COLUMN 2018年1月2日

【N高生のリアル⑩】生徒の人生にホームを作る N高サッカー部が目指しているもの

 ネットの高校・N高の、「ウイニングイレブン 2018」 による部活動。クイズ研究会に続く、N高ネット部活第2弾として、サッカー部の活動の模様をお送りする。ウェブメディアでは盛んに取り上げられた時期もあったが、今はどうなっているのか。その内実に迫る。

(取材・沢津橋紀洋)

 

 記者が訪れた日は、N高サッカー部にとって一つの記念になる活動日であった。部員の一人、相原翼くんが 公式全国大会「Winning Eleven AFC Champions League 2017」での決勝トーナメントの戦いを終えた後の最初の活動日で、部内はお祝いムードに包まれていた。

 

会場の埼玉スタジアム

 

N高サッカー部の日常

 

「翼くん、お疲れさん!」

 Skypeにログインして登場した翼くんに、サッカー元日本代表・秋田さん が声を掛ける。

 

 秋田さんを招いての活動は、月に1回開催され、部員とSkypeでつなぎながら、試合をYouTubeで配信して、それを秋田さんがディスプレーで見ながら指導をしている。普段はオンラインで部員同士対決しあったり、部員以外のプレーヤーとも対戦に挑むなどして、腕を磨いている。

 

 

 この不思議な空間で、一体何が起きているのだろうか。

 

リアルサッカーの再現性

 

 

 N高サッカー部特別顧問を引き受けた秋田豊さん。日本代表では1998年W杯でセンターバックのレギュラーを務めた。そんな秋田さんは、過去にニコニコ生放送のサッカーゲームプレイ 企画に解説として出演する機会があった。 プロチーム監督経験もあり、下の年代の指導も行なっており、その姿を見た職員が、「子供との距離の縮め方が抜群に上手い。あれほど子供と関係性を築くのがうまい人は見たことがない」(N高職員・山田さん)と惚れ込み、特別顧問のオファーに至った。

 

 元日本代表の方がゲームを指導するとは、と記者が水を向けると、「リアルなサッカーの再現性が向上していて、今は現場の人が参考にしても良いレベルだと思う。ゲームを使って監督が『俺はこういうサッカーをしたいんだ』と見せてもいいよね」と語る。実際に、生徒のプレーを見ながら「中盤でのプレッシャーが遅れたね」「クロスのコースをあけちゃったね」など、戦術的な指導を飛ばしていた。

 

Winning Eleven AFC Champions League 2017での翼くんの試合

最近のウイイレはもはや「プロチームがシミュレーションに活用できる」ほど、現実のサッカーを再現できるようになっているという(秋田さん談)

 

 記者が取材した日はまず、翼くんの全国大会での試合の様子をみんなで観戦して、翼くんの反省、部員からのコメント、また秋田さんからの指導をもらう時間だった。

 

 最初の振り返りで、「あまり緊張しなかった。(試合のYouTubeでの)配信がなかったので。屋外でしたし」とボイスチャットで述べる翼くんに対し、秋田さんは「なるほど、5万人くらい観ていないとアドレナリンが出ないということだな。そうしたら俺と同じレベルに行ったよ(笑)」と和やかに会話をする。

 

 翼くんが1対4で敗れた準々決勝の試合を見ながら、「守備はどう対策したの?」(秋田さん)、「3トップが強いので、リトリート(引き)気味で」(翼くん)などの会話が進む。

 

 秋田さんは他の部員に「今のシーンどう思う? 相手との距離感」など話を引き出しながら、「翼くんは攻撃力では相手に負けてない。守備力をどう上げていくかだよ。日本のトップトップでも、(対峙して)1m間をあけたらドリブルで仕掛けられる。(全国大会という)このレベルになってくると、守備がないと勝てなくなってくる。逆にいうと、翼くんは相手を崩すだけの力は持ってるから、守備さえできれば勝てる」と、日本代表レベルを見据えた実質的な指導を重ねていく。

 

 話は試合環境に及び、(埼玉スタジアムという)秋空の下、屋外で行われたため「寒くて手がかじかんだ」という翼くんに対し、「それも経験じゃん。どんな環境になっても、相手は同じ。自分にとってプラスの環境だと思えるか。俺もさ、国外の代表戦で、ゴール前に釘が落ちてた時があったよ。日本じゃありえないことが平気で起こるからね。いろいろな想定で準備することだよ」と語る。

 

一生の友達ができる場所を作りたい

 

 Skype越しに、 ディスプレーを介した指導関係。生徒たちの顔は見えないが、指導しにくくはないのか、と秋田さんに問うと「確かに、僕だって彼らの顔は見たい。でも彼らにも守りたいものはあるから。(会ったことは)あるよ。一緒にリアルサッカーをしたよ」と語る。

 

秋田さんは生徒のプレーを見て、

「まなと君、惜しい!!」

「そんなオシャレなシュートしちゃう!?」

「ロオン君! 利き足まで考えないと!」

「ヘディングで点取るの、気持ちいいね。俺もよく点取ったよ頭で」

など、一喜一憂してコメントをする。

 

「自分はもちろん、サッカーを教えたいというのもあるけど、それよりも、彼らにとってのコミュニティをつくりたい。高校は一生の友人ができる場所だから。彼らの眠っている才能をどう引き出せるか。これまで育つ中で、何かしらのことでつまずいて力が発揮できない子も世の中にはたくさんいるけど、この場所で、目標のために努力することとか、みんなで協力することとかを学んでくれたら」

 

「N高が僕を選んでくれたから、自分の持っているものを全て出して、彼らの成長に貢献するだけ」(秋田さん談)

 

立ち上げから1年、生徒と作った軌跡

 

 「彼らは最初の頃は、Skypeで集まっても、ほとんど喋ることはなかったが、今ではよく話すようになった。秋田さんとずーっと信頼関係を築いて。今日は今までで一番くらい話していました。(部員の)結束力は高いと思います。今は翼くんが一番うまいですけど、他の部員も、声には出してませんけど、『絶対強くなる』と思って影で努力していることを僕は知っています(笑)。すごい練習してきたりするので」とN高職員、山田さんは言う。

 

生徒たちの成長を見守り続ける、N高ネット部活担当の山田さん

 

「部としての目標は公式大会 で成績を残すことというのはもちろんあるんですけど、それと同時に 僕たちは彼らに居場所を作りたい。 失敗しても戻ってこられる場所、自分はここにいても大丈夫と言う場所。ここを踏み台に、次の挑戦に行ってほしい」(山田さん)

 

 N高サッカー部の、生徒の「ホーム」作りの挑戦は続く。

***

「ウイニングイレブン 2018」/ ©Konami Digital Entertainment

 

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