時点で、総長選考会議が求める人材に絞っているため、意向投票を尊重することができる、ということだと思う。

 

──9月30日の意向投票の結果が一部教員などにより外部にも公表されたが、意向投票の結果を反映しない選出はあり得たのか

 

 総長選考会議がいつ何の情報を公表するか決めているわけだが、さまざまな形で情報が実質的に公表されてしまったことには非常に戸惑いを感じている。漏れた情報の全てを把握はしていないし、その情報の正しさをどういうソースで確認できるかに関しては、自分自身も全く把握していない。ただ、こうした動きには選考プロセスは全く惑わされてはいない。それだけの見識のある16人の選考会議の委員を選んでいるため、今回も極めてスムーズに藤井理事・副学長を総長予定者に選出することが決まったが、これはさまざまに飛び交っている情報とは無関係だ。

 

──今回、選考プロセスの中で学部長などからも要望書が出される事態に発展したが、なぜこんなことになってしまったと捉えているか。反省点はあるか

 

 今外部に流れている情報については、本来あるまじきもので、どのようなルートで情報が漏れているのか、自分でも全て把握できていない。プロセスの透明性についていろいろなことがいわれているが、このプロセスは全て皆で相談して決めたことだ。第1次候補者については公表しない条件で所見を書いてもらうなどしているので、外部公表はしないことにした。総長の要件を検討するプロセスというのは、選考会議内で場合によっては極めて率直な意見も交わさねばならず、これが不開示の大きな理由である。「透明性」とは必ずしも全て丸裸にするという意味ではなく、率直な議論のために全てを開示しない姿勢は間違っていないと考えている。

 

 国立大学法人法や、2019年に閣議決定された骨太の方針(政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す方針)といった、学長を意向投票によらずに決めることを求める社会的要請がある。その中で、大学の自治や学問の自由を守るために意向投票を実施した今回の選考の大枠は間違っていないと考えるが、いつどの段階で何を公表するかといった細部についてはベストではなかったかもしれない。今日の(総長予定者を決めた)総長選考会議でも、選考について検証を改善を行うことを確認し、そのための活動を可及的速やかに始めるつもりでいる。

 

──選考会議としては藤井理事・副学長のどのような面を評価したのか

 

 所見の内容と、約30分行った面接時のやりとりを評価した。各候補者の経歴は可能な限り調べており、これらの情報に基づいて各委員が「求められる総長像」に照らして判断したということだ。

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