COLUMN 2018年8月18日

進学選択、終わり良ければすべて良し? 志望外の進学先に新たな希望

 進学選択で希望の学部・学科に進学できない学生は必ずいる(図)。「進学選択で失敗したらどうしよう……」と不安を抱く学生も少なくない。しかし、進学選択での失敗は本当に「失敗」と言い切れるのか。今回は、進学選択で希望通りにはいかなかったものの、結果として現在の進路に満足している教員や学生に取材した。進学選択に不安を抱えている学生は、ぜひ彼らの言葉に耳を傾けてほしい。

(取材・岡田康佑)

 

 

未知の中南米に衝撃

 

和田 毅(わだ・たけし)教授(総合文化研究科)
 90年教養学部教養学科中南米分科卒業。93年総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程修了。03年コロンビア大学社会学学科Ph. D取得。アメリカ、メキシコでの計15年の滞在を経て、18年より現職。

 

 現在、教養学部の地域文化研究分科ラテンアメリカ研究コースの教員を務める和田毅教授が、学生時代に進学したのは現在の所属と同じ教養学部の中南米分科だ。当時の進学振分けは、今の進学選択と異なり1回目に第3志望まで記載する方式だった。そして中南米分科は、第3志望に書いたものだったそうだ。

 

 理Ⅰ生だった和田教授が第1志望に選んでいたのは工学部の都市計画学科(当時)。第2志望は都市計画と似た内容を学べる土木工学科(当時)で、必要点数が低めなので滑り止めとして選択した。「第1志望はともかくまさか第2志望に落ちることはないだろうと高をくくっていました。しかし内定発表の掲示板を見に行くと、登録したことすら覚えていない『中南米』の3文字が目に飛び込んできました」

 

 中南米分科は、文系のスペイン語履修者が進学するところであり、研究対象がマイナーなためか、進学者がいない年があるほどだった。理系かつフランス語選択だった和田教授が、一体なぜ中南米を第3志望に書いたのか。「第3志望はあり得ないと決めつけ深く考えず書いたので、なぜ書いたかはおろか、書いたことすらよく覚えていません。中南米分科の人数を増やそうとする先生たちの陰謀ではないかと考えたほどです(笑)。でも、はるか遠い地球の裏側にある中南米の世界を知りたい漠然とした憧れはありましたね」。そのため進学先を知った瞬間は驚いたもののそこまで落胆はしなかった。「むしろ未知の世界に飛び込む魅力を感じ、わくわくしていました」

 

  進学先での勉強は初めてのことばかりで大変だった。「進学者5人の中で唯一スペイン語未履修だった私は、普段の授業に加えマンツーマンでスペイン語の特訓を受け、1年分の内容を4週間で叩き込まれました」。しかしスペイン語はコースの同期生たちのレベルに追いつけず、日本全国からメキシコへ留学する学生を選抜する試験を受けた際には分科の中で和田教授だけ落選した。「その頃は4年で卒業し、そのまま就職するつもりでした」

 

 しかし、メキシコ留学中の同期の友人から送られてきた1枚の絵はがきをきっかけに、和田教授は研究者への道を歩み出した。その絵はがきには、メキシコで新しくできたヨーロッパ人の知り合いたちとルームシェアをし、充実した海外生活を送る興奮がつづられていた。その楽しげな雰囲気や、未知の出会い・知識が凝縮された1枚に衝撃を受けた。「自分も中南米に行き、未知の刺激を得たいという意欲が湧いてきました」。インターネットがある今と違い海外はとても遠い存在だったので、絵はがきが醸し出す光景への憧れは強烈だったそうだ。

 

 スペイン語の勉強を続け、翌年には和田教授もメキシコ留学を達成。現地の好意的な人々との交流に刺激を受け、帰国後は大学院進学を決意した。その後米コロンビア大学にも留学をし、研究者としてのスキルを身につけていくうちに、研究者以外の道は考えられなくなった。

 

 現在、和田教授は社会学を研究するが、意外にも社会学は本来研究したかった都市計画の内容と似通った部分が多い。例えば中南米の不十分なインフラの原因追究や改善は両者に共通する課題だ。「波乱の進学振分けでしたが、巡り巡って当時研究したかった分野にたどり着けた気がします。もしかしたら第1志望に進学しても今と同じ研究をしていたかもしれません」

 

 回り道をしても努力次第では同じ道にたどり着けると、和田教授は強調する。「学部で学ぶことは専門の全てではなく、むしろ基礎知識にすぎません。だから第1志望に進めなくてもそんなに悲観する必要はないと思います。変化の積み重ねで、人生は大きく方向転換するものですよ」

 

実習の魅力見いだす

 

青木 智(あおき・とも)さん(理学系・修士1年)

 

 青木智さんも進学振分けで第1志望に進めなかった一人だ。理Ⅱ生だったが物理好きで、最初は理学部物理学科を志望した。しかし理Ⅱからの進学は点数のハードルが高く、早々に諦めてしまった。代わりに好きな物理と天文の両方を活用できる地球惑星物理学科を第1志望としたものの、これも点数が足りず第2志望の地球惑星環境学科への進学が決まった。物理や数学などの座学が多い第1志望に対し、第2志望は地学の実習が多い学科だ。手法は違えど似たことを学べる学科なので「仕方ないか」と割り切った。

 

 「でも、結果的には今の進路が大正解でした」。そう思うようになったきっかけは、実習の楽しさだった。実地調査に出掛け、石を探し出し、観察する作業を繰り返して研究を進めていくスタイルが性に合っているという。技術の向上が実感できるのが何よりうれしく、座学よりも夢中になれることに進学してから気付いた。「専門的な顕微鏡で大量の鉱物の種類をひたすら判別する地獄のような実習があるんですが、これもヒーヒー言いながらとても楽しんでいました」

 

 地道な作業を積み重ねる研究の面白さに魅了され、現在も院で学科に引き続き石の解析を用いた研究を行い、進路も研究者を志望している。「これから進学選択を迎える皆さんは、理想を追いすぎて自分を追い込む必要はないと思います。僕の場合は、流れに逆らわずに進んだ方がいい選択ができました」


 この記事は、2018年5月22日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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