キャンパスライフ

2021年12月20日

【比較進振学】東大で生命工学を勉強したい!どこに進学するべき?農学部生命化学・工学専修・工学部化学生命工学科を徹底比較!

 

 複数の学部・学科などで似た領域の学問を扱っている場合、自分に合った進学先はどこか分からないという学生も多いのではないだろうか。そのような悩みを解決するため、本企画では一見似たような学問を扱う進学先を徹底比較する。今回のテーマは「生命工学」。農学部生命化学・工学専修工学部化学生命工学科の二つの進学先を特集する。農学部生命化学・工学専修を卒業した川合誠司さんと神戸朱琉さん、工学部化学生命工学科のAさんとRさんに話を聞いた。

(取材・石橋咲)

 

化学の位置付けに大きな違い

 

取材をもとに作成した比較表

 

 

微生物の面白さを味わう

 

農学部生命化学・工学専修①

川合誠司(かわい・せいじ)さん(農学部生命化学・工学専修→現在農学生命科学研究科修士2年)

 

━━専修で学んでいたことやカリキュラムの特徴を教えてください

 

 微生物・発酵と食品・動物の両方の分野を学びます。有機化学や分析化学など化学についても広く勉強しましたね。印象に残っている授業は2Aの基礎微生物学です。微生物の産業利用上の多様性について学ぶ中で微生物は人間にとって利用価値が高く、研究対象としても興味深いことを知ったのが微生物の研究を志すきっかけになりました。

 

━━専修の魅力を教えてください

 

 歴史が古く、全国の酒蔵から提供されたお酒を振る舞う五月祭での利き酒イベントなど伝統的な行事があります。学生実験では日本酒の醸造実験も行い、お酒と絡めながら発酵について学ぶことができます。1学年80人ほどが集まり一緒に実験を行うので学生同士の交流が盛んでした。教員との距離も近く、新型コロナウイルスの流行前は実験の担当教員がタームの終わりに飲み会を開いてくれて、そこで研究の話を聞くこともできました。

 

━━卒業研究について教えてください

 

 私は放線菌という微生物によって抗生物質や医薬品、特にジアゾ基を持つ医薬品が作られるメカニズムの研究をして、現在もその研究を継続しています。

 

━━前期課程で取っておくべき授業ややっておくと良いことはありますか

 

 総合科目E系列の「微生物の科学」という授業は、微生物系の研究室の教員がオムニバスで講義をしてくれるので興味がある人にはおすすめです。生命科学の授業をちゃんと受けておけば後々楽かなと思います。

 

━━前期課程生にメッセージをお願いします

 

 新型コロナウイルスの影響で教員と話す機会や学部に見学に行く機会が少なくなって進学先を選ぶのが大変だと思いますが、授業を受ける中で少しでも興味のある研究テーマや教員を見つけたらホームページを見たり自分で連絡を取って話を聞いたりしてみてください。自分が何をしたいのかしっかりとイメージした上で選択するのが大切です。

 

 

食品系も扱うがフェロモンの研究も

 

農学部生命化学・工学専修②

神戸朱琉(かんべ・あかり)さん(農学部生命化学・工学専修→現在農学生命科学研究科修士1年)

 

━━専修で学んでいたことやカリキュラムの特徴を教えてください

 

 食品化学や微生物学、環境化学などを含む「農芸化学」という学問分野を広く学習できることが特徴ですね。基礎的な有機化学や分析化学などの講義は工学部化学生命工学科とも共通していると思うのですが、体系的に化学を学ぶというよりは、生物フェロモンや農薬などの生物活性のある分子の全合成など生物寄りの視点からも学びます。

 

 印象に残っているのは3Sの準必修だった有機化学の授業です。生理活性物質の全合成の手順や異性体の作り分けの話も盛り込まれていて面白かったです。ちょうど有機化学の学生実験と時期が重なっていたので、より深く理解できました。

 

━━専修の魅力を教えてください

 

 前期課程のうちに何を研究したいか決まらなかった学生にとっては進学後に授業を受けながら決められるのが特徴であり魅力ですね。東大で食品系について体系的に学べる進学先はあまりないので、それも魅力だと思います。

 

━━卒業研究について教えてください

 

 テーマ決めの自由度がある程度高く、やりたい研究ができる研究室もあります。私は幼若マウスが出すフェロモンを神経科学・分析化学・組織科学的なツールなどを用いて解析する研究をしていました。

 

━━前期課程で取っておくべき授業ややっておくと良いことはありますか

 

 基礎統計やプログラミングは生物系に進むならどこでも必要ですね。英語が苦手であれば、必修以外にも英語の授業を受講するなど積極的に触れておいた方が良いです。英語の論文を読んでから実験計画を立てるので、論文を読む能力が研究の能力の大部分を占めると実感しました。新型コロナウイルス流行前は海外から研究者を呼んで講演してもらったりディスカッションをしたりする機会もあったそうなので、相手の言っていることを正しく聞き取り、自分の研究内容を省略せずに正しく伝える力が必要だと感じます。

 

━━前期課程生にメッセージをお願いします

 

 異なる学科・専修でも講義が共通している場合があったり、学科のイメージと異なる研究をしているところもあったりします。例えば生命化学・工学専修は食品系・微生物系のイメージが強いかと思いますが、神経科学系の研究をしている研究室もあるので、学科・専修の名前にとらわれずに研究内容をしっかりと調べた上で選択してほしいです。

 

 

博士課程進学率の高さと雰囲気の良さが魅力

 

工学部化学生命工学科①

Aさん(工学部化学生命工学科4年)

 

━━学科で学んでいることやカリキュラムの特徴を教えてください

 

 量子化学や物理化学など化学全般を学びます。一方生命分野で扱うのは生命化学や分子細胞生物学などといった化学的なスケールで見る内容ですね。工学部共通で数学やプログラミングの授業もあります。

 

 特徴的な授業は食品系やエネルギー系などの企業の人に企業での研究・開発についての講義をしてもらう「ケミカル・バイオ・インダストリー」という授業です。自分が今学んでいることをどうやって将来のキャリアに繋げるのかイメージを描けるようになりました。

 

━━学科の魅力を教えてください

 

 教員やTAが学生のことを気にかけてくれているのが伝わってきて、ディスカッションしやすい空気があります。工学部全体の女子の割合は1割程度なのですが、その中で化学生命工学科は毎年3割程度と比較的女子が過ごしやすい環境だと思います。化学生命工学科では修博一貫の院試など研究に集中できるような制度が整っていて、修士課程から博士課程への進学率が30%程度と高いのも魅力ですね。

 

━━卒業研究について教えてください

 

 私は現在細胞活性を持つ有機化合物の合成というテーマで研究をしています。具体的には生体内で目的のアミノ酸の代謝を止める、すなわち抗がん作用を持つような低分子の合成を目標としています。学科の研究室は多様で、有機化学や分子細胞生物学の基礎研究、高分子素材の開発や医薬品への応用などを目的とした工学的な視点からの研究が多い印象です。

 

━━前期教養課程で取っておくべき授業ややっておくと良いことはありますか

 

 学科の見学に行くのが大切です。研究は進めていくうちに楽しくなることもあると思いますが、雰囲気が肌に合わないところを選んでしまうと辛いので、雰囲気も重視すべきだと思います。

 

━━前期教養課程生にメッセージをお願いします

 

 スポ身や英語の授業での文理を超えた交流など前期課程のうちしかできないことを楽しんでほしいです。

 

 

化学を学び、生命を分子レベルで理解する

 

工学部化学生命工学科②

Rさん(工学部化学生命工学科4年)

 

━━学科で学んでいることやカリキュラムの特徴を教えてください

 

 体系化しづらいバイオテクノロジーという分野も基本的な内容から最先端の内容まで階層的に幅広く学べるようにカリキュラムが組まれています。生命工学実験では大腸菌にプラスミドを導入してタンパク質を発現させ、そのタンパク質を分析するなどといった実験を通して、遺伝子工学における基本的なプロセスを一つの流れとして体験することができました。

 

 印象に残っているのは3Sの分子生物学Ⅰという授業です。遺伝子発現の流れを扱う基本的な内容でありながら、RNA研究の分野で世界的に活躍している担当教員の専門に絡めたオリジナリティーの高い授業で、遺伝子発現制御という分野に興味を持つきっかけになりました。

 

━━学科の魅力を教えてください

 

 化学分野を一通り学べることが大きいです。生命だけを学びたい人は生命と直接関係のない分野の比重の大きさに困惑するかもしれませんが、生命科学を学ぶ上では分子反応を扱ったり分子の分析を行ったりする際に基礎的な化学の知識が背景にあることが多いです。生命工学の中でも特に分子に関する研究室が多岐にわたるのが学科の強みだと思います。

 

━━卒業研究について教えてください

 

 私の研究室ではRNAの研究を行っています。RNAはアセチル化やメチル化などの100種類に及ぶ化学修飾を受けるのですが、その機能は未解明なことが多く、細胞内のRNAを単離する技術や高感度に分析する質量分析法を駆使してRNAの修飾を介した生命現象を解明することを目指しています。その中で私は新規の修飾構造を同定し、その機能を解明するというテーマで研究をしています。

 

━━前期教養課程で取っておくべき授業ややっておくと良いことはありますか

 

 分子生物学や有機化学は習うことが多いので総合科目を利用したり自分で教科書を読んだりして勉強しておくと後期課程で楽になると思いますが、専門外の分野を幅広く学ぶのも良いと思います。

 

━━前期教養課程生にメッセージをお願いします

 

 大学は今までの人生で体験したこともないくらい考え方や価値観を変えるような新鮮な出会いにあふれています。大学という学びの場をとことん味わい尽くしてください。

 

 

時間割

 

川合さん3S1

川合さん(農学部生命化学・工学専修)の3S1タームの時間割。網掛けは必修科目。3S2は学生実験と集中講義のみ

 

神戸さん3S1

神戸さん(農学部生命化学・工学専修)の3S1タームの時間割。網掛けは必修科目。3S2は学生実験とワン・アーソロジーⅠ、集中講義のみ

 

Aさん3S

Aさん(工学部化学生命工学科)の3Sセメスターの時間割。網掛けは必修科目。化学生命工学最前線、化学・生命研究倫理は集中講義

 

Rさん3S

Rさん(工学部化学生命工学科)の3Sセメスターの時間割。網掛けは必修科目。化学生命工学最前線は集中講義

 

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