報道特集

2019年10月7日

世界最高水準の教育にふさわしい制度を 非常勤講師の「働き方改革」【東大の非常勤講師㊤】

 

 

 今年度から、東大で勤務する非常勤講師が無期雇用への転換を申し込める通算勤続期間が、10年から5年に変更された。2018年9月1日から業務請負契約が雇用契約に変化するなど、東大の非常勤講師に対する待遇は移り変わっている。連載「東大の非常勤講師」の前編に当たる今回は、制度変更の理由や意図について、東大内の人事労務を担当する里見朋香理事に話を聞いた。

(取材・山中亮人)

 

 

 18年9月から東大は非常勤講師と雇用契約を締結することとなったが、それまでは業務請負契約を締結していた。業務請負契約では労働基準法などの労働関係法令は適用されないため、労働者災害補償保険なども適用されない。里見理事は業務請負契約からの転換については「非常勤講師の労働者性に配慮した」と説明する。13年に改正された労働契約法で、通算5年(注1)を超える有期労働契約で働く労働者に関しては、無期契約へ転換できることが定められていた。東大は18年秋に施行した就業規則において、非常勤講師については教員任期法による特例対象者として、無期転換申込権発生までの通算期間を10年としていた。

 

 今年1月25日、東京大学教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合は厚生労働省で記者会見を実施。東大が19年度から無期雇用転換の申し込みが認められる通算期間を10年から5年に変更することを発表した。東大が昨秋の規定を撤回したと見ることもできる。

 

 里見理事は今回の変更について「東大における講義または実験の指導等に従事する非常勤講師は、常勤教員とともに質の高い教育内容の提供が期待され、東大のビジョンを実現する上で重要な構成員。世界最高水準の教育機能を維持する上でふさわしい制度設計であり、5年を超えて継続して雇用している非常勤講師の無期雇用への転換は妥当」と見ている。非常勤講師の雇用期間については、一の会計年度を限度としてセメスター等の授業実施期間に応じた期間とすることとしている。

 

 教員任期法により任期を付して雇用された常勤教員については、通算して10年を超える場合に無期転換申込権が発生する。里見理事は「非常勤講師には長期的な参画を通じて教育研究成果を求められる常勤教員とは異なる性質が認められる」と説明する。現在、無期雇用転換を申し込む権利を持つ非常勤講師は100人程度。無期転換申込権の発生した非常勤講師に対しては「無期雇用転換申出書」を交付し、契約更新ごとに本人の意思確認を行っている。申し込みは通年で受け付けている。

 

 里見理事によると今年度4月から5年での無期転換を実施したことを受けて改めて非常勤講師に関する新制度の導入については「特に考えていない」という。しかし「将来を見据えて東大にとって必要な非常勤講師の雇用の安定させつつ教育の質を向上させることは、経営改革として大変重要。人事マネジメントの機能向上を促進し、東大が将来にわたり持続可能な世界最高水準の教育機能を支える組織体制の強化を図る」という。

 

(注1)「大学の教員等の任期に関する法律(教員任期法)」と「研究開発力強化法(現在は科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律)」に定められる特例対象者は10年。

 

【東大の非常勤講師㊦】に続く

待遇改善の道半ば 非常勤講師雇用今年から制度変更 常勤との格差課題【東大の非常勤講師㊦】


この記事は2019年9月17日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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