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2020年4月8日

【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?②】ミスコン反対の声に、主催者の反応

 2019年駒場祭で挙がった、東大ミス・ミスターコンテスト開催への反対の声。その一方でコンテストは、運営団体やファイナリストなど多くの人が学生生活を挙げて携わってきたイベントだ。開催の是非を議論する上では、こうした各関係者の立場をしっかり理解する必要がある。そこで、ここではまず、反対を唱えた有志団体「ミスコン&ミスターコンを考える会」と、それに応じるコンテスト運営団体「東京大学広告研究会」の立場を見てみよう。(全4回)

(取材・武沙佑美)

 

ミスコン&ミスターコンを考える会

 

規範の構築に加担

 

 私たちは大学キャンパスでのミス・ミスターコンの中止を求めます。特に、女性の方が男性に比べ容姿や振る舞いを評価されることが多いことを問題視し、ミスコンに注目しています。

 

 女性は日々否応なしに外見や「女子力」などを男性に評価され、苦しむ人もいます。コンテストはこうした日常的な行為を大々的に学園祭の企画として行い、追認するものです。

 

 明確な選考基準がない中で人々が選ぶミス東大は、外見含め「理想の女性像」に合致する人です。出場者はいかに自己表現するかに関わらず容姿や、投票者の要望に沿っているかを基に評価されます。こうしてコンテストは支持者が男性であろうと女性であろうと、ある一定の「女性はこうあるべき」というジェンダー規範を再生産し社会に浸透させています。このジェンダー規範が多くの女性を拘束し傷付けているのです。

 

 コンテストが東大生の中からミス・ミスターを選ぶものである以上、東大生は皆当事者です。コンテストに出場するかを決める際、自身が日常的に経験する「ミスコン的行為」や「男性的な」視線による外見への評価の結果に鑑みる人は多いのではないでしょうか。つまりファイナリストとは東大生全員を対象とした「予選」を勝ち抜いた「決勝進出者」なのです。

 

 当事者は東大生だけではありません。現在社会ではさまざまな場所で「ミスコン的行為」が行われることにより、「理想の女性像」のコンセンサスが作られています。ミス・ミスターコンや、それが再生産するジェンダー規範はその一部です。社会全体で共有される規範の構築に参加する人、そしてその影響を受ける人は皆当事者なのです。

 

 コンテストが「ミス」と「ミスター」のみで構成されることにも反対です。この区分は、二つの枠に収まらないマイノリティ属性を否定しています。駒場祭でファイナリストがウェディングドレスとスーツで登場する演出も、異性愛や結婚という行為が当然で「普通」である、という規範を前提としています。

 

 コンテストは学園祭を盛り上げ、出場者や観客を力付ける企画かもしれません。人を楽しませることや自分の中の理想的な外見の追求自体は否定しませんが、人に順位を付け評価する行為で傷付く人がいる以上、開催は許されません。

 

 人を評価する行為は芸能界や、学力や運動神経に基づいたものなどあらゆる場面で見受けられます。ミスコンを廃止することは、こうした行為を緩和する一助となるでしょう。(談)

 

【Twitter】
@thinkaboutmiss1

 

駒場祭ではビラを配り、コンテスト開催への反対を呼びかけた

 

東京大学広告研究会

 

容姿以外も競う

 

 コンテストは1997年に初開催された歴史ある催しです。現在は「日本一の才色兼備を決める」という理念の下で運営しており、頭脳と容姿の両方を持ち合わせた人を発掘することで東大特有の価値が生まれると考えています。コンテストの目的は三つあります。まずファイナリストに、普段できないようなさまざまな経験をしてもらうこと。次にコンテストの社会的知名度を高め、より多くの企業や一般の方にファイナリストが持つ影響力を知ってもらうこと。最後に、運営に携わる会員自らも多様な経験をすること、です。

 

 ファイナリストは容姿のみを競っているわけではありません。ファイナリストの選考では、立候補者に基本情報や志望動機をGoogleフォームに記入してもらった上で、約5日間かけて全員に面接します。19年の面接は、広告研究会の代表と副代表に、日替わりで1、2年生の会員6人を加えた計8人で審査しました。各審査員は各立候補者について、定められた七つの項目に基づきコメントし、その総評価を基に10人を選定します。特に、コンテストに出たい理由と、ファイナリストとして責任を持って活動できるかは、重視します。審査の詳細は、落選者の精神的苦痛を考慮して公開していません。

 

 ファイナリストは7月の「お披露目」から11月の駒場祭までの約半年間、SNSでの日常的な投稿やフォロワーとの交流、競馬場での模擬店販売やファッションショーへの出演、スポンサー企業による企画への参加などに精いっぱい取り組みます。コンテストに反対する人には、彼らの頑張りをもっと見てほしいです。

 

 コンテストが一部の属性を排しているという意見がありますが、コンテストの応募資格は東大の全学部生にあります。ミスコンに男性が、ミスターコンに女性が応募することも可能です。明確な目的を持ってそうした応募をしている人はファイナリストに残る可能性もあります。

 

 本年、別の大学では大学当局の勧告を受け、ミスとミスターの枠を設けない新たなコンテストを実施することになりました。この話を機に当会でもコンテストの見直しを検討しましたが、従来通り実施することにしました。

 

 コンテストを男女別に開催するのは、性別を当会が規定した上で候補者を競わせようとしているからではありません。そもそも何かを競う際に本能的に同性と自分を比較して相手よりも成長したい、良い評価を得たいと思う人が多いと考えるためです。性別関係なく競いたい人が多ければ、コンテストの歴史の中で男女共同開催という形に変わっていたはずです。しかしそのような事実はなく、男女別の開催で立候補する人が多数います。東大では当局から廃止を求められていないので、伝統を踏襲したコンテストを開催します。(談)

 

【関連記事 東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?】

【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?①】今、ミスコン開催の是非が問われる理由

【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?③】過去の出場者のホンネ

【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?④】専門家は論点をどう見る

 

【記事追記】

2020年4月8日10時59分 冒頭のリード文末尾に「(全4回)」を追記しました。

 


この記事は2020年4月7日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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研究室散歩:@技術経営学 坂田一郎教授(工学系研究科)
東大CINEMA:『一度死んでみた』
キャンパスのひと:上田開さん(文Ⅲ・2年)

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