進学選択

2023年6月15日

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(教育学部・教養学部編)

 6月から手続きが始まる進学選択。後期課程のイメージができず、志望先を決めかねている2年生も多いだろう。本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。4年生が経験した3S1タームと3A1タームの時間割や本年度の進学選択手続きの日程も掲載している。志望先決定の一助としてほしい。(構成・石川結衣、天川瑞月、取材・高倉仁美、清水央太郎、宮川理芳、谷口藍子、堀添秀太、青木佑磨、中村祐貴、阿部孝太郎、本田舞花、新内智之、岡部義文)

 

文III→教育学部教育心理学コース

 

多様な履修、多様な進路

 

小池優希(こいけ・ゆき)さん

 

 自身の経験から子どものメンタルケアに興味を持ち、子どもたちの問題に介入できる大人になることを目指している小池さん。教育と心理、両方のアプローチをとりたいと考え、高校時代から教育心理学コースを志望していた。

 

 コースに在籍する学生の半分弱が公認心理師という国家資格取得を目指す。小池さんもその1人だ。前期教養課程在籍時から資格取得に必要な授業を受けられたため、前期教養課程では心理・教育関連の授業を中心に履修したという。

 

 後期の授業は週10コマ程度が平均で、履修の自由度は高い。心理学の論文を書きつつ研究法を勉強する「教育心理学実験演習」や、学生自身でクライアント役、セラピスト役などを務めて多様な立場を体験する実践中心の授業もある。

 

 教育心理学コースは、学生の興味の「多様さが魅力」で、医療や産業組織など教育以外の場での心理学に関心を持つ学生も多い。また学生同士の交流も盛んで、誕生日を祝い合ったり、授業が厳しいときは励まし合ったりするという。

 

 一方で、コースのカリキュラムが研究者養成を目標としているため課題が多く、就活生には負担となるという難点もある。

 

 卒業後、大学院へ進む学生と就職する学生はほぼ半々に分かれるが、就職の方が院進より若干多い。院進の目的としては、研究者を目指すことや、公認心理師の資格取得の必要要件になる修士課程修了が挙げられる。就職先としてはコースでの学びを生かす職もあるが、それ以外にも公務員から民間企業まで多種多様な選択肢があるようだ。

 

文III→教養学部教養学科 総合社会科学分科国際関係論コース

 

熱心な仲間と議論して学ぶ

 

吉田莉々(よしだ・りり)さん

 

 自身のルーツから、国際的なトピックに興味を持っていた吉田さん。岡田晃枝准教授(東大大学院総合文化研究科)の初年次ゼミナール「紛争と介入をめぐる諸問題」などを受けて国際関係論コースに行こうと決めた。前期教養課程では負担が大きい授業に取り組むのが好きだったという。

 

 国際関係論コースでは、国際政治だけでなく国際法と国際経済も学ぶので、興味のある分野を見つけやすい。授業は論文の輪読や、ディスカッションが多く、課題などの負担が大きい。また、体系的な座学は少なく、自分で学ばないと体系的な知識は身に付かないという。履修の自由度は高く他学部履修は簡単で、本郷キャンパスだけで授業を受ける曜日を作る人もいるという。

 

 議論する授業が多いため、コースの人と交流し仲良くなる機会が多い。「駒場に残る人は学問に対してモチベーションが高い人が多く、ただの友達との雑談もためになる。刺激的な関係を築けます」。留学する人が多いのも特徴だ。

 

 また、駒場Iキャンパスにいられるメリットも指摘する。「学科やコース間の垣根があまりなく、興味のあることに手を出せる雰囲気が良いと思います」

 

 就職先は官僚や一般企業など多岐にわたる。就活しなければという圧が弱く「みんな我が道を行く感じがする」という。「個人的にはもう少し駒場に残って勉強をしたいので、院進を予定しています」

 

 国際関係論に興味がある学生には、それがどのような学問かを前期教養課程で学ぶことを勧める。「国際関係の理論と、今どうやってウクライナの戦争を止めるかという話にはつながらない部分があるので、前期教養課程で知っておかないと学問に対して失望してしまうかもしれません」

 

理II→教養学部統合自然科学科統合生命科学コース

 

学際的かつ最先端の学び

 

山本風路(やまもと・ふうろ)さん

 

 教養学部後期課程では学際的な内容を扱うことが多いが、統合自然科学科も例外ではない。多分野を横断する研究科には幅広い知識が要求される。前期教養課程で必修の化学・生物・物理を学んだ経験が後期課程に生きている。

 

 生命科学コースでは主に生物の細胞を扱う。一口に細胞といっても、細胞内の物質の動きといったミクロな分野から、細胞そのものや組織といったマクロな分野までさまざまだ。基礎よりも発展的な内容に主眼が置かれており、自分で予習して授業に臨む。扱われる内容は細胞を人間の目的に沿って操作する細胞工学、タンパク質をデザインして産業に応用する内容の授業など、学際的かつ最先端。オムニバス形式で指定された論文を事前に読み、各教員が内容を解説する講義が印象に残っているという。

 

 学部の特徴の一つが教員の充実ぶりだ。学科では教員と学生がほぼ同数。4年次に研究室に配属される際は、研究室1つ、つまり教員1人に対し学生1人と決まっており、卒業論文の執筆を手厚くサポートする体制だ。学科の学生も少人数な分、互いに打ち解けるのも早く、皆で花見に出かけるなど深い交流がある。

 

 もう一つの大きな特徴がサブメジャー・プログラムというシステム。自身の専攻の他にある分野の単位を一定数取得すると、副専攻として学位記に記載される。学際的な研究が強みの後期教養学部で、複数の分野に越境して学びたい学生にとってありがたい制度だ。山本さんは映画や演劇などの芸術を扱う教養学科超域文化科学分科の表象文化論コースでの取得を予定している。卒業後は他の理系学部学科と同様にほとんどの学生が院進を選択する。山本さんも修士課程に進み、その後は博士課程への進学と就職の両方を検討している。

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