就活

2022年9月18日

【官庁訪問2022】東大出身者が語る 国家公務員の仕事 ③総務省・経済産業省・財務省

 

 毎年多くの東大生が受験する国家公務員採用総合職試験。国家公務員を志す学生にはもちろん、まだ進路に悩んでいる人にとっても国家公務員自らが語る職務の実情やその素直な感想は参考になるだろう。東大出身者に、現在の省庁を選んだ経緯や担当する業務内容、就活生へのメッセージを聞いた。

(構成・葉いずみ、取材・山﨑聖乃、松本雄大、桑原秀彰)

 

総務省

 

大きな役割と幅広いフィールド

 

 大学時代に自転車部旅行班でさまざまな地方に行った経験から地域に根差した仕事がしたいと考えるようになったという。学業では教養学部の国際関係論コース、その後修士課程は総合文化研究科の国際関係論コースで国際関係史、特にアメリカの占領政策を専攻した。学部時代には交換留学でアメリカに。国際的な業務に関わりたいという思いも抱くようになり、国を代表したグローバルな仕事から、市民一人一人に届くようなローカルな仕事まで幅広く取り組めると考えて国家公務員を志望した。  

 

 国内外のさまざまな地方を訪れる中で、いつでも、どこでも世界とつながることのできる情報通信網の重要さを実感したと話す。最終的には基礎インフラとしての情報通信の取り組みに力を注いでいる総務省に入省を決めた。

 

 総合通信基盤局、行政評価局を経て22年5月から現在の大臣官房秘書課に配属。総合通信基盤局では、通信事業者を規制する電気通信事業法の法改正を担当していた。行政評価局では、主に政策評価(各府省が行う政策について、自ら分析・評価し見直しや改善を加え、次の機会に役立てること)や、EBPM(政策の企画目的を明確化した上で政策を合理的根拠に基づくものとすること)の推進に取り組んでいた。EBPM推進では他の省庁の政策について、政策の担当者、調査を担うコンサルタントと共同して実証的研究を行ったという。

 

 政策評価は、やる気や熱意などの数値にしづらいものの定量化や、他の要因を取り除いた正味の効果測定に難しさがあるが「いろいろな工夫をして効果を定量的に測れました。関連省庁の職員からこの研究をやってよかったと言われ、行政の改善というミッションを達成できたことがうれしかったです」

 

 今後は、学生時代に歴史研究を行った際に不便さを感じた経験から、テレビ映像の検索性を上げるアーカイブ事業に取り組みたいと話す。

 

 大学時代の経験は現在の仕事に生きることも多い。自転車部では五月祭中に遠隔地から24時間自転車をこいでキャンパスまで帰ってくるノンストップランというイベントを運営した。休憩地点での物資の手配や安全管理など準備することが多くあり、物事を管理する能力が培われたと語る。

 

 総務省では1、2年という頻度で異動があり、業務内容も大きく変わるため、幅広い関心を持っている学生に向いている。加えて「やはり国の機関なので、何らかの社会問題にパブリックの側面からアプローチしたいというビジョンがあるといいと思います」。大きな権限と幅広いフィールドが与えられているため「非常にエキサイティングです」と語った。

 

 国家公務員志望であった中村さんだが、就活では民間企業も視野に入れており、内々定を得た際に一度就活をやめたと話す。「就活をしているといろいろな迷いが出てくると思います。まずはそれを自然なことだと受け止めて、その上で必要な情報収集を行ったり周囲へ相談したりして、自分の価値観を固めていってください」

 

中村雄人(なかむら・たかと) さん 総務省大臣官房秘書課 総合職試験=政治国際 20年総合文化研究科修了

 

経済産業省

 

日本全体を見据えた戦略作り

 

 修士1年の春に、官庁、研究職、民間企業で悩んでいた。しかし、国家I種試験(当時・現在は国家総合職試験)受験や官庁訪問を経て、早く社会人としての経験を積みたいと思ったことと、アカデミアでの研究に向かないと考えたこともあり、大学院を中退し経産省に就職。高校生の時から民間企業だけでは解決できないパブリックな問題の解決に関心はあったが、学部時代から官庁への就職を強く意識していたわけではなく成り行きで就職した一面も。特に環境問題に関心があり、環境省などとも悩んだが、民間企業と協力して社会経済活動全般にも配慮しつつ、環境問題にアプローチできる経産省を志望した。     

 

 産業技術環境局では課長補佐として炭素の排出量を減らす脱炭素技術の研究・開発を進める戦略作りに取り組んだ。関係者との調整を通じた戦略全般のとりまとめが主な仕事で、研究機関とは「どのような研究体制が作れ、何を生み出せるか」、他省庁とは「どの分野について研究開発や取り組みを強化できるか」に関して打ち合わせを行い、技術戦略を作り込んでいった。政策立案に関係する国会議員や専門家などに話を聞くこともあった。かねてから取り組みたいと考えていた環境エネルギー問題の政策立案に携わり、脱炭素技術全体に関わる戦略作りという一大プロジェクトをチームで成し遂げられたため、大きな達成感があったという。

 

 一民間企業ではできない日本全体のCO2の排出問題といった規模の大きな事柄を扱えることが官庁の魅力だと語る。「自分の関わっている案件が報道されていることにやりがいを感じました」。一方で大きなプロジェクトは責任も重い。ある特定の分野の技術革新のために予算を投じても必ずうまくいくわけではなく、次の手を考えなければならない点は大変だったと振り返る。

 

 官庁に就職する以前は、官僚は「組織の歯車」というイメージがあった。しかしそのイメージは人事異動が厳正に行われているために生まれた誤解であり、実際に働いてみると人情味あふれる温かい職場であるという。「課題に前のめりに取り組む職場の風土や果敢に取り組む職員の中で働けるのがうれしいです」

 

 脱炭素の技術戦略など大きなプロジェクトを進めるのに必要だったのが、他の組織の人との調整力。大学時代に関東の大学のサークルが一堂に会するバドミントン大会を運営し、サークル内外の人と調整した経験が今の仕事にも通じているという。

 

 経産省はロジカルに強い人や、周囲を巻き込んで引っ張っていける人などさまざまな人材が活躍できる環境だ。物事が一層複雑化している今日の社会において、学生はトレードオフを考えつつ多面的に物事を見る力を養っておくことが望ましいとも話す。「最近ではベンチャー企業や外資系金融など選択肢が多様化していて、東大生が官僚以外の道を考えやすい流れも自然なことかもしれません。しかし国の対処すべき課題はますます重くなっているため、少しでも関心があれば試験を受けたり話を聞いたりしてもらえるとうれしいですね」

 

長山美由貴(ながやま・みゆき)さん 経済産業省大臣官房秘書課 国家I種=農学III(森林・自然環境))10年農学部卒

 

 

財務省

 

主体性を持って、熟考を

 

 大学入学時から、漠然と国家公務員への興味はあった。サークルで幹部を務めた時、練習場所の確保など、周囲からは気付かれにくいが重要な仕事の存在を知り、下支えの仕事の大切さを認識。長期的視野から社会を支え、貢献できる国家公務員を志望した。学部3年次の夏から各省庁の説明会に行き、秋に実施される教養区分試験の勉強を開始。その際には財務省以外の省庁も考えていたが、官庁訪問を経て財務省に固まった。官庁訪問において、財務省の職員に自分の関心分野を伝えたところ、問題意識への共感を示してくれた上で、実際の業務の話を交えて対話してくれたことが印象深いという。上司と議論しつつ仕事を進められると感じたことが財務省を選ぶ決め手となった。

 

 現在は、大臣官房文書課において、主に法令審査業務と国会関係の調整業務を行っている。法令審査業務では、法案やプレスリリースなどの内容を確認し、誤りや過去の発表内容との齟齬(そご)がないかを審査する。法律などの書き方に不備があると、政策が適切に執行されず、国民に不利益が生じ得るため、細心の注意を払っているという。国会関係の調整業務では、国会議員や関係省庁、利害関係者などとの交渉の調整を行う。特に、一部の人々に規制をかけるような法律案を出す際には、関係者間での綿密な意見調整が重要だ。

 

 日々の業務としては、担当する案件の内容に関するヒアリングをした上で、審査や日程の調整、上司への説明などを行う。「自分の提案が法令や報道に反映されることもあるので、非常に重大な業務に関わっている実感があり魅力的です」。一方で、影響力があるからこそ、とっさの対応が必要となるようなことも多く、スピード感を持って対応しなければならない大変さもあるそうだ。

 

 竹川さんが意外だったのは、1年目からさまざまな仕事を任される点だ。約30年目の上司に一人で案件の説明をすることもあり、自分の説明に正確性と説得性が求められる点で大きな責任を感じている。若手の意見であっても、論理が通っていれば軽視されることなく採用される点にもやりがいを覚えるという。

 

 「財務省では、主体的に動き、自分の意見を発信できる人が活躍していると思います」。多様な社会課題について日々関心を持つことが大切。そして、自分ならどのような政策を行うか考える癖を付けることで、課題解決に取り組める環境下ですぐ動き出すことが可能となる。

 

 国家公務員を目指していても、そうでなくても「いろいろな人の話を聞いてほしい」とアドバイスする。説明を聞いた上で、その官庁・企業が合わないと感じた場合でも、その理由を考えていく中で、自分にとって大事な価値観に気付けることも多いという。「自分の決断に自信を持つためにも、納得がいくまで就活を続けてほしいです。その結果として、国家公務員、財務省を志望する方と、将来一緒に働けることを楽しみにしています」

 

竹川優記(たけがわ・ゆうき)さん 財務省大臣官房文書課 総合職試験=教養 21年法学部卒

 

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