COLUMN 2019年11月1日

【東大教員と考える日本の問題②】日本社会と外国人「違い」前提に移民と共存

 

石田 賢示(いしだ けんじ)准教授(社会科学研究所) 14年東北大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。社会科学研究所助教などを経て、16年より現職。

 

 「東大教員と考える日本の問題」は、日本が抱えるさまざまな社会問題について東大教員に話を聞く連載企画です。連載2回目の今回のテーマは「日本社会と外国人」。

 「今も昔も、日本人は外国人労働者を『お雇い外国人』や『助っ人』として捉える節があります」。そう考えるのは石田賢示准教授(社会科学研究所)だ。「日本人ができないとされる仕事を一時的に担い、最終的には母国に帰っていく。そんな外国人労働者像が想定されているんです」。確かに、研究など高度な業務に従事する外国人の姿は想像に難くない。

 

 しかし近年では、人手不足を背景に単純労働分野への外国人受け入れも目立つようになってきた。例えば、途上国への技術移転を目的に導入された技能実習制度を利用して日本に在留する外国人は、すでに25万人を超える。介護や建設業への受け入れを念頭に「特定技能」という新たな在留資格が新設されたことは記憶に新しい。彼らは母国より高い賃金を求めて日本にやってくる、移民だ。

 

日本の外国人労働者のうち、技能実習と専門的・技術的分野の在留資格で従事する人数の推移。2016年には技能実習が人数で上回っている(厚生労働省の資料を基に東京大学新聞社が作成

 

 「労働力」として議論の対象となりがちな外国人だが、同時に日本社会で生活する生活者でもある。場合によっては、家族を持つこともあるかもしれない。しかし「国全体できちんと受け入れの体制が整えられているとは言えない」と石田准教授は指摘する。

 

 それにもかかわらず現時点で大きな問題が顕在化していないのは、自治体や地域コミュニティー、そして外国人自らの努力が大きいという。国勢調査を基にした石田准教授の推計では、外国人児童の小学校・中学校段階での就学率は9割近い。ただ、自助努力に頼ってしまっているからこそ、成功したコミュニティーと失敗したコミュニティーの格差は大きい。さらに今後は「単純労働に従事する外国人が増加するため、自助努力で対処できないケースも増えるかもしれない」。

 

 「日本社会は閉鎖的」という言説がある。そのため、よそ者である移民を受け入れる土壌がない、という主張だ。しかし石田准教授はそれに疑問を呈する。「ヨーロッパで反移民の動きが広がるように、日本人特有の性質とは言えないのでは」

 

 ただ、これまで日本では人口の流動性が高くなかったために、日本人がよそ者に求める暗黙の了解や「文脈」のレベルが高い可能性はあるという。「例えば学校教育では『みんなと仲良くする』ことに主眼が置かれていますが、それは『みんなが同じような常識を持っている』という前提があって初めて成り立つものです」。移民を受け入れず、日本の中で持っている常識が共有されていたからこそ、そのような前提が成り立ってきた。

 

 ヨーロッパと日本で異なるのは、移民に抵抗を感じる属性だ。例えば、ヨーロッパなどでは単純労働従事者が移民に仕事を奪われると考えて移民に反発する傾向がある。しかし、日本で移民に抵抗を覚えるのは、子どもがいたり、持ち家があったりする人々で、特に女性にその傾向が強いという。日常生活に近い部分で反発を覚える人が多いのだ。実際、近年外国人住民が増加している地域ではゴミ出しなど生活領域のトラブルが問題となる地域も出てきている。しかしながらその解決も、地域コミュニティーの自助努力に頼らざるを得ない。

 

 石田准教授は「日本もいずれ、ヨーロッパと同じように、移民に対する拒否感が社会全体で強まっていく可能性がある」と指摘する。現状では地域コミュニティーや自治体内で対処している教育や雇用の問題、地域のトラブルの規模が拡大していってしまうかもしれない。

 その解決には「慣れるしかない」と石田准教授は言う。大都市圏を中心に、すでに多くの外国人住民が日本に在留している。彼らとのコミュニケーションに若年層から少しずつ慣れていくこと、日本文化に無理に同化させるのではなく「違いがある」ことを前提にコミュニケーションを取っていくことが重要だ。


この記事は2019年10月22日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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