文化

2023年5月19日

【幕間閑談】はかなくも美しい悲恋の物語『うたかたの恋』 かぐわしく華やかなショー『ENCHANTMENT(アンシャントマン)ー華麗なる香水(パルファン)ー』

 

 観劇をしたことはあるだろうか。観劇というと縁遠く感じるかもしれない。「観劇」といっても、ミュージカルやオペラ、能に歌舞伎、さらに学生演劇など実にさまざまな演劇がある。演劇ならではの役者たちの「生」の演技と演出の魅力を伝えていくため、連載「幕間閑談」を始めることにした。その初回となる本記事では、女性だけで構成され、今年で109周年を迎える劇団「宝塚歌劇」の花組公演『うたかたの恋』とショー『ENCHANTMENT(アンシャントマン)ー華麗なる香水(パルファン)ー』を紹介する。

 

 

 幕が上がると、純白の衣装に身を包み、幸せそうにほほ笑む若い男女が現れる。

「マリー、来週の月曜日、旅に出よう」

「あなたと御一緒なら、何処へでも!」

 2人は歌いながら、美しい旋律に合わせて優雅に踊り始める。華やかで美しい始まりだが、なぜか悲劇的な結末を予感させる。

 

 今年で上演40周年を迎える『うたかたの恋』は、宝塚歌劇で何度も再演を重ねた人気作である。クロード・アネの小説”Mayerling”(邦題『うたかたの恋』)をもとに、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーの悲しくも美しい愛が描かれている。1888年に、ルドルフとマリーは劇場で出会い、激しい恋に落ちる。孤独に生きてきたルドルフにとって、マリーは自分に寄り添い癒してくれる唯一の存在であった。しかし身分違いの2人の恋は許されぬものであり、追い詰められた2人はある決意をする。

 

『うたかたの恋』の主人公「ルドルフ」のモデル ルドルフ皇太子
『うたかたの恋』のヒロイン「マリー」のモデル 男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ

 

 『うたかたの恋』は、ルドルフとマリーのみが主役なのではない。ルドルフ、ジャン・サルヴァドル、そしてフェルディナンドという3人の若者たちの苦悩と青春も描かれる。皇太子であるルドルフと、そのいとこの2人はいずれも高い身分を持ち、未来を約束された若者たちであった。しかし、皇族としての身分の息苦しさと自由主義への憧れ、そして身分違いの恋に苦しみ、運命に翻弄(ほんろう)されてゆく。3人とも「うたかた」のように儚い運命に苦しみながらも、ある者は運命を受け入れ、ある者は運命に抗い、幸せを求めようともがく。ルドルフとマリーの恋はどのような結末を迎えるのか。そしてサルヴァドルとフェルディナンドは自分の運命とどう向き合っていくのか。ぜひ、本作を見て確かめてほしい。

 

 宝塚歌劇の公演はお芝居とショーの2本立てであり、1回の観劇で二つの舞台を楽しむことができる。後半のショー『ENCHANTMENT』では「香り」をモチーフに、豪華絢爛(けんらん)なショーが繰り広げられる。中国や米国、ヨーロッパなど古今東西のさまざまな名香をモチーフに、娘役たちは一糸乱れぬラインダンスを披露し、男役たちも群舞で観客たちを魅了する。

 

 『うたかたの恋』で若き二人の悲恋に涙し、『ENCHANTMENT』の華やかな香りで笑顔になる。美しい衣装をまとったタカラジェンヌたちが踊り、歌う夢のような世界に引き込まれること間違いなしである。男役たちの研ぎ澄まされた妖艶な美しさ、そして娘役たちの清らかで可憐(かれん)な愛らしさに酔いしれてみてはどうだろうか。【舞】

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