進学選択

2022年6月26日

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(農学部・薬学部・医学部編)

 

 6月から手続きが始まる進学選択。後期課程のイメージができず、志望先を決めかねている2年生も多いだろう。本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。4年生が経験した3S1タームと3A1タームの時間割も掲載している。進学先決定の一助としてほしい。(構成・石橋咲、佐藤健、取材・清水央太郎、松本雄大、金井貴広)

 

理Ⅱ→農学部応用生命科学課程水圏生物科学専修

 

魚を釣ってさばいて 実体験から得られる学び

 

戸倉佳音(とくら・かのん)さん

 

 幼少期からウナギの養殖に興味があり、ウナギの幼生であるレプトセファルスが採集されたなどという報道を追っているうちに未解明の点が多いウナギの生態の解明にも興味を持つようになった。心理学系の学科とも迷ったが水圏生物科学専修に進学。4年次からはウナギの生態を扱う研究室で研究を行っている。

 

 前期教養課程では、興味を優先して心理学系の総合科目やフィールドワーク系の主題科目などを履修した。農学部第一段階・第三段階平均点は基本平均点に単位数を掛けて算出されるため、単位数を重視し「2Sセメスターまでに90単位以上を取得しました」。受験時には物理化学選択で、必修の「生命科学I・Ⅱ」以外に生物学系の授業は履修しなかったが、現在、専修の授業は十分理解できるという。

 

 専修の魅力は、実際に手を動かして学ぶ経験ができること。「勉強とはいえないくらい楽しいです」。3年次には水圏生物に関する座学に加えて、魚を解剖してスケッチしたりエタノール漬けの魚を観察して種を同定したりする実習を通して基本的な知識を学んだ。新型コロナウイルスの影響で2週間の予定が1泊になったが、浜名湖で魚の船釣りや水の採集をする実習も行ったという。

 

 1学年の人数が十数人と少なく、毎週水曜日から金曜日の午後は一緒に実験を行うため専修内で仲を深めやすいのも良いところだ。「期待外れだったことは設備が少し古いくらいで、他はほとんどありません」
授業は毎回の講義や期末にレポートを課されるものが多いが、負担はそこまで大きくない。一方、試薬を調製する実験では少しでも操作を誤るとやり直しとなって終了時刻が遅くなってしまうことも。その点では体力面のつらさがあるという。

 

 学部卒業後は多くが院進する。大学院修了後は「水産系の食品会社から商社まで就職先はさまざまです」。戸倉さん自身も院進し、修士課程を修了したら就職する予定だ。

 

 

 

理Ⅱ→薬学部薬科学科

 

広大で深遠なる薬学の世界

 

北里春希(きたざと・はるき)さん

 

 1年次の終わりごろには薬学部に進学することを考えていたという北里さん。薬が健康を促進したり病気を治したりするメカニズムに興味を持った。さらに化学、物理、生物のそれぞれの要素が詰め込まれている学問であることも薬学に興味を持った理由の一つだった。1年次は特に薬学関連の授業は履修しなかったが、2Sセメスターでは薬学に関連する授業「有機反応化学」を履修した。

 

 薬学部では、毎日午後に実習を行う。薬学部の各研究室が持ち回りで担当するため、履修することで薬学関連の実験を一通り学ぶことができる。また、薬学部の教員が授業で話す研究成果は最先端のものばかりで、薬学に興味を持つ学生は知的好奇心をかき立てられるという。

 

 基本的に選択科目はなく、必修の授業がほとんどだ。そのため、薬学部に所属する80人以上の学生は基本的に同じ授業を履修することになる。昨年度とは異なり、本年度の授業は原則対面授業となったため、学生間の交流が活発に行われている。また、薬学部で伝統的に行われていた「陸上・水上運動会」も本年度から復活。チームプレーの競技もあり、授業だけでは築くことのできない関係もできる。和気あいあいとした雰囲気の一方で、薬学部の学生は「勉強をするときはする」という。

 

 北里さんは今、肝機能の不具合を生じさせる因子について研究している。これまで明らかにされてこなかった肝臓の謎を解き明かすことで、肝臓病の治療に役立てることができる。

 

 進路としては、院進がほとんどだという。大学院を修了後は製薬メーカーなどに就職することが多いそうだが、文系就職する学生もいる。北里さんは肝臓に関する研究を通して研究の面白さに気付いた。そのため院進後に博士課程に進むか、就職するかを考えるという。研究の面白さに気付いた北里さんが見つめる薬学の世界。その広大さと深遠さはこれからも人々を魅了し続けるだろう。

 

 

 

理Ⅱ→医学部医学科

 

研究も臨床も医療倫理も学べる面白さ

 

小畠美穂(こばたけ・みほ)さん

 

 高校生の頃から医学の基礎研究や医療倫理に興味を持ち、東大医学部への進学を志していたが、理Ⅲでの受験は断念。理Ⅱから医学部への進学を目指した。

 

 前期教養課程では高得点が要求されるが、入学して最初に受けた数学の試験で可を取ってしまう。それからは友人との勉強会や、興味を優先した履修をモチベーションに努力を重ね、成績を上げた。「医学部への進学を目指す学生の皆さんは、医学の勉強が中心になる前の前期教養課程のうちに哲学などの医学そのものでない分野を学んで興味の幅を広げておくと、進学後も楽しめます」

 

 医学科の時間割は週ごとに変わる。座学が多く、実習は少なめだ。印象に残っているのは「解剖学第2(マクロ)」で、「2カ月間ほどご遺体を解剖し魂が抜けてしまうくらい疲れました」。生死の境目にいる感覚が続く日常はつらかったが、目の前の一人を大切にする医学の原点や使命について、友人と議論を交わす機会にもなった。

 

 授業はほとんどが必修のため、他学部履修がしづらいイメージを進学前は抱いていた。しかし実際は必修の授業の後に受講でき、3年次は文学部や理学部などの授業を週5こまほど履修した。

 

 医学部に進学して良かったことの一つ目は、医学の面白さだ。臨床医学は暗記ばかりだと聞いていたが、学ぶうちに疾患と症状の間の仕組みが全く解明されていない場合があると知り、興味深く感じた。二つ目は、入学前からの夢だった基礎研究ができていること。ある疾患に関連する膜タンパク質の細胞内機能を研究している。医学科では研究志望の学生が少ないため、研究室のサポートが充実し、自由度も高い。さらに、学科内の学生の交流が盛んなことも良かったという。「授業の合間の会話や、医学部4年生が主体として運営する五月祭企画を通して、友人も増えました」

 

 卒業後は学生のほとんどが臨床に進み、研究に進むのは1割ほど。小畠さんは現時点では研究に進む予定だが、臨床にも医療倫理にも興味がある。

 

 

【連載】

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(法学部・経済学部・文学部編)

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(教育学部・教養学部編)

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