キャンパスライフ

2021年9月25日

【教員の振り返る東大生活】中村元哉准教授 「縁も含めて自分の人生です」

 

 「孤立を恐れず堂々と振る舞える空気があるのが、東大の良いところだと思います」。そう語る中村元哉准教授は、院生時代、それまでの中国近現代史研究の常識からかなり逸脱した中国憲政史研究に取り組んだという。周りからは「そんな研究は成り立つわけない」との批判を受けたが、指導教員だった村田雄二郎助教授(当時)には「無視されるよりも良い」「批判される研究は望ましいこと」と言ってもらえた。「周りの和を乱すのではなく、自分が正しいと思ったことを堂々と主張する批判精神の大切さを東大で学びました」

 

 

 生まれ育ったのは名古屋。地元には「トヨタがある以上、外に出なくても一生安泰だ」という雰囲気があったという。しかし中村准教授は高校の頃に狭い世界にこのままずっといて良いのだろうかという疑念を持ち始め、外の空気を吸いたくて東大への進学を決めた。

 

 入学後、特に興味があったのは東洋史。『三国志』や『水滸伝』などの小説や漫画の影響に加え、大きかったのは高校時代に起こった天安門事件(1989年)だった。冷戦が終わり、世界中に資本主義や民主主義が良いという空気が流れる中で、それとは逆行する中国に関心を持ったのだという。「中国語はキャンパス内で先生や留学生に話しかけて身に付けましたね」というほど、中国について学ぼうという志は大きかった。

 

 だが、学部時代は「真面目な学生ではなかった」とのこと。「予定がなければ永福町に住んでいたクラスメイトの家に集まり、一晩中話をして明け方寝て午前中の授業をサボっていました。クラスでサボり組の永福会という呼び名が付いたほどでした」と振り返る。進振り(当時、現・進学選択)でも希望通り文学部歴史文化学科(当時)東洋史学専修に進学できたが、成績は可や良が多く50点ギリギリの科目もあったという。「当時は周りにもそんな人が多く、進振りのための点数を気にしてギスギスする雰囲気はあまりなかったですね」。その後は、4年間だけでは知りたいことを知りきれないと思い、大学院へ進んだ。

 

 「今の学生は、自分たち以上に十分な基礎学力を具えているのに、進学選択制度に振り回されすぎているように思えます」。周りと支え合いながらやりたいことを主体的にやっていくことが大事なのに、進学選択制度のせいでそれがやりにくくなっているのではないか、と指摘する。「大学の勉強で1、2点の差に意味はありません。極論、可か不可かだけで良いのではないでしょうか」。学生が過剰に自分の立ち位置を気にしているような現状には疑問を抱く。

 

 学生に対しては「仮に進学選択で望んだところに決まらなくても、熱意があれば突き詰められる環境が東大にはあります」と語る。進学先が決定する前に望んでいた分野が、自分に本当に合っているとは限らないとも指摘。望まずに進学した分野で才能が開花した学生もたくさん見てきたという。「縁も大切にしてください。そうすれば、自分の秘めたる可能性が開かれると思います」

 

前任校の津田塾大学の謝恩会にて(写真は中村准教授提供) 

 中村元哉(なかむら・もとや)准教授(東大大学院総合文化研究科)
03年東大大学院総合文化研究科博士課程修了。

博士(学術)。津田塾大学教授などを経て、19年より現職

 

(本林凌)

 

2021年9月25日22:36【追記】経歴を追加しました。

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